一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方労災保険は義務?加入しない選択肢はあるの?

 「一人親方労災保険は、加入義務があるって本当?」

 一人親方労災保険への加入の有無について、上記のような疑問を持っている方もいます。また、「保険料が高いんじゃない?」と不安に思っている方にとっては、労災保険への加入が義務だと感じられるかもしれません。

 この記事では、一人親方労災保険の加入義務について解説します。
 一人親方労災保険が義務であると考えられる理由や、メリットにも触れているので、加入を迷っている方もぜひチェックしてください。

一人親方労災保険は義務ではない

労災保険
 一人親方労災保険への加入は、義務ではありません。もし加入しなくても、ペナルティが課せられたり、違法になったりすることはありません。しかし、平成30年に厚生労働省が発表した「建設業一人親方の働く実態等に関するアンケート調査結果」によると、一人親方労災保険に加入している方(もしくは加入を予定している方)は、81.9%です。

 加入する義務はないものの、実際のところは、多くの一人親方が労災保険に加入しています。同アンケートにて、「加入しない」と回答している方の理由についても触れておきましょう。

  • 1位:保険料を負担したくない(26.5%)
  • 2位:民間保険に加入済み(24.9%)
  • 3位:制度を知らなかった(24.7%)
  • 4位:手続きが複雑・面倒(11.2%)
  • 5位:補償が十分ではない(4.3%)

 上記を踏まえ、労災保険が「義務」と言われるほど重要なものなのか否かについて、次の章で見ていきましょう。

一人親方労災保険が義務であると思われがちな3つの理由

 一人親方労災保険は「義務」ではありませんが、「義務だから加入しなければならない」と、知人や取引先などから言われた経験をもつ方もいるのではないでしょうか?一体なぜ、「義務」と思われがちであるのかについて、3つの理由を解説します。

元請の建設会社には安全配慮義務がある

 工事現場などで元請の建設会社には、下請の労働者に対する「安全配慮義務」があります。「安全配慮義務」とは、労働者が作業現場や設備の利用をする際、生命や身体の安全への配慮をしなくてはならない義務のことです。万が一、元請会社が安全に対する配慮が不足している状況で労働者がケガをしたときには、元請会社は損害賠償責任を負う可能性があります。このとき、一人親方が労災保険に加入していれば、療養(補償)給付や休業(補償)給付などを請求でき、請負元の建設会社が「一人親方の労災のリスクに対し、適切なアナウンスをしていた」姿勢を示せます。
 請負元が仕事を発注する際に、労災保険加入状況をチェックするケースがあるのは、上記の事情があるためです。

 元々安全配慮義務とは労働契約法により会社が労働者に対して負っている義務です。そのため、労働者ではない一人親方に安全配慮義務は無関係と思えるかもしれません。しかし、元請と一人親方の関係性を考えた時に実質的に使用者と労働者のような使用従属関係が認められるケースがあります。その場合においては元請側に安全配慮義務があると言えましょう。

保険加入により大きな安心が得られる

 労災保険加入の目的は、ケガ・病気・死亡の際に、必要なお金を受け取れることです。厚生労働省では、毎年、一人親方の死亡事故の発生状況を調査・公表しています。
令和元年においては60名の一人親方が死亡事故で亡くなっており、そのうちの40名が転落によって命を落としています。事故に遭った方の年齢別のデータは、以下の通りです。

  • 19歳以下:0名
  • 20代:3名
  • 30代:2名
  • 40代:6名
  • 50代:16名
  • 60代:12名
  • 70代以上:20名
  • 不明:1名

 データを見ると、高齢の方ほど事故に遭いやすい傾向があります。また、死亡事故以外に、多数のケガも発生しています。一人親方の仕事はケガのリスクと隣り合わせである以上、いざというとき自分自身や家族が困らないように、保険に入っておくことはとても大切です。

 参考:令和元年一人親方等の死亡災害発生状況概要
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/user/anzen/tok/r01_hitorioyakata.pdf

実質的に一人親方は加入が不可欠

 これまでの内容を踏まえて、一人親方が安心して仕事を継続し、また請負元にも安心して仕事を任せてもらうためには、一人親方労災保険への加入は不可欠です。一人親方労災保険は国の保険制度であるため、少ない掛け金で補償の内容が充実している魅力もあります。一人親方労災保険の代わりに、民間の医療保険や就業不能保険などに加入する方法もあります。しかしその場合には、一人親方労災保険よりも毎月の料金が高くなってしまうか、補償の内容が不十分になってしまう可能性が高いです。高齢になればなるほどケガのリスクも高まるため、仕事をしている間は継続して、一人親方労災保険に加入されることを推奨します。

一人親方に加入が義務付けられている保険制度

 一人親方労災保険は義務ではありませんが、「国民皆保険」の言葉もあるように、加入が義務付けられている保険制度(国民健康保険・国民年金)もあります。これらの概要について、簡単にご紹介します。

国民健康保険

 「国民健康保険」とは、自営業者やその配偶者が加入する、国の保険制度のことです。毎月保険料を負担することで、病院や歯科などで保険対象の治療を受ける際に、治療費や薬代などが3割負担に軽減されます。
(国民保険の負担額は、世帯年収や自治体の税率などによって変動)。
また、40歳以上(自営業の方は65歳以上)の方は、「介護保険制度」の対象にもなります。「介護保険」は介護保険料を毎月負担することで、介護が必要になった際の対象施設・サービスでの費用の負担が、1~3割になる保険制度です。

後期高齢者医療

 後期高齢者医療制度は、75歳以上の方が加入する医療保険です。対象となる高齢者は個人単位で保険料を支払います。最近は高齢の一人親方の方も増えてきましたので後期高齢者医療制度に加入している方も多いと思います。一定の障害にある方は65歳から後期高齢者医療に加入します。

国民年金

 「国民年金」とは、20歳以上の国民が全員加入しなくてはならない、年金制度のことです。保険料を納めることで、65歳以降に国民年金を受け取り、老後の生活費に充てられます。令和2年度の国民年金の負担額は、一人あたり月額16,540円です。

一人親方労災保険に加入する3つのメリット

労災保険特別加入のメリット
 義務ではないものの、一人親方労災保険は加入のメリットがたくさんあります。一人親方労災保険に加入する、3つのメリットを解説します。

充実した保険内容

 一人親方労災保険は、補償内容が充実しています。加入すると、指定病院での治療費の自己負担が0になります。また、以下のように補償範囲の幅がとても広いことも、一人親方労災保険の大きな特徴です。

  • 業務上のケガや病気のために、仕事を休まなければならなくなったときの休業補償
  • 死亡時の一時金や遺族年金
  • 要介護が必要になったときの介護補償など

 一人親方労災保険に入ると、一人親方に想定されるさまざまなリスクに対してケアできます。

掛け金が安い

 一日あたりの補償は、3,500円~25,000円まで16段階の給付基礎日額によって決まります。
 例えば、一人親方労災保険加入者のなかで最も加入者の多い、給付基礎日額5,000円の保険料は次の通りです。
※ 団体割引なしの1~4名様、一括払いでお申し込みされた場合。
※ 入会金1,000円と組合費月額500円は含みません。

加入月 期間 労災保険料
4月 12か月 32,850円
5月 11か月 30,096円
6月 10ヵ月 27,360円
7月 9か月 24,624円
8月 8か月 21,888円
9月 7か月 19,152円
10月 6か月 16416円
11月 5か月 13,680円
12月 4か月 10,944円
1月 3か月 8,208円
2月 14か月 ※2月ご加入の場合、次年度の費用と合算して請求 38,322円
3月 13か月 ※3月ご加入の場合、次年度の費用と合算して請求 35,586円
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国の制度なので安心

 一人親方労災保険制度は、国の保険によって定められています。民間の生命保険や医療保険とは異なり、国の制度なので、母体の会社が倒産するなどの心配がありません。保険加入時に慎重に考えている方も、国の制度である点で、安心感を得られるのではないでしょうか?

まとめ

 一人親方労災保険への加入は、義務ではありません。しかし、一人親方労災保険に加入しないことは、大きなリスクにつながります。その理由は、一人親方労災保険に以下のメリットがあるためです。

  • 少ない保険料で、充実した補償が受けられる
  • 請負元の建築会社によっては、労災保険に加入していないと、仕事を受注できないことがある
  • 国の法律で決まっている制度なので、安心感が得られる

 また、厚生労働省も全業種のうち建設業従事者の労災事故が多いことから、積極的に労災保険の特別加入の加入促進をしております。

 参考:建設工事に従事する一人親方の皆様へ
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11200000-Roudoukijunkyoku/0000201936.pdf

 一人親方労災保険に未加入の方は、できる限り前向きに、加入の検討をすることを推奨します。そして、安さ・早さ・安心感のある加入団体をお求めの方におすすめしたいのは、「一人親方団体労災センター」です。

 「一人親方団体労災センター」の契約条件

  • 月額500円
  • 入会金1,000円
  • 月々の保険料以外の追加請求なし

 一人親方労災保険に加入するには必ず団体を通す必要があるため、当団体のように安く・安心感のある団体から申し込みをすることで、大きなメリットが得られます。

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