会社を急に退職することになったとき、失業保険や再就職のサポートが受けられれば、次の生活への仕切り直しがとてもスムーズに進みます。これらの失業保険や再就職支援サポートは、国が定めている雇用制度によって成り立っています。
では、個人事業主である一人親方の場合、廃業の際などに利用できる、雇用保険のような制度はあるのでしょうか?雇用保険への加入を考えている方、いざというときのための安心が気になる方は、ぜひチェックしてください。
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一人親方は雇用保険に加入できる?
雇用保険は、政府による強制保険制度です。従業員を雇用する企業は、必ず雇用保険に加入しなくてはなりません。では、個人事業主である一人親方の雇用保険は、どのようになっているのでしょうか?
この章では、一人親方と雇用保険との関係についてチェックしましょう。
雇用保険とは?
雇用保険とは、労働者の生活の安定や雇用促進を目的とした、国の保険制度です。雇用保険で従業員側に得られるメリットは、以下のとおりです。
- 職業訓練など再就職のサポート
- 条件を満たした場合、高年齢雇用継続給付・育児休業給付・介護休業給付など
- 失業給付
雇用保険は、会社と社員とでそれぞれ費用を負担することになっており、会社員の場合は、給与から自動的に引き落とされる仕組みになっています。
参考:ハローワーク「雇用保険制度の概要」
https://www.hellowork.mhlw.go.jp/insurance/insurance_summary.html
一人親方は加入できない
退職した際、失業給付や職業訓練が受けられるなど、雇用保険に加入すればかなりの安心が得られます。しかし、雇用保険は会社員などを対象とした制度であり、個人事業主である一人親方は加入できません。失業したとき(廃業したとき)に受けられる、国の補償制度はありません。
「特別加入できる」って聞いたんだけど・・・
雇用保険は、しばしば労災保険と混同されます。労災保険とは、業務中のケガ・病気・死亡などに対して、療養補償・介護補償・休業補償・遺族補償一時金などの、補償が得られるサービスです。労災保険も本来は、会社員や公務員を対象としたサービスですが、一人親方は特別加入が認められています。特別加入が認められている労災保険(一人親方労災保険)と異なり、雇用保険には加入できないことを把握しておきましょう。
雇用保険に加入できない一人親方の安全書類は?
「雇用保険に加入できないなら、安全書類の提出はどうするの?」
と、疑問を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
「安全書類」とはどのようなものか、基礎の部分からていねいに解説します。
安全書類とは?
「安全書類」とは、建設現場の安全を守るために、提出が義務付けられている書類です。下請け業者は、工事の進め方・使用する什器のリスト・有資格者の一覧・工事用車両届けなど、必要な書類を書式に沿って記入し、元請業者に提出しなければなりません。そして、安全書類の中に、雇用保険の加入状況を記入する項目があります。
記入可能な箇所を書いて提出
雇用保険に加入できない一人親方は、安全書類の「雇用保険」の欄に記入できません。しかし、安全書類は、請負元から仕事を受注する際に不可欠です。結論からいえば、一人親方は雇用保険などの箇所は記入せず、名簿など可能な箇所のみを記入して、提出すればOKです。
雇用保険適用外の一人親方は労災保険への加入がオススメ
安全書類に関しては、加入できないことで大きくマイナスになることはありませんが、雇用保険が補償してくれる安心できる生活について、一人親方は対策すべきでしょう。特に、ケガや病気などで急に仕事が出来なくなったときに、どのように生活を維持していくか、事前に準備しておかなくてはなりません。
そして、その備えとしておすすめしたいのは、特別加入が認められている「一人親方労災保険」です。
一人親方労災保険のメリットは、以下のとおりです。
- 業務中や通勤中のケガや病気によって、病院などで治療を受ける際の自己負担が0円になる
- 業務中や通勤中のケガや病気によって、就労不能になったときに、休業補償が受けられる
- 業務中や通勤中に死亡した場合、遺族などに対して、一時金や遺族年金が支払われる
一人親方労災保険は、国が運営する制度であるため、とてもコストパフォーマンスに優れた労災保険です。また、民間の保険では就業時の補償など、どうしても保険でまかないにくい面があります。コストパフォーマンスに優れた一人親方労災保険に加入すれば、日常のやりくりに余裕を持たせ、いざというときのために貯金したり、ほかの保険に加入するなどの方法をとれます。
まとめ
残念ながら一人親方は、雇用保険に加入できません。そもそも、一人親方は個人事業主であるため退職や解雇自体ありませんが、それでもケガや病気で働けなくなることや、収入が著しく不安定であるリスクに対する備えは必要です。
一人親方労災保険は、業務中のケガ・病気・死亡を幅広くサポートしてくれる、国の保険制度です。必須ではないものの、一人親方労災保険に加入することで、心理的・物理的にとても安心できるでしょう。