一人親方として建設業に従事する際、水道工事に関する技術や知識があれば、仕事の幅が広がります。なかには、水道工事をメインに活躍する一人親方も存在します。とはいっても、以下のような疑問をもつ方もいらっしゃることでしょう。
「水道工事の仕事で、一人親方として独立できるの?」
「一人親方の水道業者の収入はどのくらい?」
「一人親方の水道屋になるにはどうすればいいの?」
この記事では、一人親方の水道業者の全容を解説します。一人親方労災保険の特別加盟団体である「一人親方団体労災センター」が、わかりやすさを重視してご紹介しています。
Contents
一人親方として働く水道工事の3業種
水道工事は、大きくわけて以下の3事業に分かれます。
- 排水管引き込み工事
- 屋内配管工事
- 下水道排水設備工事
それぞれの仕事内容を簡単にご紹介します。
給水管引き込み工事
土地に面した道路に埋め込まれた水道管から、敷地内(水道メーター)まで水道管を引き込む工事のこことです。水道取り出し工事ともいわれます。通常、工事作業自体は1日あれば完了します。
屋内配管工事
屋内配管工事とは、水道メーターから水道の使用箇所まで配管を伸ばす工事作業のことです。蛇口や止水栓の取り付けが完了したら、水漏れなどの不具合がないかどうかのチェックをおこないます。所要日数は、敷地の広さ・蛇口の数・用途などにより異なります。
一般住宅の場合は、前工程の給水管引き込み工事とあわせて2~3日でおこなわれることが多いです。
下水道排水設備工事
下水道排水設備工事とは、家庭などからの下水を排水するための設備の取り付け工事を指します。一般住宅の下水道排水設備工事の所要日数は2~4日程度です。
水道工事の一人親方の収入
水道工事を専門におこなう一人親方の年収は、人によってかなり大きな幅があります。年収300万円代の方もいれば、1,000万円を超える方もいるので、働き方次第といえるでしょう。
基本的な考え方として、水道工事の一人親方の収益は、以下の計算式であらわされます。
単価の案件×案件数
高収入を得られるようにするには、単価のよい案件を切れ目なく引き受けることが重要です。安定的に仕事を受注するために必要なスキルは、技術力と営業力です。
一般的に、水道工事業者として独り立ちするためには、3~5年の期間を要します。営業力の高さを数値化するのは難しいですが、建築業界での人脈や業界に関する知識が、営業に大いに役立ちます。
なお、水道工事作業の会社員の平均年収は、350万円程度です。一人親方として成功すれば収入アップにつながるため、技術を身につけて一人親方として独立する意義は十分にあります。
水道工事の一人親方のリスク
収入アップにつながることから、一人親方に憧れる方が多くいます。さらに、対人関係や時間に縛られずに仕事ができるという、一人親方ならではの働きやすさもあります。
その一方で、一人親方ならではのリスクがあることも事実です。
この章では、水道工事の一人親方のリスクを3点ご紹介します。
ケガ・病気
水道工事作業は、おもに屋外で工具を使用しておこなう作業です。したがって、屋内のデスクワークなどと比較をするとケガや病気(熱中症など)のリスクは高いです。とはいえ、病気やケガのリスク自体は、会社員でも一人親方でも大きく変わることはありません。決定的に異なるのは、ケガや病気が発生した時の対処です。
- 一人親方の場合は、そのまま仕事を休むとクライアントに迷惑がかかる
(代わりの作業員を探すなどの対策が必要になることがある) - 会社員とは異なり基本給がないため、仕事を満了できなければ収入が得られない
- 社会保険制度や労災保険などの仕組みや得られる金額が会社員とは異なる
※ 労災保険は、本来は会社員しか加入できません。しかし、一人親方には特別加入が認められています。
会社員の労災保険と一人親方の労災保険は、若干内容に違いがあります。
(例)給付基礎日額の扱い(休業補償額の設定金額)
- 会社員・・・給与をベースに自動的に算出
- 一人親方・・・任意で、一人親方が金額を計算して申請
保険・年金
会社員と個人事業主である一人親方は、保険や年金に関する制度が以下のように異なります。
会社員 | 一人親方 | |
公的保険 | 社会保険 | 国民健康保険 |
年金 | 国民年金+厚生年金
+(個人年金) |
国民年金+(個人年金) |
雇用保険 | 必須 | なし |
労災保険 | 必須 | 任意で特別加入可能 |
全体的な傾向としていえるのは、一人親方は会社員ほど保険の保護が厚くないということです。
あらかじめ必要な備えをしておかないと、いざというときに困る可能性がります。公的な制度の他、民間の保険商品・金融商品なども含めて対策を考えましょう。
収入
一人親方の収入は、一言でいえば「ハイリスク・ハイリターン」です。とはいえ、ギャンブルのような「イチかバチか」といった意味ではありません。
建築業界は慢性的に人手が不足していますそして、シニア世代の退職により、人手不足は深刻化するとみられています。それでも、誰でも仕事が受注できるわけではありません。一人前としての確かな腕前と営業力(もしくは業界内での人脈)がなければ、仕事を受注できないためです。
要約すると、技術力・営業力に不安のある方は、安定して収入を得られない可能性があります。
水道工事の一人親方として資格は必要?
水道工事をおこなうためには、取っておくべき資格がいくつかあります。この章では、必ず押さえておきたい資格を4つご紹介します。
これらの資格を取得していると、権威性・実益性がとても高いので、高単価の仕事の受注が容易になるでしょう。
土木工事施工管理技士
土木工事施工管理技士は、土木関係の工事現場にて責任者として全体を管理するために必須の資格です。工事現場には、必ず資格保有者を置かなくてはならないため、現場でのニーズが非常に高いです。
土木工事施工管理技士になるためには、実務経験などの要件が指定されています。学歴や現在の資格状況によって細かく要件がわかれますが、1級を受験するためには最低でも5年以上の実務経験が要求されます。
試験の合格率は50%程度です。
排水設備工事責任技術者
排水設備工事責任技術者は、排水工事の施工レベル向上のために設けられている資格制度です。各都道府県の水道局などが主催して実施しています。
下水道排水工事をする際には、現場に必ず1名以上の資格保持者が必要なので、資格を取得しているとより多くの現場で活躍できます。試験を受けるためには、2年以上の実務経験が必須です。
合格率は都道府県により異なりますが、おおむね30~50%です。
管工事施工管理技士
管工事施工管理技士は、配管工事の施工計画を作成したり管理したりする際に要求される国家資格です。資格の有効範囲の違いによって、1級・2級に分かれています。
ガス管や水道管などの工事現場で工事をする際に、必ず管工事施工管理技士が1人以上必要です。
1級の合格率が50%ほどですが、一定の実務経験がなければ試験を受験できません(1級の場合、大卒3年以上/高校卒5年以上/そのほか10年以上)
給水装置工事主任技術者
水道管の設置・改造・修繕をおこなう際に必要とされる国家資格です。ご自身で作業する場合はもちろんですが、現場で管理者としてマネジメントするためにも必須の資格です。厳密に言えば、給水装置工事主任技術者は1つの現場につき1名の資格保有者がいればOKです。
給水装置工事主任技術者は、1年に1度実施される資格試験に合格すると取得できます。受験のための要件として3年以上の実務経験が必要です。
合格率は、約40%なのでしっかりと対策をすれば十分に合格できます。一人親方の場合はご自身で取得しておかないと現場を担当できない可能性があるため、取得しておきたい資格です。
水道工事の一人親方の将来性
水道工事の技術者は、今後より一層の人材難になる可能性が高いでしょう。インフラのニーズは、今後の不動産ニーズや技術革新などによって多少の変動はあるでしょう。しかしどんなに技術が変化しようとも、住宅や施設に水道設備は必須です。したがって、現在すでに技術を身につけている方は十分に知識や技術を活かして、一人親方として活躍できる可能性が大いにあります。ただし、以下に該当する方は少し慎重に検討した方が良いかもしれません。
- まだ水道工事の事業に携わっていない(もしくは経験が浅い)ため、独立しても一人で仕事をやれる自信がない
- 業界内に人脈がなく、仕事を受注できない
しかし上記の状況であったとしても、将来的な独立を意識しながら会社で技術を磨けば、数年間で独立のチャンスが得られるでしょう。それでも水道工事の将来性に不安を感じる方もいらっしゃるかもしれません。その場合は、水道工事の実務と合わせて住宅建築に関するそのほかの業務の技術を磨いておくのもオススメです。
例えば、外壁や内装工事などをご自身で作業できるようにしておくと、水道工事に合わせて水回りの作業や外壁の作業を担当できるようになります。
技術の土台と最低限の営業力さえあれば、将来的にも十分に稼げるでしょう。
まとめ
水道管や下水管に関連する工事は、住宅の建築において非常に重要性の高い箇所です。住宅や施設には必ず水道の設備が必要であるため、水道工事を担当できる一人親方は重宝されます。
クライアントや取引先から頼られる一人親方になるには、技術力を磨くことが重要です。また、国家資格などを取得したり仕事の幅を広げたりすることで、仕事の単価アップや幅の広がりなども期待できるでしょう。
将来の独立を検討中の方は、ぜひ本記事を参考にしていただけたら幸いです。