昨今の日本において外国人労働者の需要が高まり、外国人労働者数は増加傾向にあります。外国人が日本で就労するには在留カードが必要です。
そこで本記事では、在留カードの概要を、取得の流れや各種手続き方法とともにご説明します。また外国人労働者の労災保険適用についても解説しますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
外国人の在留カードとは?
政府が推進する外国人労働者受け入れ制度や国際結婚などにより社会のグローバル化が加速し、日本国内における外国人労働者の数は増加傾向にあります。深刻な人材不足を解消するため積極的に外国人労働者の採用に取り組んでいる事業主も少なくありません。
ここでは、外国人が日本で働くのに必要な「在留カード」の概要を解説します。
中長期滞在者に対して交付される「証明書」および「許可書」
在留カードは、中長期滞在者に対して交付される「証明書」および「許可書」のことです。
在留カードが交付されると、出入国在留管理庁長官により、中長期日本に滞在できる在留資格を持つ者であることが証明されたことになります。また在留カードは、従来の旅券になされる各種許可の証印などに代わって、許可の要式行為となる「許可書」としての役割も果たします。
中長期滞在者とは、以下のいずれにもあてはまらない外国人のことです。
- 「3月」以下の在留期間が決定された人
- 「短期滞在」の在留資格が決定された人
- 「外交」または「公用」の在留資格が決定された人等
- 特別永住者
- 在留資格を有しない人
引用:厚生労働省「外国人を雇用する事業主の方へ 」
在留カードには、以下のような情報が記載されています。
- 氏名
- 生年月日
- 性別
- 国籍・地域
- 住居地
- 在留資格
- 在留期間
- 就労の可否
また16歳以上の外国人の場合は、顔写真も貼付されます。
外国人登録証明書との違い
「外国人登録証明書」は、日本に90日を超えて滞在する外国人が「外国人登録」を行う際に交付されていた証明書で、2012年7月の法改正により廃止されました。
新しい在留管理制度の導入により、中長期滞在者には「在留カード」が交付されることとなりました。外国人登録証明書は、その後も一定期間(最長2015年7月8日まで)「在留カード」とみなされましたが、現在では完全に廃止されています。
在留カードの携帯義務と罰則
「出入国管理及び難民認定法」には、在留カードの携帯義務と罰則に関して、以下のように記されています。
第二十三条
2 中長期在留者は、出入国在留管理庁長官が交付し、又は市町村の長が返還する在留カードを受領し、常にこれを携帯していなければならない。
5 十六歳に満たない外国人は、第一項本文及び第二項の規定にかかわらず、旅券等を携帯することを要しない。第七十五条の三
第二十三条第二項の規定に違反して在留カードを携帯しなかつた者は、二十万円以下の罰金に処する。
引用:e-GOV法令検索「出入国管理及び難民認定法」
16歳以上の中長期滞在者は在留カードを常時携帯し、入国審査官や警察などから提示を要求された場合は応じなければなりません。この規定に違反した場合20万円以下の罰金が科せられます。
外国人の在留資格一覧
在留資格に応じ、日本国内で行える活動や在留期間が定められています。ここでは、在留資格を大きく以下の3つに分けて表にまとめます。
- 就労目的の在留資格
- 身分に基づく在留資格
- その他の在留資格
就労目的の在留資格
就労目的で在留を許可された外国人は、それぞれの在留資格に定められた範囲で就労が可能です。
在留資格 | 該当例 | 在留期間 |
教授 | 大学教授等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
芸術 | 作曲家・画家・著述家等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
宗教 | 外国の宗教団体から派遣される宣教師等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
報道 | 外国の報道機関の記者・カメラマン | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
投資・経営 | 外資系企業等の経営者・管理者 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
法律・会計業務 | 弁護士・公認会計士等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
医療 | 医師・歯科医師・看護師 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
研究 | 政府関係機関や私企業等の研究者 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
教育 | 中学校・高等学校等の語学教師等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
技術 | 機械工学等の技術者 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
人文知識・国際業務 | 通訳・デザイナー・私企業の語学教師等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
企業内転勤 | 外国の事業所からの転勤者 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
興行 | 俳優・歌手・ダンサー・プロスポーツ選手等 | 3年・1年・6ヵ月・3ヵ月または15日 |
技能 | 外国料理の調理師・スポーツ指導者・航空機等の操縦者・貴金属等の加工職人等 | 5年・3年・1年または3ヵ月 |
参考:厚生労働省「外国人を雇用する事業主の方へ 」
身分に基づく在留資格
身分に基づき在留が認められる外国人に関しては、活動制限なしでの就労が可能です。
在留資格 | 該当例 | 在留期間 |
永住者 | 法務大臣から永住の許可を受けたもの(入管特例法の「特別永住者」を除く) | 無期限 |
日本人の配偶者等 | 日本人の配偶者・実子・特別養子 | 5年・3年・1年または6ヵ月 |
永住者の配偶者等 | 永住者・特別永住者の配偶者および日本で出生し引き続き在留している実子 | 5年・3年・1年または6ヵ月 |
定住者 | 日系3世等 | 5年・3年・1年・6ヵ月または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲) |
参考:厚生労働省「外国人を雇用する事業主の方へ 」
その他の在留資格
上記以外にも、報酬を受ける活動が許されている在留資格や、就労活動が認められていない在留資格があります。
在留資格 | 該当例 | 在留期間 |
技能実習 | 研修生・技能実習生 | 1年・6ヵ月または法務大臣が個々に指定する期間(1年を超えない範囲) |
特定活動 | EPAに基づく外国人看護師・介護福祉候補者・ワーキングホリデー・ポイント制による高度外国人材等 | 5年・4年・3年・2年・1年・6ヵ月・3ヵ月または法務大臣が個々に指定する期間(5年を超えない範囲) |
留学 | 日本の大学・短期大学・高等専門学校・日本語教育機関等で学ぶ留学生 | 法務大臣が個々に指定する期間(4年3ヵ月を超えない範囲) |
家族滞在 | 「教授」「芸術」「宗教」「報道」「投資・経営」「法律・会計業務」「医療」「研究」「教育」「技術」「人文知識・国際業務」「企業内転勤」「興行」「技能」「文化活動」「留学」のいずれかの在留資格を持つ外国人の扶養を受ける配偶者と子ども | 5年・4年3ヵ月・4年・3年3ヵ月・3年・2年3ヵ月・2年・1年3ヵ月・1年・6ヵ月または3ヵ月 |
参考:厚生労働省「外国人を雇用する事業主の方へ 」
留学や家族滞在などの在留資格では原則として就労活動が認められていませんが、「資格外活動許可」を申請することでアルバイトやパートなどで働けるようになります。ただし労働時間は週28時間以内に限定され、風俗営業や風俗関係業での仕事はできません。
外国人の在留カード取得の流れ
外国人の在留カード取得の流れは以下のとおりです。
- 「在留資格認定証明書」の交付申請をする
雇用主または代理人が「在留資格認定証明書」の交付申請を行います。
申請時には日本での活動内容を証明する書類も必要で、出入国在留管理局により在留資格に適しているかが審査されます。 - 現地にてビザ申請をする
「在留資格認定証明書」が交付されたら、証明書を現地の外国人に送ります。
外国人は証明書を持参して、現地の日本大使館・領事館で入国に必要なビザ申請を行います。 - 入国時に在留カードを受け取る
外国人は証明書とビザを持参して来日し、入国時に在留カードを受け取ります。
在留カード取得後の各種手続き
在留カード取得後に記載内容の変更が生じる場合は、速やかに変更手続きをする必要があります。その際、市町村の窓口で行う手続きと地方入国管理局窓口で行う手続きとがあるため、注意が必要です。
ここでは、在留カード取得後の各種手続きを申請場所ごとにまとめます。
市町村の窓口で行う手続き
住居地に関する届出は、市町村の窓口で手続きを行います。
- 新たに来日した場合
出入国港で在留カードが交付された場合は、住居地が決まってから14日以内に在留カードを市町村の窓口に持参し、居住地を法務大臣に届け出ます。
在留カードが後日交付される場合は、その旨が記載された旅券を持参して同様の手続きを行います。 - 引っ越した場合
中長期滞在者が引っ越しをした場合は、移転日から14日以内に在留カードを移転先の市町村の窓口に持参し、法務大臣に届け出ます。
なお、来日期間中に在留資格変更許可などにより新たに中長期滞在者となった場合も、市町村の窓口で同様の手続きが必要です。
地方入国管理局窓口で行う手続き
住居地以外の届出に関しては、地方入国管理局窓口で手続きを行います。
- 記載内容の変更
結婚などで名字や国籍が変わり、氏名・生年月日・性別・国籍・地域の変更が生じた場合は、14日以内に地方入国管理官署で法務大臣に届け出ます。
氏名欄に併記された漢字表記を変更する場合も、同様の手続きが必要です。 - 在留カードの有効期間更新
永住者や、16歳未満で有効期間が16歳の誕生日となっている場合は、有効期間満了前に地方入国管理官署で在留カードの有効期間更新を申請します。
永住者は有効期間が満了する2ヵ月前、16歳未満の方は16歳の誕生日の6ヵ月前から申請可能です。 - 在留カードの再交付申請
在留カードの紛失・盗難・滅失または著しい汚損・毀損が生じた場合は、地方入国管理官署に再交付を申請します。
紛失・盗難・滅失の場合は、警察署や消防署で発行される各種証明書を持参して、その事実を知った日から14日以内に手続きを行います。
これらの届出の際は、旅券・写真・在留カードの持参が必要です。原則として、届出および申請日に新しい在留カードが交付されます。
外国人の一人親方は在留カード提出で労災保険に特別加入できる!
日本国内で雇用される外国人労働者も、労災保険の対象です。業務中または通勤中の事故でケガや病気が発生した場合は、労災保険を使って治療できます。
ただし「労働者」に該当しない一人親方は、労災保険の対象ではないため注意が必要です。この場合、労災保険の特別加入制度を利用することで、仕事中の事故のリスクに備えることができます。
近年では外国人の一人親方が、一人親方労災保険への加入を希望するケースも増えています。外国人の場合も在留カードのコピーを提出することで、労災保険の特別加入への申請が可能です。
その際は、建設就労者の以下の要件を満たす必要があります。
- 永住者・定住者・日本人の配偶者等・永住者の配偶者等
- 技能実習生
- 特定技能:建設
「一人親方団体労災センター 」では、全国の一人親方が安心して労災保険に特別加入できるよう、わかりやすい説明と親切丁寧をモットーにサポートしております。外国人の加入実績もありますので、わからないことは何でもお気軽にご相談ください!
まとめ
外国人の在留カードの概要について、取得方法や各種手続きとともにまとめました。
深刻化する人手不足問題や社会のグローバル化を受け、日本でも外国人労働者が増えています。外国人労働者を雇用する際は、在留カードで就労が認められているかを確認しましょう。
外国人労働者も労災保険の対象者です。外国人の方が一人親方の場合、労災保険に加入するには特別加入制度を活用する必要がありますが、労災保険に加入しておけば万一の時にも安心です。加入手続きには、在留カードのコピーを提出する必要があります。
詳しくは「一人親方団体労災センター」まで、お気軽にお問い合わせください!