足場職人として経験を積むうちに、独立開業したいと考える方は多いでしょう。
独立を考える方がよく疑問に感じられるのが、以下の点です。
- 独立するメリットは?
- 何を準備したらよい?
- 独立後の年収はどのくらい?
- 必要な資格はある?
本記事では、これらの質問の答えを独立後の注意点とともに解説します。独立して成功するための大切な情報が含まれていますので、ぜひ最後までお読みください。
Contents
足場職人として独立するメリットとは?
足場職人として経験を積むと、独立を考える方も多いでしょう。独立することで、以下のメリットが期待できます。
- 需要がある
住宅・ビルなどの建設現場や、店舗改装工事などでも足場職人は必要とされます。ほとんどの建設工事で足場を組むため、足場職人の需要は高く、仕事がなくて困るリスクは小さいと考えられます。 - 年収アップが狙える
足場職人は、年齢や学歴に関係なく、技術があれば稼げる職種です。独立すると働いた分がそのまま自分の収入になるため、給料制の会社員と比較して年収アップが狙えます。 - 独立しやすい職種である
足場職人は、技術や経験を積むと直接仕事を引き受けられるようになります。他の業界と比較して独立しやすい職種で、やがては会社を立ち上げることも可能です。
足場職人で独立するのに必要な準備
足場職人で独立するのに必要な準備を大きく2つに分けると、以下のとおりです。
- 開業資金を用意する
- 開業届など各種手続きを行う
ここでは、それぞれのポイントを解説します。
開業資金を用意する
足場職人で独立するには、開業資金を用意しなければなりません。必要な資金の内訳は、以下のとおりです。
- 足場資材
足場職人として仕事をするには、足場資材を用意する必要があります。足場資材の相場は、1棟分で100万円程度。事業規模にもよりますが、十分な量の足場資材を用意するにはかなりの資金を必要とします。それで、はじめは足場資材を持たずに手間請けで働くか、足場資材のレンタルを活用するとよいかもしれません。 - 土場
足場資材を所有する場合は、保管場所として土場が必要です。高額な足場資材は盗難の危険があるため、セキュリティ面でもある程度の費用がかかるでしょう。 - 事務所
一人親方として独立する場合は、自宅兼事務所ではじめられます。従業員を雇用するようになると、事務所を借りるための資金が必要です。 - トラック
現場まで足場資材を運搬するのに欠かせないのがトラックです。手間請けで働く場合も足場資材の運搬は必要なため、独立の際にはまずトラックを購入しましょう。 - 人件費
従業員を雇用する場合は、給料の支払いが発生します。建設業界は締め日が遅い傾向にあるため、人数分の給料を2~3か月分は用意しておくと安心です。
これらをすべて用意するとなると、数千万円の資金が必要になるでしょう。資金調達方法として、「日本政策金融公庫」で融資してもらえる可能性があります。「新創業融資制度」の要件を満たす方は、新事業に必要な設備資金および運転資金として、最高3,000万円までの融資が受けられます。
開業届など各種手続きを行う
足場職人で独立するには、開業届など各種手続きを行う必要があります。
開業届は、個人事業主が事業を開始してから1か月以内に提出しなければならないと定められています。税務署に届け出る際は、税制面での待遇を受けるために「青色申告承認申請書」も同時に提出しましょう。
開業届には、屋号を記入する項目があります。屋号とは、個人事業主の事務所や店舗などに利用できる名称で、「〇〇足場」「〇〇建設」などが当てはまります。必須項目ではありませんが、屋号があると今後事業を行うにあたり周囲に覚えてもらいやすくなるため、考えておくとよいでしょう。
また、1件当たりの請負金額が500万円を超える場合は、建設業許可が必要です。一人親方として独立するケースでは必要ありませんが、事業拡大を考えている方は取得を検討しましょう。
独立後の年収目安は?
足場職人の独立後の平均年収は、600~800万円ほどだといわれています。雇用されている足場職人の平均年収が400万円前後であるため、独立することで年収アップが可能です。
ただし、年収はあくまでも目安で、実際は仕事量や単価に比例することを忘れてはなりません。平均年収に達するかは、安定した仕事量を獲得できるかにかかっています。
営業を怠って仕事を獲得できなければ、収入は当然0円です。会社を設立して従業員を雇う場合、事業が軌道に乗れば年収1,000万円を超えるケースもあります。
足場職人で独立するのに必要な資格
足場職人として働くために必須の資格はありませんが、独立を目指す場合は資格が必要です。独立するのに必要な資格は、以下のとおりです。
- 玉掛け技能講習
足場職人が最初に取得しなければならない技能が「玉掛け」。クレーンなどに鉄骨などを吊るとき、フックにワイヤーロープにかける玉掛け作業を行うには資格を必要とします。玉掛け技能講習を受講・修了することで、玉掛けの技術をアピールできます。 - 足場の組立て等作業主任者
足場工事の現場経験を3年以上積んでから取得できる資格です。(満21歳以上)5メートル以上の足場の組立・解体・作業変更をするには、「足場の組立て等作業主任者」の配置が義務付けられています。 - 建築物等の鉄骨の組立て解体等作業主任者
5メートル以上の建築物で鉄骨の組立・解体をするには、「建築物等の鉄骨の組立て解体等作業主任者」の配置が義務付けられています。資格取得には、実務経験3年以上(大学や専門学校で専攻していた場合は実務経験2年)が必要です。 - とび技能士
「とび技能士」は、とび職人としての技能を証明する国家資格です。1~3級まであり、1級を取得するには「実務経験7年」および「2級取得後の実務経験が2年以上」の受験資格を満たさなければなりません。ハードルの高い資格ですが、足場職人として高い技術を持つことを証明できるため、独立してから目指すのもよいでしょう。
足場職人が独立後に注意すること
足場職人として成功するかは、独立後が肝心です。特に注意したいのは、以下の3つの点です。
- 独立直後は資金繰りが難しい
- 事務関連の仕事や営業は自分で行う
- 労災保険に加入する
ここでは、各ポイントを具体的に解説します。
独立直後は資金繰りが難しい
足場職人として独立した直後は、資金繰りが難しいため注意が必要です。
会社員のときは毎月決まった日に給料がもらえました。しかし、独立後は元請け会社により支払い日が異なります。
特に建設業界は、支払いサイクルが長いといわれています。例えば、月末締め翌々月末払いのケースもあるようです。複数の請負会社と取引をしている場合は、支払いサイクルを確認しながら事業を進める必要があります。
会社を立ち上げて従業員を雇う際は、給料の支払いが滞ることがないよう注意しましょう。たくさんの案件を確保して利益が出ていても、入金を待っている間に手元に資金がなくなってしまうケースがあります。入金と支出のタイミングが合わずに黒字倒産してしまう場合もあるため、資金繰りには注意を払い、特に独立直後は資金に余裕を持つようにすると安心です。
事務関連の仕事や営業は自分で行う
足場職人で独立する際は、事務関連の仕事や営業を自分で行うようになることにも注意しましょう。
会社では事務スタッフや営業スタッフがいるため、自分は足場作業に専念できました。しかし独立すると、事業を続けるのに必要な仕事をすべて自分でしなければなりません。
独立してから、事務スタッフが行っていた見えない仕事のボリュームに圧倒される方もいるようです。一人で仕事が回せなくなるほど忙しくなると、本業のパフォーマンスが落ちてミスやトラブルにつながるケースもあります。そうならないために、事務仕事を効率よくできる体制を築いておくことは重要です。独立の際に、家族に事務仕事をお願いしたり、アウトソーシングを活用したりする方もいます。
また、営業も欠かすことのできない大切な仕事で、これを怠ると次の仕事がなくなってしまうこともあるため注意が必要です。今の現場が終わって次の現場にスムーズに移れるかは、自身の営業力にかかっています。ホームページの作成やSNSの活用など、さまざまな工夫をして集客の仕組みを構築しましょう。
労災保険に加入する
足場職人で独立する際は、労災保険に加入するのがおすすめです。
会社に雇用されているときは、労働者として労災保険に自動的に加入していました。しかし、独立すると労働基準法が定める「労働者」ではなくなるため、労災保険は適用されなくなります。労災保険未加入の状態でケガや病気をすると、治療費を全額負担することになるため注意が必要です。
一人親方として独立する場合は、任意で加入できる一人親方労災保険を活用しましょう。一人親方労災保険は、特別加入団体をとおして加入でき、万一のケガや事故の際に、一般の労働者に準じて国の手厚い補償が受けられる保険制度です。高所作業をメインとする足場職人は、常に転落事故のリスクを抱えているため、一人親方労災保険への加入は必須だといえるでしょう。
一人親方労災保険についてのご相談は、労働局承認の「一人親方団体労災センター」までお気軽にお問い合わせください。
建設現場への入場の際に、労災保険番号の提出が求められるケースが増えています。一人親方団体労災センターでは、最短翌日から加入可能で、加入証明書の即日発行にも対応しています。お急ぎの方や短期加入のご相談も、「一人親方団体労災センター」までお問い合わせください!
まとめ
足場職人で独立開業するメリットや、必要な準備についてまとめました。
足場職人は比較的独立しやすい職種で、年収アップが狙えるなど多くのメリットがありますが、独立直後の資金繰りの難しさや仕事を獲得できるかは自身の営業力にかかっているなど、注意すべき点もあります。
独立後に技術力をアピールできるよう、経験を積みながら資格取得も目指すとよいでしょう。また、十分な額の開業資金を貯めておくことも大切です。
そして、独立後は労災保険が適用されなくなるため、一人親方団体保険に加入してリスク対策をすることも忘れないよう気を付けましょう。