個人事業主は「労働者」に該当しないため、会社員とは保険の面でもさまざまな違いがあります。
国民健康保険や国民年金保険だけでは「傷病手当を受給できない」「老齢年金しか受け取れない」など手薄に感じる点も多いと思います。
そこで、個人事業主が安心して働けるよう、加入しておくべき民間保険をチェックしておきましょう。
本記事では、個人事業主が特別加入制度を利用して加入できる労災保険についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
Contents
個人事業主と会社員の社会保険の違い
個人事業主と会社員とでは、社会保険にさまざまな違いがあります。
保健の種類ごとに、どのような違いがあるのかをまとめました。
健康保険
健康保険は、ケガや病気のときにかかる医療費の一部を負担してもらえる公的医療保険です。
会社員は健康保険、個人事業主は国民健康保険に加入します。
医療負担額はどちらも3割で変わりませんが、健康保険に加入している会社員の場合は保険料の支払いが会社との折半になるのに対し、個人事業主は全額自己負担です。
保険料の金額については、会社員は給料の平均額に応じて、個人事業主は前年の所得に応じて算出されます。
国民健康保険は市区町村が運営している制度であるため、会社員から個人事業主になった場合は役所での加入手続きが必要です。
介護保険
介護保険は、高齢者の介護負担を社会全体で支えることを目的とした制度です。
原則40歳以上のすべての人が介護保険料を支払うこととされており、会社員であっても個人事業主であっても変わりません。
ただし、会社員と個人事業主では保険料の支払方法に違いがあります。
会社員の場合は健康保険と介護保険がまとめて給料や賞与から天引きされますが、個人事業主は国民健康保険料とともに自分で納付することが必要です。
65歳以上になると、年金から介護保険料が差し引かれる形での納付となります。
年金保険
年金保険は、病気やケガで働けなくなったときや、退職後の生活に備えて掛け金を支払う制度です。
会社員は厚生年金に加入しており、会社と従業員が折半して年金保険料を支払います。
一方、個人事業主は国民年金保険に加入することになり、保険料は全額自己負担です。
国民年金保険は20~60歳のすべての国民が支払う必要がある制度で、厚生年金はその国民年金を土台としてプラスで支払うため、最終的に受けられる年金の額も大きくなります。
国民年金は配偶者の保険料も納付する必要があるため、会社員として働いていたときよりも負担が大きくなると考えられます。
個人事業主が加入できない保険
個人事業主が原則加入できないとされている保険には、雇用保険と労災保険があります。
それぞれどのような保険で、加入できないことにはどのようなリスクがあるのかをご紹介します。
雇用保険
雇用保険とは、会社を辞めたり会社が倒産したりして失業した際に、一定期間、失業保険の給付を受けられる制度です。
そのほか、再就職に向けてスキルアップを目指すための研修や、職業相談などの支援を受けることも可能です。
雇用保険は雇用されている人を保護する制度なので、個人事業主には適用されません。
ただし、副業として別の事業主に雇用されている場合は、以下のような条件を満たすことで副業先の雇用保険に加入できます。
・所定労働時間が週20時間以上
・31日以上の雇用が見込まれている
・学生でない
労災保険
労災保険は、業務中もしくは通勤中のケガや病気に対して、療養補償や休業補償などのさまざまな補償を受けられる制度です。
従業員を雇用している事業主には加入の義務があり、保険料は事業主が負担します。
会社などに雇用されている労働者のための保険なので、個人事業主は対象外です。
しかし、一般の労働者と同様の保護が必要であると判断される場合、特別加入制度を利用することで個人事業主も労災保険に加入できる可能性があります。
労災保険の特別加入については、次項以降で詳しくご紹介します。
個人事業主が民間の保険に加入した方がよい理由
個人事業主は社会保険だけでなく、民間の保険にも加入した方がよいといわれています。
その理由には、次のようなものがあります。
傷病手当金を受給できない
国民健康保険に加入していれば、会社員が加入する健康保険と同じように医療費の給付や高額療養費制度の対象になりますが、傷病手当金は受給できません。
傷病手当金とはケガや病気で4日以上働けない状態が続いたときに支給される手当で、最大で平均収入の3分の2が通算1年6ヶ月まで支給されます。
傷病手当金が支給されないとケガや病気で働けなくなったときに収入に大きく影響するため、ほかに活用できる保険に加入していなかったり貯蓄がなかったりする場合は、生活が苦しくなってしまう可能性があるでしょう。
老齢基礎年金しか受け取れない
前述したように、会社員は厚生年金保険と国民年金保険の両方に加入していることになるため、将来的に受け取れる年金の額が大きくなります。
その点、個人事業主は国民年金のみの加入なので、老後に受け取れるのは老齢基礎年金のみです。
つまり、定年後の収入が会社員として働いていた人よりも少なくなる可能性が高いため、不足分の資金を別の方法で賄わなければなりません。
遺族年金や障害年金の金額が少ない
国民年金でも被保険者が死亡した場合や障害認定を受けた場合の遺族年金・障害年金が受け取れますが、国民年金のみ加入しているため受給額は少なくなります。
遺族基礎年金については受給資格者が配偶者もしくは子に限られており、一定の条件を満たす子がいない場合は配偶者も受給できません。
障害年金については、障害基礎年金は障害等級が1級、2級の状態にあるときに障害基礎年金が支給され、1級、2級、3級の状態にあるときに障害厚生年金が支給されるというように、障害基礎年金の方は受給範囲が狭くなるのが特徴です。
個人事業主が加入すべき保険
個人事業主が加入できる公的な社会保険だけでは、将来的な不安が大きくなる可能性があります。
そこで、個人事業主に加入をおすすめしたい民間保険をご紹介します。
労災保険の特別加入
個人事業主が労災保険に特別加入した場合、以下のような補償が受けられるようになります。
- 療養補償:ケガや病気の治療にかかる費用などが支給される
- 休業補償:治療が必要な間の生活補償として支給される
- 傷病補償:ケガや病気が1年半以上治らないときに支給される
- 障害補償:労災事故により障害が残ってしまったときに支給される
- 介護補償:一定の障害により介護が必要なときに支給される
- 遺族補償:個人事業主が死亡した場合に遺族に対して支給される
- 葬祭料:個人事業主が死亡した場合に葬祭料として支給される
特別加入団体を経由して加入する必要があるため、自分が住んでいるエリアを対象としている団体の中から、利用しやすいところを探して申し込みをしましょう。
個人年金保険
個人事業主は老齢基礎年金しか受給できないため、老後に受け取れる年金の額を増やすために個人年金保険に加入する方法があります。
個人年金保険は民間の生命保険会社が取り扱っており、長期間にわたって積み立てた掛け金を契約時に定めた年齢になったときに受け取るというものです。
年金の受取方法には、年金受取人の生死にかかわらず一定期間年金を受け取れる「確定年金」と、一生涯にわたって年金を受け取る「終身年金」の2種類があります。
医療保険
公的医療保険ではカバーしきれない部分を補うために、民間の医療保険に加入するのもおすすめです。
公的医療保険の適用外である入院時の食事代や差額ベッド代、自宅から病院までの交通費などの負担も、民間の医療保険でカバーできます。
保険料は補償内容や加入期間などによって決まり、同じ補償内容でも保険会社によって金額が異なるのも特徴です。
一定期間の保障を確保できる「定期医療保険」をはじめ、がんになった場合の保障に特化した「がん保険」、女性がかかりやすい病気への保障を手厚くした「女性向け医療保険」などの種類があります。
就業不能保険
就業不能保険は、病気やケガなどで長期間働けなくなったときに給付を受けられる保険です。
長期間の入院はもちろんのこと、医師の指示によって在宅療養をしている場合や、障害等級1級・2級に該当する場合などに、就業不能保険で備えることができます。
医療保険との違いは、働けない間の生活費に充てられるよう、毎月給付金を受け取れることです。
長期間働けなくなったときに傷病手当金や障害年金などの公的年金で生活費を賄えない人は、加入を検討するとよいでしょう。
終身保険
終身保険は一生涯にわたって保障が続く保険のことで、死亡時に必要な葬儀費用や、死亡の整理費用などを準備するために活用する人が多くなっています。
中途解約した場合は契約からの経過期間に応じた解約返戻金を受け取れるため、老後資金や子供の教育資金としても活用可能です。
また、更新がない保険なので加入時の保険料が途中で上がることはないというメリットもあります。
掛け捨てタイプの保険と比べて保険料は割高ですが、若い年齢で加入すると比較的安く済む可能性があるため、早めに検討してみるとよいでしょう。
まとめ
個人事業主が加入できる公的保険の種類や加入できない保険、民間の保険に加入すべき理由などを詳しくご紹介しました。
個人事業主は会社などに雇用されている「労働者」に該当しないため、一般的な会社員が加入する保険とは異なる部分があります。
将来のことを考えると公的保険だけでは手薄な場合が多いため、民間の保険に加入することを検討した方がよいでしょう。
本記事では、個人事業主が加入すべき保険5選もご紹介しています。
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