建設現場の効率化と安全性向上は、現場に関わる人に求められる課題です。
現場改善につながる手がかりになるのが、4S活動です。
整理、整頓、清掃、清潔を徹底するこの活動は、作業効率を高めるだけでなく、安全性向上にも大きく貢献します。
複数の作業者を従えた現場に限らず、一人親方でも4S活動を行えば、大きな効果が得られます。
この記事では、建設業における4S活動、その実践方法をまとめました。
日々の作業をスムーズに進めたい、無駄を減らしたいと感じている方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
そもそも4S活動とは何か?
4S(よんえす)とは、整理、整頓、清掃、清潔の4つをまとめた言葉で、職場を安全で働きやすくするための活動です。
【4S】Sの頭文字が表す4つの言葉 | ||
Seiri | 整理(せいり) | 不要なものを捨てる |
Seiton | 整頓(せいとん) | 必要なものがすぐ使えるように、場所を決めて置く |
Seisou | 清掃(せいそう) | きれいに掃除する |
Seikethu | 清潔(せいけつ) | きれいな状態を維持する |
4S活動は、ただ職場をきれいにするだけではありません。
作業する人の健康を守り、安全性を高め、仕事の効率を上げる効果がある取り組みです。
もともとは製造業で行われていましたが、4S活動から得られる効果から、今ではさまざまな業界でも取り組まれるようになりました。
4S活動は、外部の人が評価するポイントにもなります。
しっかり実践されている現場は「良い環境だ」と判断されやすいです。
その結果、会社や一人親方の評価は向上するといえます。
4S活動は、職場環境の改善や仕事の質を良くし、会社全体の成功に貢献する重要な取り組みといえるでしょう。
3S・5Sとの違い
4Sに対して、3Sや5Sといった活動もあります。
3S
3Sは整理・整頓・清掃の3つを行う、安全性向上を目的とする活動です。
安全な現場環境を作るためには、3Sの徹底が重要になります。
一方で4Sは、3Sが推進された状態を作り、保つための活動です。
5S
5Sとは4Sに躾(しつけ)を加えたものをいいます。
躾とは、4Sに関してルールや規律を作り、守らせる習慣化をいいます。
躾を行い、4S活動を定着させる活動が5Sです。
4Sに人の躾が入った5Sは、様々な事業体における「経営管理手法」としても用いられています。
4S活動を行う目的
4S活動を行う目的は、次の3つです。
4Sの目的 | 目的に対する効果 |
作業しやすい職場環境の構築 | 整理、整頓、清掃を行い、ムダなものがない作業環境作りができる |
無駄な作業をなくした効率化 | 職場環境が整えば、ミスや無駄な作業が減らせられ、効率化できる |
効率化による生産性向上 | 作業の効率化で、自然に全体の生産性が向上する |
3つの目的には、集中して作業に取り組める職場環境作り、効率化、生産性向上があります。
その結果、労災を防げる安全な職場環境と、効率よく作業を進められる理想の職場づくりが行えます。
建設業における4つのSについて
4S活動とは、整理・整頓・清掃・清潔の4つを合わせた活動です。
ここでは、4つのSそれぞれの内容について解説します。
整理
整理とは、必要なものと不要なものを分け、不要なものを取り除く活動です。
建設現場の場合、作業によって発生するごみだけでなく、すぐに使うかわからない道具や資材の準備も念頭に入れると良いでしょう。
今日使わない道具や資材は、段取りにおいて効率化につながるかもしれませんが、当日作業での効率の低下や安全性の低下を引き起こす可能性があります。
そのため、今の状態で不要なものを分けるだけでなく、元より不要なものを持ち込まない工夫も大切です。
整頓
整頓とは、必要なものを決められた場所に置き、すぐに使える状態にしておくことです。
物の場所を決めて管理し、使った後に元の場所へ戻しておけば、どれが足りないか、壊れていないかをすぐに確認できます。
工具・用具のみならず資材・材料を探す無駄も無くせます。
その際、安全に配慮した置き方が大事です。
整頓が浸透すると、探す手間を省き、作業を効率的に進められるようになります。
清掃
清掃は、現場を掃除しきれいな状態にする作業です。
清掃は地味な作業ですが、とても重要な役割を持ちます。
汚れた現場だと視認性が低下してしまい、注意力も散漫になってしまうリスクがあります。
これにより危惧されるのは、作業効率の低下、事故の発生する危険性向上です。
定期的に清掃を行えば、周囲の作業者も自分自身も快適に仕事ができ、けがするリスクを減らせます。
清潔
清潔とは、整理・整頓・清掃がしっかり続けられ、作業環境を常にきれいな状態に保つ活動です。
清潔な職場であれば、事故リスクの増加や作業効率低下を防ぎ、作業における高いパフォーマンスを維持できます。
仕事終わりや週のどこかで、3Sがしっかりとできているか確認し、不足している部分を改善する活動が重要です。
この積み重ねが、作業しやすい安全な現場環境につながります。
建設業の一人親方が4S活動を行った場合のメリット
建設業の現場で4S活動を行った場合、効率性や安全性が劇的に向上する効果が得られます。
特に一人親方の場合でも、効率化や安全性向上だけでなく、長期的な経営を見据えた上でも重要な効果です。
それぞれについて詳しく解説します。
作業を効率的に進められる
4S活動を推進すれば、作業を効率的に進められるようになります。
特に一人親方として活動している方は、自分ひとりで全ての作業をこなすため、作業の効率化は重要です。
日々の仕事がスムーズに進まなければ、時間をロスし、体力の消耗にもつながります。
道具や資材の整理整頓、作業環境の整備を行えば、無駄な動きを省き、作業効率を最大化できます。
自分がけがをしてしまうリスクを減らせる
けがのリスクが減少するのも、4S活動の効果です。
一人親方だと、現場の安全管理も自己責任となります。
従業員を抱えていない分、万が一事故が起きれば事業に大きな影響を与えてしまうでしょう。
元請けやクライアントから信頼が得られる
4S活動により現場がきれいに保たれていれば、作業効率の良さやプロフェッショナルな姿勢をアピールできます。
一人親方の場合、現場での信頼の勝ち取りは重要です。
クライアントや元請けからの評価は、次の仕事につながる大事なポイントだからです。
現場が散らかっていると、作業は完璧でも評価を落とす恐れがあります。
他の事業者と差別化できる
4S活動を推進して行えば、自分の現場と他の事業者の現場とを差別化できる効果があります。
一人親方は、他の会社や事業者との競争の中で、他と差別化する必要があります。
クライアントや元請けに対して、整理整頓が行き届いた安全で清潔な現場の提供は、自分のブランド力や信頼感を高める手段です。
そのため、4S活動を導入し、現場のプロフェッショナル性をアピールすることで、競争優位を築けられます。
建設業における4S活動の具体的な実践方法
建設業で4S活動を実践するためには、体制づくりを行い、目標を共有する必要があります。
主に現場監督者がやるべきことですが、そのための方法を以下に解説します。
4S活動を実践する体制づくりと共有
最初に進め方や4S活動の効果を具体的に説明し、どうありたいかを共有しましょう。
4S活動は一人で取り組もうとしても上手くはいきません。
4S活動の目的や方針を作業者全体に周知、共有するのが大切です。
作業者は、日々の作業をこなすことに注力しています。
作業に視点が置かれているため、4S活動は余分な作業だと捉えてしまうかもしれません。
そのため、最初に目的や方針を共有するのが大切なのです。
4S活動の推進を共有できたら、活動を現場に定着させるために、職場に4Sが何かと見て分かるようなポスターを掲示して活動内容を掲示すると、個々の意識向上に役立つでしょう。
4S活動を維持するための目標設定
周知ができれば、目標を設定し実践しましょう。
最初の目標設定では、ある程度の期間を取り4S活動の意識定着をはかります。
4Sについて全く理解を持たない作業者もいると考え、最初から高い目標設定を行うのではなく、段階に分けて目標を設定するのがポイントです。
作業者は、目の前の作業に集中するため、作業外の4Sは後回しとして捉えてしまい、習慣化も進まない可能性があるからです。
その後、3ヶ月や6ヶ月毎にチェックして振り返りましょう。
定期的なチェックを行うようにすれば、4S活動が定着し、意識も高まります。
継続して4S活動を行うためのコツ
4S活動を継続するためのコツは、誰か一人が活動するのではなく、作業者一人ひとりに当事者意識を持たせることにあります。
現場監督一人が活動しても、他の作業者が「この片付けは誰かがするだろう」「掃除は任せておけば良い」といった無関心な態度では、4S活動は立ち消えてしまう恐れがあります。
作業員同士のコミュニケーションを活発にし、安全意識や作業環境への配慮を高め、当事者意識を持たせるのがコツといえるでしょう。
一人親方が建設現場で4S活動を実践する方法
一人親方として建設業を営む場合でも、4S活動は簡単に実践できます。
たとえば、使っていない工具や材料を片付けて必要なものだけを残す整理からでも始められます。
作業スペースが広く使えるだけでなく、探し物の時間も減り、仕事がスムーズに進むでしょう。
よく使う工具を決まった場所に収納しておき、すぐに取り出せるようにする整頓も簡単にできます。
毎日使うドライバーやスパナを工具箱の決まった位置に置くようにすれば、作業が効率よく進むようになるでしょう。
ゴミや汚れを放置しないように常に清掃し清潔を保てば、現場の安全性も向上します。
ある一人親方は、作業終了後に必ず10分間、現場を掃除する習慣をつけたところ、道具の紛失やけがが減ったといいます。
一人でも実践できる取り組みは多くあるので、気が付いた内容からはじめてみましょう。
まとめ
建設業での4S活動は、作業を効率化できるだけでなく、安全性も向上できる手法です。
4S活動を徹底すれば、クライアントや元請け事業者からの信頼度も上げられます。
一人親方の場合であれば、体力や時間の無駄遣いを防ぎ、自分自身の作業の質を向上できます。
結果として無理なく継続できる現場運営が行えるといえるでしょう。
とはいえ、いくら安全対策を行っても、人が動くと危険リスクは生まれます。
雇用関係がなく個人で仕事を請け負っている方、労災保険に未加入の方は、労災保険に特別加入すれば、補償が充実するので安心です。
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万が一のけがや仕事の受注に備え、加入手続きを検討しましょう。