一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方は所得税を支払うの?計算方法や節税対策も解説

一人親方は個人事業主となるため、自分で所得税を納める必要があります。
しかし、所得税がいくらなのか、どうやって納めるのか分からない方も多いでしょう。

所得税を納めないと延滞税や無申告加算税などが課されてしまい、よりお金がかかる可能性があります。
また、税金に関する知識がないと多く払いすぎてしまう損をするかもしれません。

本記事では、所得税の計算方法や確定申告の方法、節税対策などについて解説します。
所得税の負担を減らしたい一人親方は、ぜひ参考にしてください。

一人親方は所得税を支払う必要はある?

一人親方は所得税を支払う必要があります。

所得税とは、1年間の所得に対して課される国税です。
会社員の場合は給料から天引きされますが、一人親方は会社に属していないため自分で確定申告をして所得税を納めます。

所得税以外の税金について知りたい方は、以下記事を参考にしてください。

所得税はいつ払う?

所得税の支払い期限は、確定申告の期限と同様に3月15日までです。

ちなみに、確定申告は2月16日~3月15日に行う必要があります。
期間内に忘れずに申告し、所得税を納めるようにしましょう。

所得税を払わないとどうなる?

所得税を納税しないと、無申告加算税や延滞税が発生する可能性があります。

期限内に確定申告をしなかった場合に課されるペナルティが、無申告加算税です。
支払うべき所得税額に対して、50万円までは15%、50万円を超えると20%を上乗せされた金額の支払いを要求されます。
ただし、税務署の調査を受ける前に申告すれば、5%に軽減されます。

また、確定申告の期限を過ぎてしまっても1ヶ月以内に自主的に納めるなどの条件を満たした場合、無申告加算税は課されません。

延滞税は、期限内に所得税が支払われない場合に、期限の翌日から納付される日までの日数に応じて課されるペナルティです。
令和4年1月1日から令和7年12月31日までの延滞税の割合は、納付期限から2ヶ月までは年2.4%、2ヶ月を経過すると年8.7%となります。

一人親方にかかる所得税の計算方法

一人親方にかかる所得税の計算方法を解説します。

所得金額を算出する

所得金額は、収入から必要経費を引いたものです。

必要経費とは直接仕事に関係のある費用のことで、一人親方の場合、以下を必要経費として計上できます。

  • 材料費(消耗品費)
  • 地代家賃
  • 水道光熱費
  • 通信費
  • 支払手数料
  • 車両費
  • 接待交際費 など

収入が500万円で必要経費が100万円だった場合、所得金額は400万円となります。

課税所得を算出する

課税所得は、所得金額から所得控除を引いたものです。

活用できる所得控除は人によって異なりますが、以下のような控除があります。

  • 基礎控除
  • 医療費控除
  • 社会保険料控除
  • 生命保険料控除
  • 扶養控除
  • 配偶者控除 など

基礎控除は、納税者本人の所得金額に応じて差し引かれるもので、誰でも受けられます。

ここでは基礎控除のみを活用する場合を想定して、課税所得を計算してみましょう。
所得金額が400万円の場合、48万円の基礎控除が受けられるため、課税所得は352万円となります。

所得税を算出する

所得税は、課税所得×税率-税額控除額で求められます。

税率と税額控除額は、以下のとおりです。

課税所得金額 税率 控除額
1,000円から194万9,000円 5% 0円
195万円から329万9,000円 10% 9万7,500円
330万円から694万9,000円 20% 42万7,500円
695万円から899万9,000円 23% 63万6,000円
900万円から1,799万9,000円 33% 153万6,000円
1,800万円から3,999万9,000円 40% 279万6,000円
4,000万円以上 45% 479万6,000円

課税所得が352万円の場合、税率20%、控除額が42万7,500円となるため、所得税は27万6,500円になります。

一人親方の確定申告の仕方

一人親方の確定申告の仕方は、青色申告と白色申告の2種類があります。
この章の解説を参考に、どちらかを選び期日内に確定申告をしましょう。

青色申告

青色申告は、税務署に開業届と青色申告承認申請書を提出している一人親方ができる方法です。

青色申告には、以下3つの青色申告特別控除があります。

  • 10万円
  • 55万円
  • 65万円

中でも55万円と65万円控除は大きな節税になります。
しかし、この2つの控除を受けるためには、複式簿記での記帳が必要です。

青色申告に必要な書類

青色申告に必要な書類は、以下3つです。

  • 青色申告決算書
  • 確定申告書(第一表、第二表)
  • 控除に関係する書類

人によっては、上記3つ以外にも追加で書類が必要なケースがあります。
自分の所得控除や税額控除を確認して準備しましょう。

白色申告

白色申告は、事前に税務署に書類を提出しなくても申告できる方法です。
また、複式簿記での記帳など手間のかかる作業がないため、青色申告よりも時間をかけずに手続きできます。

しかし、青色申告のような控除がないため、節税効果はないといえます。

節税よりも手間を省くことを優先する方は、白色申告でもよいでしょう。

白色申告に必要な書類

白色申告に必要な書類は、以下3つです。

  • 収支内訳書
  • 確定申告書
  • 控除に関係する書類

白色申告をする方は、忘れずに準備しましょう。

確定申告に必要な書類の作成方法

確定申告に必要な書類を作成する方法は4つあります。
この章では、4つの方法を詳しく解説します。

確定申告書作成コーナーで作成する

確定申告書作成コーナーは、国税庁のサイトにあるもので入力を進めることで確定申告書の作成が可能です。

国が提供しているという信頼性や安心感はありますが、直感的に使えない部分もあるため使いづらさを感じる方もいるかもしれません。

令和6年分の確定申告書等作成コーナーは、令和7年1月上旬公開予定です。
確定申告書作成コーナーを利用して作成しようと考えている方は、1月上旬ごろに国税庁のサイトを確認してみましょう。

確定申告ソフトを利用する

確定申告ソフトは、さまざまな会社が提供しており、フォームに沿って入力を進めていくことで申告書が作成できるものです。

直感的な操作ができるものが多いため、知識や経験がない方でも使いやすいでしょう。

ただし、無料だと一部の機能しか使えず、書類を完成させるために課金しなければいけないケースもあります。

手書きで作成する

紙の確定申告書に手書きで作成する方法もあります。

紙の確定申告書は、以下の方法で手に入ります。

  • 税務署に取りに行く
  • 税務署から送ってもらう
  • 申告相談会場で手に入れる
  • コンビニや自宅で印刷する

手書きの場合、確定申告期間に税務署に行くと相談しながらの作成が可能です。
ただ、記載ミスや計算ミスをしてしまうと1からやり直しになるため、手間がかかります。

また、手書きの場合、青色申告をしても青色申告特別控除の65万円控除は受けられないため、注意が必要です。

税理士などの専門家に依頼する

税理士に依頼するのも選択肢の1つです。

専門家に依頼するため、4つの方法の中で1番お金はかかりますが、正確に申告ができるというメリットがあります。
また、節税対策を教えてもらえたり、お金に関する相談ができたりするのも魅力の1つです。

確定申告の提出方法

確定申告の提出方法には、以下4つがあります。

  • e-Taxを使って電子申告する
  • 税務署窓口に提出する
  • 税務署に郵送する
  • 税務署の時間外収集箱へ投函する

中でもe-Taxでの申告は、税務署で推奨されている方法です。
e-Taxだと時間を問わず利用できるため、忙しい方に適しています。

自分に合った方法で提出するようにしましょう。

一人親方が所得税を抑えるための対策

所得税には累進課税制度があり、所得が高くなるほど税率が高くなり、どんどん負担が大きくなる可能性があります。
所得税の負担で事業が厳しくならないように、節税対策をする必要があります。
ここでは、節税対策をご紹介します。

経費を漏れなく計上する

所得税を抑えるために、経費を漏れなく計上するようにしましょう。

所得税は課税所得が高いほど高くなります。
課税所得は、売上から必要経費や所得控除が引かれた金額のため、経費を漏れなく計上することで安く抑えられます。

一人親方の仕事に関するお金は適宜まとめて、確定申告の際に正しく計上できるようにしましょう。

控除を活用する

控除を活用するのも、節税対策の1つです。

配偶者や子どもなど扶養家族がいる一人親方の場合は、配偶者控除や配偶者特別控除、扶養控除が活用できます。
配偶者や子どもがアルバイト・パートをしている場合、年収が103万円以下におさえられると38万円の控除が受けられるため、超えないように調整しながら働いてもらうのも選択肢となります。

また、生命保険料控除も活用しやすい控除です。

生命保険料控除は、一人親方本人が生命保険や介護医療保険、個人年金保険などの保険料を支払った場合に、一定額の控除を受けられる制度です。
支払金額や控除を受けられることを証明する書類などが必要になります。
支払金額が記載された書類は生命保険会社などから送られてくるため、必ず保管しておきましょう。

小規模企業共済を活用する

小規模企業共済は、一人親方を含む個人事業主や小規模企業の経営者などのための、積み立てができる退職金制度です。
積み立てたお金は、事業廃止時や会社退職時に給付金として受け取れます。

また、積み立てた掛け金は所得控除の対象のため、節税効果があります。

掛け金は1,000円から7万円まで500円単位で自由に決められ、加入後も掛け金の変更は可能です。

収入に余裕がないうちに無理して積み立てる必要はありませんが、余裕ができたら検討してもよいかもしれません。

経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済制度)を活用する

経営セーフティ共済は、取引先が倒産した際に一人親方などの個人事業主や中小企業が倒産や経営難に陥らないようにするための制度です。

毎月の掛け金を5,000円~20万円まで自由に選べて、掛け金の変更も可能です。
無担保・無保証人で借入ができ、最大で掛け金の10倍(上限8,000万円)まで借りられます。
掛け金は経費に含められるため、節税につながります。

まとめ

一人親方は会社に属していないため、所得税が給料から天引きされず、自分で確定申告をして所得税を納めなければいけません。
所得税を納付しないとほかの税金が課されてしまうため、必ず期間内に行いましょう。

また、節税対策も一人親方として事業をしていくためには、知っておくべきことです。
経費は漏れなく計上する、活用できる控除や制度を理解するなどして、所得税の負担が大きくならないようにしましょう。

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