一人親方として働くうえで、領収書は経費を証明する大切な書類です。
しかし、「書き方が分からない」と疑問を抱えている方もいるでしょう。
領収書には、金額や宛名だけでなく、但し書き、発行日など、書くべき項目がいくつかあります。
本記事では、領収書に書くべき6つの項目や収入印紙のルール、注意点などを解説します。
領収書の書き方が分からない一人親方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
一人親方が領収書に書くべき6つの項目
一人親方が正しく領収書を作成するためには、必ず記載すべき項目があります。
領収書に書くべき6つの項目を解説します。
書類名
領収書の最上部には「領収書」という書類名を記載しましょう。
これにより、受け取った書類が正式な領収書であることが明確になります。
もし書類名を省略すると、請求書や納品書と誤認される可能性があり、税務処理上のトラブルにつながりかねません。
領収書のフォーマットを統一し、領収書と記載することで書き忘れを防げるでしょう。
宛名
領収書には、取引相手の名称を記載しましょう。
宛名は法人の場合は、「正式な会社名+御中」、個人の場合は「氏名+様」と記載します。
宛名が空欄または上様と記載すると、経費として認められない場合があるため注意が必要です。
少額の取引が多い飲食業や小売業では上様書きが認められていますが、一人親方には認められていません。
そのため、一人親方の場合は、取引先に上様書きを依頼されても、断りましょう。
正確な宛名を記載することで、取引の正当性を証明し、経理処理をスムーズに行えます。
発行日
領収書には、発行日を明確に記載する必要があります。
発行日が不明確だと、どの取引に紐づくものなのか判断できなくなり、経費計上時に問題が発生する可能性があります。
以下のように西暦・和暦の表記を統一し、修正液などで日付を変更しないようにしましょう。
- 2025年2月1日
- 令和7年2月1日
また、発行日は領収書を発行した日ではなく、取引が行われた日を記載します。
金額
領収書には、取引金額を正確に記載します。
金額を記入する際は、以下のルールに従いましょう。
- 先頭に「¥」または「金」を付ける:¥10,000、金10,000円
- 3桁ごとに「,」を付ける:¥1,000,000
- 金額の最後に「‐」「※」「也」のどれかを付ける:¥10,000-、¥10,000※、金10,000円也
金額の記載ミスはお互いの混乱を招くだけでなく、正確性も乏しくなるため、慎重に記入することが求められます。
但し書き
但し書きとは、取引の具体的な内容を記載する欄です。
「作業代」「人工代」など、具体的な内容を明記することで、領収書の信頼性を高められます。
一人親方が仕事を請け負い、報酬を受け取った際の領収書には、人工代と記載するケースもあります。
人工代とは、仕事で発生した人件費です。
工事一式、業務委託料などの曖昧な表現は、税務調査時に指摘を受ける可能性があるため避けた方がよいでしょう。
但し書きで何に対するお金なのか明確にしておくことで、経費計上の際にもスムーズな処理が可能になります。
受領人
領収書の発行者として、一人親方自身の名前や屋号、住所、連絡先を記載し、押印することが必要です。
発行者の情報が記載されていないと、誰が発行したのか不明確となり、領収書の有効性が疑われるかもしれません。
屋号がある場合は屋号と氏名を併記し、屋号がない場合は個人名で問題ありません。
また、押印については、発行者としての信用を高めるために、統一した印鑑を使用しましょう。
一人親方の領収書に収入印紙が必要なケース
売上金額によって領収書に収入印紙を貼る必要があります。
収入印紙が必要なケースは、表のとおりです。
売上金額(税抜き) | 収入印紙の金額 |
5万円未満 | 非課税(不要) |
5万円以上100万円以下 | 200円 |
100万円超え200万円以下 | 400円 |
200万円超え300万円以下 | 600円 |
300万円超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円超え1,000万円以下 | 2,000円 |
参照:国税庁「金銭又は有価証券の受取書、領収書」
収入印紙が必要な売り上げは税抜き価格のため、領収書を作成するときは税込み、税抜き金額の両方を記載しましょう。
たとえば、売上金額が税抜き5万3,900円だった場合、収入印紙が必要です。
しかし、税込みで5万3,900円だった場合、正確には売上金額4万9,000円、消費税4,900円となります。
この場合、売上金額は5万円未満のため、収入印紙は不要です。
税込み金額だけだと、収入印紙が不要にもかかわらず貼らなければいけない状況になるため、税込み、税抜き価格どちらも記載しましょう。
収入印紙を貼ったら、再利用されないように消印を押すのを忘れてはいけません。
消印がないと無効になってしまいます。
収入印紙を貼らなかったときのペナルティ
収入印紙が必要にもかかわらず、以下のような状態だと過怠税というペナルティが科せられます。
- 収入印紙が貼られていない
- 貼られている収入印紙費用が不足している
- 収入印紙の消印がない
過怠税は、納付しなかった収入印紙費用の2倍相当の額が徴収されます。
たとえば、収入印紙が貼られてないケースだと、当初納付するべき収入印紙費用と過怠税の2倍相当分を合わせた金額、つまり3倍相当の金額を支払うことになります。
自主的に申し出た場合は、収入印紙の1.1倍を支払わなければいけません。
余計なお金を支払わないように、収入印紙は必ず貼りましょう。
参照:国税庁「印紙税を納めなかったとき」
一人親方が領収書を書くときの注意点
一人親方が領収書を作成する際には、おもに5つの注意点があります。
ここでは、具体的な注意点について詳しく解説します。
消費税額と税抜き金額は分けて記載する
領収書を発行する際には、消費税額と税抜き金額を分けて記載しましょう。
たとえば、金額の欄に「¥110,000-」と記載したら、その下に「消費税(10%)¥10,000-」のように明記することで、取引内容が明確になります。
税込みか税抜きか不明瞭だと、適切な消費税処理ができなかったり、余分な収入印紙費用がかかったりする可能性があります。
複数の項目をまとめて領収書に記載する場合は、消費税額と税抜き金額を分けて、金額の内訳として記載しましょう。
宛名や発行日、金額は正確に書く
領収書の宛名、発行日、金額は間違いがないよう慎重に記入しましょう。
宛名が空欄だったり、上様と記載したりした場合、経費として認められない可能性があるため、正式な会社名や個人名を記入します。
発行日も誤りがあると会計処理上の混乱を招くため、取引が発生した日付を正確に記載することが重要です。
また、金額は訂正や書き直しがないように、桁数や表記を十分確認してから記入するようにしましょう。
書き方を間違えた際は再発行する
領収書の記載内容に誤りがあった場合は、訂正せずに新しいものを再発行するのが基本です。
修正液や二重線での訂正は避け、正しい内容で新たに作成します。
誤りがあった領収書には×印などをつけて、正しい内容ではないことを分かるようにして保管しておきましょう。
領収書を渡した後にミスに気付いた場合は、取引先から返却してもらう必要があります。
領収書を再発行したり、取引先に返却してもらったりする手間がかかるため、最初から間違いのないように、金額や発行日などを確認して慎重に書くことが重要です。
再発行を依頼された際は領収書に「再発行」と記載する
取引先から領収書の再発行を求められた場合は、「再発行」と明記する必要があります。
これは、同じ取引で二重に経費計上されるのを防ぐためです。
再発行する領収書の日付は、取引を行った日ではなく再発行した日を記載します。
古い領収書と再発行した領収書の内容がすべて同じだと、どちらが再発行したものは分かりにくくなり、不正利用されるリスクが高まります。
必ず再発行と記載して、元の領収書と区別できるようにしましょう。
領収書の控えは捨てない
領収書の控えは、発行した証拠として必ず保管しましょう。
確定申告や税務調査のときに、取引を証明する重要な資料となります。
原則、控えと原本の内容は同じにします。
複写式の領収書を使用すると、2度手間や記載ミスが減るため便利です。
一人親方の領収書の保管方法
ここまでは一人親方が領収書を書く側の説明をしてきましたが、一人親方は領収書を受け取るケースもあります。
領収書は確定申告を行ううえで、必要な書類になるため保管しておくことが重要です。
ここでは、領収書の保管方法を解説します。
紙の場合
紙の領収書を保管する場合、月ごとにファイルや封筒にまとめると後で見直しやすくなります。
また、領収書のインクは時間が経つと消えやすいため、コピーを取っておくか、スキャンしてデジタル化しておくと安心です。
また、領収書は確定申告が終了したら捨ててよいわけではなく、保管期間が定められています。
青色申告の場合は、原則7年保管しなければいけません。
しかし、前々年分の事業所得や不動産所得が300万円以下の場合は、5年になります。
白色申告の場合は原則5年ですが、場合によっては7年保管しなければいけないケースもあります。
どちらの場合でも最長7年の保管が必要のため、7年間保管しておけば安心でしょう。
参照:国税庁「記帳や帳簿等保存・青色申告」
電子データの場合
領収書を電子データとして保存する場合、電子帳簿保存法に準拠する必要があります。
電子帳簿保存法は、税務関係の書類のデータ保存を可能とする法律で、以下3つに分けられます。
- 電子取引:領収書などの電子データを送付、受領した場合、その電子データを保存する
- 電子帳簿・電子書類:税法上保存が必要な帳簿や書類をパソコンなどで作成した場合、プリントアウトせずにデータのまま保存できる
- スキャナ保存:紙の領収書などをそのまま保存せず、スマホやスキャナで読み取ると電子データとして保存できる
電子帳簿保存法への申請は不要です。
電子データで保管する際は、電子帳簿保存法を守りましょう。
参照:国税庁「電子帳簿等保存制度特設サイト」
クレジットカード決済の場合
クレジットカード決済を利用した場合、利用明細書やカード会社の請求書が領収書の代わりとなるケースがあります。
クレジットカードの明細書には、日付や店名、金額が記載してあるため、いつどこでいくら使ったのかが把握しやすいです。
また、1ヶ月分がまとめて記載してあるため、1枚ずつ保管するよりも管理しやすくなります。
クレジットカードの明細書が届いたら必ず保管しておきましょう。
まとめ
領収書は、日々の業務における経費を証明する重要な書類のため、正しく記載し保管する必要があります。
領収書には、領収書の明記、宛名、発行日、金額、但し書き、受領人の6つの項目を必ず記載し、売上金額によっては収入印紙を貼りましょう。
作成時には、金額や発行日、但し書きなどにミスがないように注意する必要があります。
万が一、誤りがあった場合は訂正せずに再発行し、控えを必ず保管しましょう。
領収書の正しい書き方をマスターして、スムーズに作成できるようにしましょう。