一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方が知るべき個人事業税とは?負担額はどうなる?

一人親方に支払い義務が課せられている、税金の一つが「個人事業税」です。なかには、「個人事業税」の名称をはじめて耳にされた方も、いらっしゃるかもしれません。

この記事では、一人親方労災保険を通じて、一人親方の働き方や安全性をサポートしている「一人親方団体労災センターが、個人事業税の概要について解説します。

個人事業税を詳しく理解できれば、一人親方として生活設計する際の支出について、イメージしやすくなります。また、免除の条件などについて知識を身につけることで、必要以上に納税するリスクを避けることもできるでしょう。

ていねいにわかりやすく解説していますので、お金や税金に対し難しいイメージをお持ちの方も、ぜひご参考にしてください。
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一人親方が支払う個人事業税とは?

「個人事業税」とは、個人事業主が都道府県に対して納める税金のことです。確定申告の内容に基づいて、税金を納めなくてはなりません。
一人親方は個人事業主の一形態であるため、基本的に個人事業税の支払い義務を負います。個人事業税の税率は、業種により異なり3~5パーセントです。大半の業種の税率は5パーセントに設定されており、多くの一人親方が従事されている建設業も5パーセントです。
個人事業税の支払い義務のある方は、8月と11月に送付される納付書(通常年に2回)にて支払います。支払方法は、各都道府県税事務所・口座振替・コンビニ払い・クレジットカード納付などがあります。

※納税額が30万円を超える場合には、コンビニ支払いは選べません。

一定の利益が上がっている一人親方は、年に2回個人事業税の支払いが必要であることを、覚えておきましょう。

※個人事業主が支払う税金

個人事業主が支払う税金について、まとめておきましょう。

個人事業主は、以下4つの税金を支払います(収入や状況によって課税対象から外れたり、免除されたりするケースもあります)。

・所得税・・・1年の所得に対して課される税金です。

確定申告の内容に基づいて、納税が行われます。

  • 住民税・・・住んでいる自治体に対して納める税金です。

毎年6月頃に納付書が送付されます。

住民税の税率は、全国一律で10パーセントです。

  • 消費税・・・物やサービスの売買の際にかかります。

消費税の支払いに関しても、確定申告時に計算式にて算出します。

年間の売り上げが1,000万円を超える方が、消費税の課税対象です。

  • 個人事業税・・・個人事業主が自治体に対して納める税金です。

確定申告の内容が自治体に共有され、納付書が発行されます。

一人親方に個人事業税が課される条件

個人事業税は、すべての一人親方に課されるわけではなく、一定の条件があります。条件を満たしていない場合は、支払いの対象者からは除外されます。
どのような条件があるのかについて、3つのポイントをチェックしましょう。

収入が290万円を超えている

個人事業税は、年間の事業所得が290万円以下の場合、一律で事業主控除が受けられます。
「事業所得」とは、個人事業主が仕事で得た収入総額から、必要経費を差し引いた金額のことです。

(一人親方の経費について詳しく知りたい方は、下記の記事にて、平均的な金額や項目をご紹介していますので、ぜひチェックしてください。)
一人親方の経費平均額とは?利益を最大限残すための対策法紹介
 従って、確定申告時の情報をチェックすれば、ご自身が個人事業税の支払い義務があるか否かを確認できます。また、一人親方としての事業が1年に満たない場合は、月割で控除額が決定します。例えば、一人親方として6か月間事業を営んだ方の控除額は、145万円です。

該当事業であること

 個人事業税の対象として、70業種が指定されています。
 70業種について詳しく知りたい方は、東京都主税局のHPにてチェック可能です。

参考:東京都主税局「個人事業税」
https://www.tax.metro.tokyo.lg.jp/kazei/kojin_ji.html#kj_4

 大半の事業は課税対象とされていますが、70業種に含まれない業種として以下の例があります。

  • 農業
  • 林業
  • 通訳業
  • 文筆業
  • 芸能活動
  • 鉱物採掘業

 従って、林業関連の一人親方は個人事業税の対象外となります(建設業に関連する一人親方は、課税対象になります)。

個人事業主であること

 個人事業税は、個人に対して課せられる税金であり、すなわち個人事業主に対して課せられる税金です。個人事業主とは、会社に所属せずに個人で仕事をしている方のことを指します。
 一人親方は個人事業主の中に含まれるため、一人親方である時点でこの条件を満たしていることになります。

一人親方の個人事業税の計算方法

一人親方の税金
 具体的に、個人事業税が「どのように課せられるのか?」「どのように計算されるのか?」の点を、気にされる方も多いと思います。
一人親方の個人事業税は、以下のように計算されます。

  • 課税所得額の計算

 課税所得額=総売上金額-必要経費-290万円(控除額)

 このとき注意しなくてはならないのは、青色申告の特別控除(最大65万円)や白色申告の基礎控除(48万円)は、個人事業税に対して適用されないことです。

 個人事業税の控除額290万円と、重複して控除できないことを覚えておきましょう。

 例えば、一人親方としての年間売上が700万円、必要経費が300万円だった一人親方の場合の計算式は、以下のとおりです。

 700万円-300万円-290万円=110万円

 →110万円に対して、個人事業税が課される計算になります。

  • 税率

 70業種のうちの65業種は、税率5パーセントです。

 建設業を営む一人親方の税率もまた5パーセントなので、課税対象額に対して5パーセントが課されます。

 従って上記の例の場合、計算額は以下のとおりです。

 →110万円×5%=5.5万円

 上記のように、売上と必要経費の金額さえ分かっていれば、個人事業税は比較的簡単に計算できます。

 こうして計算された額が、8月と11月の2回にわたって課税されます。

個人事業税が控除される3つのケース

 個人事業税は、特定の条件下で免除されることがあります。必要以上に納税しなくても済むように、免除される条件についてチェックしておきましょう。

収入が290万円以下

 年間の事業所得額が290万円以下の場合、個人事業税は免除されます。前章の計算式でもご紹介したように、年間の売上から必要経費をマイナスした分について、290万円の控除が認められているためです。

前年までの赤字の繰り越し

 青色申告をされている方の場合、事業の損失を3年間まで繰り越すことが可能です。従って、単年で計算すると個人事業税の対象となる方であっても、赤字分の繰り越しによって支払いが免除される可能性もあります。例えば、今年度の事業所得額が340万円であったとしても、前年の赤字が60万円あるときには、繰り越しによって340-60=280万円になります。
 結果的に290万円以下の控除内に収まるため、個人事業税は請求されません。

控除の適用

 「被災事業用資産の損失の繰り越し控除」に該当するケースでは、個人事業税が免除される可能性があります。
 「被災事業用資産の損失の繰り越し控除」とは、震災・風水害・火災などによる被害によって損害が生じた場合、最大3年間繰り越し控除を受けられる可能性のあることをいいます。
 被災事業用資産の損失の繰り越し控除が、赤字による繰り越しと大きく異なる点は、白色申告の該当者であっても控除を申請できる点です。また、青色申告の対象者は、事業用の土地・設備・建物などを譲渡した際に生じた損失に関しても、最大3年間の控除の申請が可能です。

個人事業税が猶予されるケース

 条件に合致した場合、個人事業税の支払いが猶予されるケースがあります。猶予は免除とは異なり、支払い義務がなくなるのではなく、一定期間保留にしてもらえることを意味します。ただし、個人事業税の猶予を受けるには、条件を満たしたうえで、一人親方側から申請をしなくてはなりません。
 個人事業税の猶予が認められる可能性があるのは、以下の条件を満たした場合です。

  • 財産が自然災害(震災・風水害・火災など)や、人為的な害(爆発など)、または盗難にあったとき
  • 納税者や生計を同じくする家族に、傷病が発生したとき
  • 廃業や休業に追い込まれたとき
  • 事業に著しい損失・損害を受けたとき
  • 課税されたタイミングが、法定納期限から1年以上経過していたとき(猶予の期間は原則として1年以内で分割納付が認められます)

 上記のほかに、大規模な疫病や社会的影響の大きな出来事が生じた際に、個人事業税の減免が認められる可能性もあります。免除や減免についてはケースバイケースの対応になることが多いため、条件やご自身が対象になっているか否かを知りたい方は、自治体の担当窓口に確認しましょう。

まとめ

 一人親方を含めた個人事業主が、1年に2回自治体に納める税金のことを、個人事業税といいます。個人事業税は、売上から必要経費と控除額(290万円)をマイナスした課税対象額に対して、業種ごとに課せられた税率をかけて計算されます。確定申告の際のデータが、自治体の担当部署に共有される仕組みであるため、売上と経費を理解して正確に手続きをすることは重要です。

 確定申告に関しては、「一人親方の確定申告とは|労災保険は経費で計上できるのか」にて、詳しく解説しています。ぜひ、併せてチェックしてください。

必要以上の納税を避けるために、控除についても十分に慎重なチェックを心がけてください。

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