建設キャリアアップシステムに登録すると、自分のスキルや実績をデータとして保存・蓄積できます。一人親方の場合、自身の能力を正当に評価してもらえるため、仕事の受注につながる確率が高くなります。登録申請はインターネットから簡単に行うことが可能です。
平成31年4月より、建設業界で働く技能者のスキルやキャリアを見える化する、建設キャリアアップシステムの本格運用がスタートしました。
もともとは人手不足が慢性化している建設業界において、優秀な働き手を確保・育成していくことを目的に設立されたシステムですが、会社組織に属さない一人親方にとってもメリットの多い制度として注目されています。
今回は、一人親方にキャリアアップシステム登録が必要な理由や、具体的な登録方法、登録に必要な書類について解説します。
Contents
一人親方にキャリアアップシステム登録が必要な理由
建設キャリアアップシステムは、2021年2月現在では義務化されておらず、登録は任意となっています。
会社によっては社員の登録を義務化しているところもありますが、一人親方は自分の意思で登録の有無を決められるので、なかには「面倒だから登録しなくてもいいか」とスルーしている方も多いようです。
しかし、会社に属さない一人親方だからこそ、建設キャリアアップシステムへの登録がおすすめです。なぜ一人親方にキャリアアップシステム登録が必要なのか、その理由を2つのポイントにわけて説明します。
技能者の経験・スキルを正当に評価してもらえる
建設作業員はさまざまな事業者の現場で働くため、ひとりひとりの能力が統一的に評価されにくい傾向にあります。
たとえば今までA・B・Cという3つの事業者からたくさんの仕事を請け負った経験があっても、Dという新しい事業者はそれまでの実績を知る術がないため、スキルや経験を正当に評価してもらえない可能性があります。
特に一人親方の場合、会社という後ろ盾がないぶん、個人の能力が評価されないとなかなか仕事を発注してもらえません。
建設キャリアアップシステムに登録すれば、ICカードに書き込まれた保有資格や就業履歴をもとに、一人ひとりのスキルや経験を適切に評価できるようになります。これまで取引のない事業者からも仕事を発注してもらえる確率がアップするでしょう。
国は令和5年度までに、公共工事の建設キャリアアップシステム活用を原則化する方針を掲げています。[注1]今後、公共工事のみならず、民間工事での建設キャリアアップシステム活用も推進していく予定とのことです。
もし建設キャリアアップシステム活用に完全移行した場合、キャリアアップシステムに登録していない作業員は現場に出入りできない(仕事を発注してもらえない)可能性があります。
一人親方が安定した収入を得るには、継続的に仕事をもらう必要がありますので、原則義務化の予定がある建設キャリアアップシステムへの登録は必須といえるでしょう。
参考:国土交通省:建設キャリアアップシステム普及・活用に向けた官民施策パッケージ
https://www.mlit.go.jp/totikensangyo/const/content/001344239.pdf
退職金制度を適切に利用できる
会社に属さない一人親方は、仕事を辞めても退職金が支払われません。
そのため、多くの一人親方は引退後の生活に備え、国が設立した「建設業退職金共済(建退共)」に加入しています。
建退共では、工事を請け負った元請け企業から、働いた日数分の証紙(1日=310円)を手帳に貼ってもらい、その枚数に応じて退職金を受け取る仕組みになっています。
証紙は仕事が完了した際、一括で貼られるケースがほとんどですが、労働日数が正確に把握できていないと、適切な枚数の証紙を貼ってもらえない可能性があります。
建設キャリアアップシステムに登録しておけば、現場に入るたびにカードリーダー等にICカードを通すことで就業実績を記録できるようになるため、就労日数に見合った正確な枚数の証紙を貼ってもらえます。
一人親方のキャリアアップシステム登録方法
建設キャリアアップシステムへの登録には、事業者登録と技能者登録の2種類があります。日雇いで働いている一人親方なら技能者登録だけ済ませればOKですが、個人事業主として登録し、事業者から仕事を請け負っている場合は、事業者登録と技能者登録の両方を行わなければなりません。
登録は原則としてインターネット申請を利用しますが、書面申請を希望する場合は、認定登録機関での対面申請も可能です。
基本的な流れは事業者登録・技能者登録ともに代わりませんので、ここではインターネット申請・対面申請の方法についてご説明します。
インターネット申請の方法
建設キャリアアップシステムの事業者登録の方法を4つのステップに分けて説明します。
申請用ログインIDの取得
建設キャリアアップシステムの公式サイトの「申請」から、新規利用申し込みを開始します。
事業者は商号や登録責任者、技能者は申請者の個人情報をそれぞれ入力して申し込みを行います。後日、登録したメールアドレス宛に申請用IDが通知されます。
登録申請
申請用ログインIDを使ってログインし、登録申請に必要な項目を入力します。
このとき、登録申請に必要な書類も電子ファイルとして送信する必要があります。書類はスキャナや複合機、スマートフォンなどを利用して画像データを取り込んだうえで、JPG(JPEG)ファイル形式で保存し、添付します。
必要書類の詳細は後述していますので、そちらも参考にしてください。
技能者登録料の支払い
登録申請内容の入力後、技能登録料の支払い方法を選択します。
支払いはカード払いまたはコンビニエンスストア・郵便局での後払いが可能で、登録料は一律2,500円です。事業者登録を行う場合、本来なら資本金に応じた登録料を支払う必要がありますが、一人親方の場合は無料で登録できます。
IDの発行
審査終了後、運営主体から事業者IDと管理者ID、または技能者IDがメールで通知されます。技能者の場合は、後日IDカードが発行されます。
対面申請の方法
技能者登録で写真付き証明書がない方や、インターネットを利用できる環境にない方は、対面式での申請となります。
ここでは対面申請の方法を4つのステップに分けて説明します。
最寄りの認定登録機関に行く
対面申請を行うには、最寄りの建設キャリアアップシステム認定登録機関まで足を運ぶ必要があります。認定登録機関リストは建設キャリアアップシステムの公式サイト上で公表されていますので、事前に確認しておきましょう。
なお、ほとんどの機関では事前の予約が必要です。
登録申請書に必要事項を記入する
認定機関で配布されている登録申請書に、必要事項を手書きで記入します。対面申請の場合、認定機関の職員から記入補助を受けられますので、わからないことがあれば質問しましょう。
登録料の支払い
技能登録料の支払いを済ませます。
登録料はインターネット申請の場合と同じです。
IDの発行
事業者登録の場合は事業者IDと管理者ID、技能者登録の場合は技能者IDとIDカードが交付されます。
一人親方のキャリアアップシステム登録に必要な書類
>
一人親方がキャリアアップシステム登録を行う際に、必要となる書類をまとめました。
本人確認書類
顔写真付きの本人確認書類(提出の場合は写し)を用意します。個人番号(マイナンバー)カードや運転免許証が推奨されていますが、現住所が記載されている公的身分証明書を添付すれば、パスポートも利用できます。
顔写真付きの身分証明書がない場合は、公的身分証明書2点を準備します。
顔写真
技能者登録の場合のみ、IDカードに利用する顔写真が必要です。
社会保険等の加入証明書類
社会保険に加入していることを証明する書類の写しです。
具体的には、健康保険証やねんきん定期便、領収済通知書、建設業退職金共済手帳などの写しを用意します。
保有資格の証明書類
保有している資格等の証明書類の写しを用意します。
研修受講証明書や表彰証明書なども対象となります。
まとめ
一人親方は建設キャリアアップシステム登録を早めに済ませましょう
技能者の経験やスキルの見える化を実現する建設キャリアアップシステムは、一人親方にとって自分の実績や能力をアプローチする手段となります。
令和5年度には公共工事でキャリアアップシステム活用の義務化が検討されていますので、一人親方として続けていく予定があるのなら、早い段階からキャリアアップシステム登録を済ませておきましょう。