業務中や通勤中にケガや病気をし、収入が途絶えるリスクについて不安に感じることはありませんか?
労災保険に加入していれば、業務中や通勤中のケガや病気が原因で働けなくなった期間について、休業補償を受けられます。
休業補償を含む労災保険は、企業に雇用されている会社員、一人親方など一部の個人事業主を対象とした保険制度です。
この記事では、労災保険の休業補償とは「どのようなものなのか?」「受け取るための条件は?」「受け取り方や金額は?」などについて、一人親方特別加入団体である「一人親方団体労災センター」が、詳しく解説します。
労災保険の休業補償について理解を深め、もしものときにも安心できる環境を整えましょう。
Contents
労災保険の休業補償とは?
労災保険の「休業補償」とは、業務中や通勤中のケガ・病気によって、やむを得ず休業した際に受けられる補償のことです。労災保険は社会保険制度の一種であり、会社に雇用されている方であれば正社員に限らず、パートやアルバイトでも加入が義務付けられています
(雇用保険は1 週間の所定労働時間が20 時間以上ある労働者が対象ですが、労災保険は全従業員が対象です)
また、一人親方は業務中のケガのリスクが高いこともあり、特別に労災保険への加入が認められています。労災保険の休業補償があてにできれば、ケガや病気の治療中に収入が途絶えることに対してのケアができます。また、ケガや病気が完治する前に、無理して働くこともありません。
労災保険に加入していれば、通勤中のケガや病気に対しても、同様の補償を受けられます。通勤中にケガ・病気をしたときの補償は「休業給付」といい、「休業補償給付」とは名前が異なりますが、内容は同じものです。
労災保険の休業補償はいつもらえるの?
「万が一、ケガや病気をしてしまっても大丈夫!」という安心を得るには、休業補償の内容を詳しく知る必要があります。そして、重要な点の一つは、いつからいつまで補償が受けられるかの点です。
この章では労災保険がカバーしている期間と、補償を受け取れる期間について解説します。
いつからもらえる?
労災保険の休業補償は、「ケガ・病気の発生後4日目から、治癒して仕事ができるようになるまで」の期間、給付されます。例えば、業務上の災害で10月1 日にケガをし、翌日から休業した場合は、10月5日からが休業補償の支給対象期間となります。業務上の災害が起きた日からではなく、休業した日から4日目である点に注意が必要です。
労災が理由の休業であることに加え、休業期間に賃金が出ないことも支給の条件です。
(一人親方の場合は、まったく仕事が受けられていない状態であることが要件です。)
完全に休業しない場合や、ケガ・病気によって仕事を辞めてしまった場合には、休業補償は支給されません。
いつまでもらえる?
休業補償は、原因となるケガ・病気が治癒しておらず、休業が継続している状態であれば給付されます。ただし、ケガや病気によってやむを得ず休業せざるを得ないことが条件であるため、医師から完治していないことの証明をもらわなくてはなりません。また、1年6か月以上経過しても治療が完了せず、指定された傷病等級に該当する場合、休業補償から傷病補償年金へと切り替わります。
給付金をいつ受け取れるの?
休業補償給付金が受け取れるタイミングは、労働基準監督署による災害内容やケガ・病気の調査が入るため、ケースバイケースです。一般的な目安としては、およそ1~2か月です。できるだけ早く給付金を受け取りたい方は、労働基準監督署への手続きをスムーズに行うとよいでしょう。
会社員の場合は「受任者払い制度」があり、労災保険からお金が下りる前に、会社が立て替え払いをしてくれることがあります。
なお、休業補償給付は請求権が発生した翌日から2年以内であれば、請求できます。ケガや病気で手続きがなかなか取れないときや、補償の給付を急いでいないときには、状況が落ち着いてから請求しても問題ありません。
労災保険の休業補償はどれだけもらえるの?
労災保険の休業補償額は、給付基礎日額に基づいて支払われます。
「給付基礎日額」について、あまり耳慣れない方も多いかもしれません。そこで、給付基礎日額の解説に加えて、具体的にどの程度の休業補償が受けられるのか解説します。
給付基礎日額の60%
「給付基礎日額」とは会社員の場合、労災の発生日の直前3か月間の、平均賃金(基本給・通勤手当・住宅手当・育児手当・残業代などを含む)から計算されます。
一人親方の場合は、労災保険に加入する際に、ご自身で給付基礎日額を設定します。3,500円~25,000円まで16段階の設定が可能で、給付基礎日額に比例した保険料を支払う仕組みです。
会社員・一人親方ともに、給付基礎日額の60%を、休業補償の対象期間分(ケガ・病気の発生による休業後4日目~治癒して仕事に復帰するまで)受け取ることができます。
休業特別支給金(給付基礎日額の20%)
休業補償では給付基礎日額の20%を、「休業特別支給金」として受け取れます(会社員・一人親方の両方が対象)。
「休業補償給付」と「休業特別支給金」の両方を合わせると、給付基礎日額の80%の金額が給付されることになります。
給付基礎日額の計算方法
会社員の労災保険に関して、給付基礎日額の計算方法を詳しく解説します。給付基礎日額の計算方法は、時給制・日給制・月給制のいずれかによって異なりますが、ここでは月給制の方を例にご説明します。
- 会社員の場合の計算方法
原則として、下記の計算式で給付基礎日額を求めます。
給付基礎日額(平均賃金)=3か月間の賃金総額(ボーナスなどを除く)÷3か月間の暦の日数。
ただし、アルバイトやパートなどフルタイムでは無い労働者の場合は、上記の計算式だと金額がかなり安く抑えられてしまうことがあるため、以下の計算式を用いることもあります。
給付基礎日額=3か月間の賃金総額÷3か月間の実労働日数×60%
アルバイトやパートの場合は、最低保証額である自動変更対象額を、給付基礎日額とする場合もあります。
例)給与締め日が月末、基本給が月額25万円のフルタイム勤務の従業員が、9 月に労災を発生した場合
給付基礎日額=25万円×3か月÷92(3か月間の日数)=8,152.1円
- 一人親方労災保険の場合の目安
上述のとおり、一人親方労災保険の給付基礎日額は、3,500円から25,000円までの16段階のなかから、任意で設定可能です。
給付基礎日額をどの程度に設定するかは各々の考え方次第ですが、目安としては、前年度の収入総額を365 で割った金額を選択する方が多いです。
任意ではありますが、実際の収入とかけ離れた高い金額を給付基礎日額として設定した場合、労働基準監督署からの許可が下りないケースもあります。
労災保険による休業補償の申請手続き方法
最後に、労災保険による休業補償の申請手続き方法を解説します。
会社員・一人親方のどちらなのか、また会社員の場合は「受任者払い制度」を利用するかどうかによっても異なるため、それぞれの休業補償の申請方法をチェックしてください。
申し込み方法
休業補償を受けるための申請方法は、以下のとおりです。
→会社員の場合
「受任者払い制度」を利用する場合、まず会社の担当部署(労務・人事など)へ、業務中や通勤中にケガ・病気が発生したことを申告し、休業補償給付金を立て替え払いしてもらいます。
必ず立て替え払いしてもらった給付金を受け取った後で、労災被災者本人の委任状と受任者払いに関する届出書に記入し、会社に提出します。会社はその後、必要書類を労働基準監督署に提出することで、立て替え払いした分の給付金を受け取ります。
「受任者払い制度」を利用しない場合は、「休業補償給付支給請求書」と「平均賃金算定内訳」を労働基準監督署に提出して、休業補償を申請します。
→一人親方の場合
医師から「全部労働不能」の認定をもらい、「休業補償給付支給請求書」を所管の労働基準監督署に提出します。
監督署が調査を行い、支給が決定すれば、休業補償給付金が振り込まれます。
給付金の受け取り方法
休業補償給付金の受け取り方法は、以下のとおりです。
→会社員の場合
「受任者払い制度」を利用する場合、会社から休業補償給付金を直接受け取ります。
日ごろの給与と同様の流れで、休業補償給付金が振り込まれることが多く、受け取りに関しては滞りなく進むでしょう。
→一人親方の場合
一人親方の場合は、会社を通じての「受任者払い制度」は利用できませんので、労災保険が下りてから直接口座に振り込まれます。
なお、休業期間については1日ごとの休業事由が必要ですが、1か月分まとめての請求が可能です。
まとめ
労災保険の休業補償を理解することで、業務中や通勤中のケガや病気により、収入が途絶えるリスクをカバーできます。
特に、ケガのリスクが高い仕事をしている方や、仕事が途絶えると収入が0になってしまう方(時給・日給制の方や一人親方など)は、休業補償によるケアがとても大きな意味をもつでしょう。
休業補償は、ケガ・病気発生後4日目から、治療が完了して仕事に復帰できるようになるまでの期間が対象です。
一人親方の場合は任意加入となっているため、いざというときに困らないよう、加入方法・申請方法・給付基礎日額の適切な金額について、把握しておきましょう。
「労災保険や休業補償がまだあまりわからない」
「こんなときには、補償を受けられるの?」
など、わからないことがある方は、一人親方団体労災センターまでぜひご相談ください。