塗装業は、塗装する対象の範囲がとても広い仕事です。個人の一般住宅から大型のビジネスビルや商業施設まであらゆる建物が対象です。また、外装・内装・屋根など、あらゆる箇所のペンキ塗装を担います。
近年の建築業界の傾向として、会社員から一人親方として独立する方が増えています。そして、その傾向は塗装業においても例外ではありません。現在会社員として塗装業をおこなっている方には、以下の疑問が思い浮かぶのではないでしょうか?
「一人親方として独立して、やっていけるの?どのくらい収入が得られるの?」
「一人親方の塗装業に必要なスキルは?」
「一人親方になるときの注意点は?」
この記事では、塗装業の一人親方について詳しく解説します。労災保険の特別加入団体である「一人親方団体労災センター」が専門家の視点でわかりやすく解説します。
Contents
塗装業で一人親方として独立できる?
そもそも塗装業で一人親方として独立するのは可能なのでしょうか?会社員の方にとって、まず独立できるのかどうかという問題が非常に大きな問題だと思います。
この章では、独立の可否と独り立ちできるタイミングについて解説します。
会社から独立する方は多い
結論としては、塗装業でひとり親方として独立するのは十分に可能です。一人親方の人数などの公的なデータは発表されていませんが、一人親方として独立する塗装業者の方が増えています。実際にインターネット上で一人親方を募集している請負元は少なくありません。建築業界が全体的に人手不足なので、一人親方は容易に塗装の仕事を見つけられるでしょう。
修業期間
一人親方は、基本的に一人で仕事を完結できるスキルを身につけなくてはなりません。例えば、人手が足りないときに他の一人親方に協力を依頼するケースはありますが、それはあくまでも「ヘルプ」です。
一人で仕事を完結できなければ、仕事を引き受けた後に完遂できなかったり、クライアントの要望に応えられなかったりするリスクがあります。そして、必要なスキルを身につけるために必要な期間は、7~10年ほどです。逆に言えば、会社内でもきちんと指示を出して仕事ができる程度の実力・スキルを身につけていなければ、一人親方として独立するのは難しいでしょう。
もちろん、必要な期間はあくまでも目安です。スキルの高さ・人脈・営業力によっては、実務経験が7年以下でも十分に活躍できる可能性があります。
塗装業を一人親方として独立する3つのメリット
会社員として建設現場で働いている人の中には、手間をかけてでも独立することに疑問を感じる人もいるでしょう。
この章では、多少のリスクや手間をかけてでも開業すべきだと考えるメリットについて解説します。
仕事の単価が高い
会社員は、基本的に毎月の給料が決まっています。
(稀に成果報酬型の給与体系の場合がありますが、独立した方よりは少ない傾向にあります)
一人親方の場合には、基本給がありません。案件ごとに単価が決まっていて、受注ベースで収入が確定します。したがって、仕事の依頼を多く受ければ受けるほど収入が増え、会社員よりも高めの単価が設定されている場合が多いのです。
効率よくお金を稼ぎたい方は一人親方の働き方が適しているのではないでしょうか。
人間関係に縛られない
一人親方は、会社員ほど人間関係にしばられません。
- 上司や同僚の関係が密ではない
- 飲み会やレクレーションなどに参加しなくてもよい
- チームではなく1人で仕事できる(案件による)
一人親方として仕事をすると上記のようなメリットがあるため、人間関係でストレスを感じづらくなります。たとえ請負元と相性が合わなかったとしても、プロジェクトが完了するまでの関係です。したがって、一人親方としての働き方は同僚や取引先などと深い関係を築くのが苦手な方にオススメです。
ただし、仕事量を安定させるためには同じ取引先から継続して受注する必要があるため、最低限のビジネスマナーやコミュニケーションは必要です。
時間をコントロールしやすい
一人親方は、時間のコントロールもしやすくなります。
- どうしても休みを取りたい日がある場合、その日を避けて仕事を受注できる
- 残業や休日出勤などを指示されることがない
- 納期さえ守れば時間を自由に使える
案件との兼ね合いもあるため、必ずしもすべて思い通りになるとは限りませんが、会社員よりも時間に融通が利くのは間違いありません。時間の使い方と収入とのバランスに注意が必要です。
塗装業を一人親方としておこなう3つのデメリット
塗装業を一人親方としておこなう際には、デメリットもあります。
この章では、3つのデメリットをご紹介します。
収入が不安定になる
固定給のある会社員と異なり、一人親方は案件を受注した分の収入しか得られません。月ごとに収入のバラつきが生じることもあるでしょう。家族がいる方は、収入の不安定さから独立に対して家族から反対されることもあるかもしれません。
しかし塗装業は全体的に人材不足ですから、確かな技術と営業力があれば、収入が不安定になる可能性は低いでしょう。
各種手続きが必要(確定申告・保険加入など)
一人親方は、確定申告や保険などの経営・個人資産・納税に関することを自分自身で行わなくてはなりません。手続の仕方を学ばないと、将来的に資金のことで困ったり、脱税などの法律違反にあたる可能性があります。
〇必ずおこなわなくてはならない手続き
- 確定申告
- 国民健康保険・国民年金の加入手続き
- 開業手続き
〇推奨される手続き
- 労災保険への特別加入
〇必要に応じて検討すべき手続き
- 個人年金(iDeCoなど)の加入手続き
- 民間保険(生命保険・医療保険など)手続き
また、ご自身のことだけではなく扶養する家族の保険や資金の管理についても検討する必要があります。
ローンや融資が組みにくい
個人事業主として独立したばかりのときは、社会的な信用がほとんどない状態です。住宅ローンやマイカーローンなどの審査が通りにくくなることを把握しておきましょう。自動車を買い替えたい場合は、独立前(退職前)に購入するのがおすすめです。
塗装業(一人親方)の収入
一人親方としての独立を検討する場合、最も気になるのは収入ですよね?
独立して塗装業をしている方の収入について詳しくみていきましょう。
相場
塗装業の一人親方の収入は、人によってかなり幅があります。年収ベースでは、300万円代~1,000万円を超えるくらいまでの開きがあります。一般的に、塗装業の1日あたりの作業単価は、以下のとおりです。
- 地方での塗装作業・・・8,000円~
- 都市部での塗装作業・・・10,000~
単価は、仕事の内容やクライアントの意向によって最大20,000円程度になることもあります。上記を踏まえ、ボリュームゾーンとしては年収500~800万円くらいの方が多いです。
塗装業の会社員の年収は、350~500万円程度の方が多いため、比較すると個人事業主の方が高収入です。
※ただし、一人親方の場合、以下の金額が自己負担になります。
- 必要経費(塗料・工具・交通費など)
- 各種保険料(会社員は労災保険や社会保険料などについて会社の負担分があるが、一人親方は自分で負担しなくてはならない)
上記をふまえて、収入・支出を総合的に判断する必要があります。
収入を増やすために必要なこと
一人親方の塗装業で収入を上げるには、以下のポイントをおさえましょう。
- 技術を磨く(必要に応じて資格を取得する)
- 請負元やクライアントと良好な関係を築く
- 相手によっては案件の依頼を断る(あまりにも相場が低い場合や相手方の態度が失礼な場合など)
- 営業に意識を置く
一人親方の場合、もともとの人脈からの受注や紹介で仕事をしているケースが多いです。さらに仕事の幅を広げるためには、自ら営業をしたりWebサイト・SNSなどで宣伝するのも効果的です。
塗装業(一人親方)に役立つ資格
塗装業において単価・受注率を上げる際、資格が役立つことがあります。
この章では、塗装業の収入アップに直結する資格を3点ご紹介します。
足場の組立て等作業主任者
足場の組立て等作業主任者は、高さ5m以上の足場組立てをする際に、1現場につき1名以上保有していなくてはならない資格です。足場組立て等作業主任者の資格があれば、ビルの外壁塗装などが担当できるため、仕事の幅が大きく広がります。大型ビルの塗装は、工期が長くなるため収入が安定しやすいメリットがあります。
塗装技能士
塗装技能士(3~1級)は、塗装の技能の高さを補償する国家資格です。資格を取得していると客観的な技術の裏付けになるため、特に大型の案件を受注しやすくなります。
塗装技能士を取得していなくても塗装の仕事に従事することは可能ですが、塗装を本業とする方には非常にメリットが大きい資格です。
建設業許可証
建設業許可証の資格を取得すると、単価500万円以上の大型案件を受注できるようになります。また、建設業許可は取得要件が厳しいため、対外的な信用にもつながります。
まとめ
塗装業者が一人親方として独立すれば、収入が大幅に上がる可能性があります。
収入アップのためには、安定して収入が得られるよう技術の向上や営業力を磨かなければなりません。
また、経費・保険・確定申告などに対する正確な知識や手続きも必要です。
塗装業で一人親方として独立を検討中の方は、ぜひ本記事を参考にしてください。