労災保険の補償給付金がいつもらえるのかは、とても大切な問題です。預金や手元の現金に十分に余裕のある方以外は、保険の給付金を受け取るまでに資金が不足する可能性があるためです。また、現実問題として葬儀費用や施設の入所費用などまとまった費用が必要となる場面もあります。
そこで、最初に理解しておくべきことは、労災認定された際に給付金がいつもらえるのかをあらかじめ把握することです。この記事では、労災保険の給付金がいつもらえるのか気になっている会社員の方や、労災保険の特別加入者(一人親方など)の方に向けて、わかりやすく情報を案内しています。
いつもらえるかという点に加えて、給付が遅れる理由や最短で給付金を受け取るための手続き方法をご紹介します。
Contents
労災保険の補償給付はいつもらえる?
そもそも労災保険とは、会社員や特別加入者(一人親方など)の業務中や通勤中のケガ・病気・死亡リスクを補償するものです。労災事案が発生した際に、労災保険加入者またはその関係者(家族など)が労働基準監督署へ申請すると給付金を受け取れる流れになっています。
労災保険は、さまざまなリスクをカバーしているため、補償の内容ごとに補償給付金の受け取り時期を考えなくてはなりません。また全体的に共通するのは、労災保険は加入していても給付金の申請をしなければ受給できないことです。さらに、各補償に関しては申請の時効が設けられているものもあり、期間が経過してしまうとそもそも保険金の給付自体ができなくなります。
この章では、種類別に補償給付金がいつもらえるのかの目安を解説します。
療養補償
療病補償とは、医療機関での治療費や薬代の自己負担が無料になる保険制度です。指定の医療機関で治療を受けた場合は現物給付の補償制度であるため、受け取り時期が問題になることはありません。
ただし、自宅の近くに指定の医療機関がなかったり、緊急性が高かったりする場合などの状況下で、労災事案であるにもかかわらず労災指定外の医療機関で治療を受けるケースが想定されます。
この場合、いったん医療機関で治療費を負担してから、支払った治療費を請求する流れになります。請求書を送付してから給付金を受け取るまでの期間は、1か月前後です。
休業補償
休業補償は、労災によるケガや病気のためまったく仕事ができなくなったときに、生活の保障をしてくれる保険制度です。入院4日目以降、給付基礎日額の80%が給付されます。休業補償が支払われる時期はおおむね請求から1か月です。
多くのケースでは、1か月分などある程度まとまった日数分ごとにまとめて支給されることが多いです。
傷病補償年金
傷病補償年金とは、労災事案の発生から1年6か月が経過してもケガや病気が完治せず、なおかつ一定の傷病に該当すると判断されたとき支払われる給付金です。労働基準監督署長の職権によって行われるため、請求手続きは不要です。
障害補償年金・一時金
障害補償年金とは、労災保険加入者が労災事故による負傷、疾病が治った(症状固定した)ときに、依然として障害が残存する場合にその障害の程度に応じて支給される補償給付金です。障害等級の決定は障害の程度にもよりますが、最低でも半年程度要すると考えた方がいいでしょう。
遺族補償年金・一時金
遺族補償年金とは、労災保険加入者が労災事案により死亡したとき、遺族が受け取れる補償給付金です。目安としては、補償金が支払われるまでにかかる期間は4か月前後です。遺族補償年金に関しても、状況などにより給付金支払いまでの期間が長期化することがあります。
葬祭料
葬祭料とは、加入者本人が死亡した際に葬儀費用として支払われる補償金です。金額は、315,000円+給付基礎日額の30日分・もしくは給付基礎日額の60日分です。遺族補償一時金の一部として支払われることになっています。したがって、支払われるまでにかかる期間は4か月程度です。
介護補償給付
介護補償給付とは、労災事案により要介護となったときに介護料としてかかった費用が補償される保険制度です(ただし、受け取れる金額の上限が設定されています)。基本的に1か月単位で請求をおこないますが、3か月分まとめて請求することも可能です。請求から受け取りまでの期間は、3か月程度です。
労災保険の補償給付を速やかに受け取るための手順
労災保険の補償給付を速やかに受け取るためのポイントは、一つひとつの手順を適切・的確におこなうことです。この章では、労災保険を受給する際のスムーズな手順について解説します。
医療機関で診断を受ける
労災のケガ・病気の際に休業補償や傷病補償を受け取るには、そもそも医療機関で治療を受けることが出発点となります。このとき、労災病院もしくは労災指定の医療機関での治療が理想的です。最寄りの労災指定医院は、厚生労働省のホームページにて確認できます。
指定の医療機関であれば、現地での治療費の自己負担が無料になるためです。なお、病院や薬局のほかに整骨院やしんきゅう院なども指定院とされている場合があります。労災保険の対象となる治療・施術を確認したうえで、労働基準監督署指定の院で施術を受けてください。
医療機関に書類を発行してもらう
労災保険を申請する際には、医師による症状の証明が必要なケースがあります。証明が必要なケースは、療養補償給付や休業補償給付を受領する際に必要です。
- 証明が必要なケース・・・療養補償給付・休業補償給付
- 診断書が必要なケース・・・傷病補償給付・障害補償給付
また、しんきゅうやあん摩マッサージなどを受けて労災保険を申請する際にも診断書が必要です。
労働基準監督署に申請書を提出する
労災基準監督署に申請書を提出することで、労災保険の申請手続きが完了します。逆に言えば、申請書を提出しないと、労災保険の給付を受給できません。さらに、労災保険には補償の内容によって時効が設定されているため、期限内に申請をしなければ補償対象外になります。
一般的に労働者が直接労働基準監督署に提出するわけではありません。例えば、会社員の方の場合は会社の総務担当窓口に、一人親方などの特別加入者は特別加入団体を通じて請求する流れが一般的です。
労災保険の補償給付が遅れる原因
労災保険の給付は、状況によって目安の期間よりも遅れることがあります。遅れる状況はケースバイケースですが、この章でご紹介するポイントに該当する場合は補償給付までに時間を要することが多いです。
速やかに手続きをするために遅延の要因に注意するためにも、時間がかかるとの心づもりをしておくためにも、この章でご紹介するポイントを参考にしてください。
請求書に不備がある
労災保険の請求書(申請書)の内容に不備が発生していると、労働基準監督署での内容確認に時間がかかったり、再提出を要求されたりすることになり、手続きに時間がかかります。
また、請求の際に必要な添付書類(診断書や個人情報確認書類など)の漏れにも要注意です。必要書類は、会社の窓口もしくは加入している労災保険特別加入団体の窓口で確認してください。
労災認定の判定が難しい
労働基準監督署で労災保険の判定に時間がかかることもあります。具体的な例をいくつかご紹介します。
- 職場で感染症にかかったため労災保険の申請をしたが、ほかにも疑われる感染経路があり職場で感染したとは断定できない
- 医療機関で、うつ病であるとの診断を受けたが、その原因が業務に起因するとは断定できないケース(ほかに過度なストレスによる脳梗塞なども判断が難しくなりやすい)
- 社員旅行中のケガなど、業務中であるか否かが微妙なケース
上記のようなケースでは、労働基準監督署での判断に時間を要することがあります。また、時には労災認定を巡って裁判に発展するなど、給付金が支払われるまでの期間がかなり長くなることもあります。
金融機関の口座情報が誤っている
不備の一種ではありますが、労災保険の申請書に記載した金融機関の口座情報が誤っていると補償給付金を受領できません。また、口座情報の不備は手続きの途中には気づかれないことが多く、不備の確認が遅くなることが多いです。
等級の判定が絡むケース
傷病補償のように、等級の判定が必要なケースでは細かな症状の確認が必要であるため、判定に時間がかかります。また、症状の治癒状況や見込みの有無について継続的な判断が必要とされることにも注意が必要です。
会社や労災保険特別加入団体からの手続きが滞っている
ご自身の手続きに不備がなくとも、会社の総務窓口や労災保険特別加入団体(一人親方の場合)での手続きに時間がかかっていることがあります。珍しいケースではありますが、生活の安心の面で大きく影響するため、注意が必要です。
特に労災保険特別加入団体を通じて補償給付金を申請する場合には、十分に注意をする必要があります。というのも、労災保険特別加入団体の体制や方針によってレスポンスの早さや作業のていねいさなどに違いが見られるためです。したがって、労災保険の加入手続きをする際に、手続きの流れや対応のていねいさなどを確認し、安心しておまかせできる労災保険特別加入団体に依頼しましょう。
まとめ
労災保険の事案が発生してから補償給付金が入金されるまでにはタイムラグがあります。生活の安全や身内への負担を考えた場合、タイムラグは少しでも小さい方が安心です。
加入者ができる対策としては、不備なくスムーズに労災保険の申請手続きをおこなうことなどに対策がかぎられるものの、基本的な目安の期間がわかっているだけでも安心感は大きいのではないでしょうか?
また、特に一人親方の場合は労災保険特別加入団体の対応が大きな助けになります。的確かつ迅速な対応をおこなっている団体に加入し、安心して仕事ができる状況を整えましょう。