一人親方労災保険の「労災センター通信」

アスベストによる疾病は労災保険で!認定要件と給付内容を徹底解説

 アスベストによる健康被害は、石綿ばく露作業に従事していたことが原因だと認められた場合に労災保険給付の対象になります。しかし健康被害の発生までに時間がかかるため、労災認定されるかわからない方も少なくありません。
 本記事ではアスベストによる疾病の認定要件や労災保険の申請手順、給付内容を認定事例とともに解説します。
 病気の原因に仕事が関係していたと気づかずに時効になってしまった場合や労災認定が下りなかった場合の救済措置も解説するので、ぜひ参考にしてください。
アスベスト

アスベスト(石綿)による疾病は労災保険の対象になる!

 アスベスト(石綿)を取り扱う業務に携わっている、または過去に携わっていたことが原因の健康被害が問題になっています。アスベストによる疾病は労災保険の対象になるため、申請手続きを行うと給付が受けられます。しかし、アスベストによる健康被害に気づくのが遅いケースも多く、ご自身やご家族が該当するかわからない方も少なくありません。
 そこで、アスベストによる健康被害救済の取り組みとして、すべての労災保険適用事業主が一般拠出金を負担することや、労災認定事業場を公表することなどが行われています。ここでは、アスベスト問題と労災保険について健康被害救済の取り組みとともに解説します。

アスベスト問題と労災保険

 アスベスト問題が話題になったのは平成17年の「クボタショック」からです。大手機械メーカークボタのアスベストを扱う工場労働者に、石綿関連での死亡者や療養中の退職者が多数いることが発表されました。
 この出来事が一つのきっかけとなり、石綿の使用が国の規制で禁止されたのです。しかし、その後もアスベストによる健康被害者の数は増加を続けているのが現状です。
 労災保険は業務上の怪我や病気から労働者を守るために国が定めた制度で、業務でアスベストを取り扱ったために疾病を患った場合は給付の対象となります。被災労働者がすでに退職していたり亡くなっていたりするケースもありますが、時効になった場合を除き労災保険は適用されます。

アスベスト健康被害救済の一般拠出金

 アスベストによる健康被害の増加に伴い国は「石綿による健康被害の救済に関する法律」を施行し、平成19年より労災保険適用事業場の全事業主が、一般拠出金を負担するようにしました。
 施行当時の利率は1,000分の0.05で、その後平成26年に1,000分の0.02に引き下げられました。算定方法ですが、賃金総額が1,000万円の事業場の場合、1,000万×0.02/1,000=200円となります。
 これにより救済に必要な費用は、国からの交付金・地方公共団体からの拠出金・事業主からの拠出金でまかなわれることになりました。

石綿ばく露作業による労災認定事業場の公表

 アスベストによる健康被害救済で、石綿粉じんのばく露を受ける作業や間接的にばく露を受ける作業を「石綿ばく露作業」と定めています。例えば、石綿を含有する鉱石の採掘やそれに関連する作業、石綿の吹き付け作業、石綿製品の製造工程での作業などが挙げられます。
 そして、労災認定された被災労働者が、最後に石綿ばく露作業に従事した事業場を、石綿ばく露作業による労災認定事業場として公表されています。これは、該当する事業場で過去に働いた労働者やその家族に、石綿ばく露作業に関わった可能性があることを注意喚起するのが目的です。
 アスベスト関連の疾病は潜伏期間が30~40年と長期のケースもあり、この特殊性から先述の注意喚起が必要と判断されました。

アスベストによる疾病の認定事例

 アスベストによる健康被害はさまざまで潜伏期間も長期にわたるので、ご自身やご家族が認定されるか心配になる方も少なくありません。そこで、ここでは厚生労働省が発表している事例を2つご紹介します。

石綿ばく露作業が1年未満でも認定された例

 まず、石綿ばく露作業に従事したのは1年未満でもアスベストによる疾病と認定された事例です。被災労働者が中皮腫と診断されたのは平成23年のことですが、この方は昭和41年10月から昭和42年4月までの約7ヵ月間、造船所でアスベストを含有する断熱材の取り付け作業に従事した経験がありました。
 石綿ばく露作業自体は1年未満でしたが、当時の造船所での作業は高濃度の石綿粉じん環境下であり、さらに「悪性胸膜中皮腫」と診断されたことで認定の判断が下されました。

死亡後に医学的資料が廃棄されていても認定された例

 被災労働者はすでに肺がんで死亡しており医学的資料もすでに廃棄されていましたが、アスベストによる疾病と認定された事例もあります。この方は昭和27年6月から昭和45年10月までの約18年間アスベスト含有製品の製造作業をし、その後肺がん発症で平成5年に亡くなりました。
 医学的資料が残っていませんでしたが、石綿製品を扱った事業場で働いた18年の間に高濃度のばく露を受けていたと考えられることや同時期に同じ仕事をしていた方がアスベストによる肺がんで労災認定されている事実があり、この方の肺がんも同様であると認定されました。

労災保険で補償されるアスベストによる疾病と認定要件

じん肺
 労災保険で補償されるアスベストによる疾病は以下の5つです。

  • 石綿肺
  • 中皮腫
  • 肺がん
  • 良性石綿胸水
  • びまん性胸膜肥厚

 それぞれの疾病と認定要件について解説します。

石綿肺

 石綿肺は、アスベストを大量に吸入することで肺が線維化する肺線維症(じん肺)の一つです。
 「じん肺法」規定の管理区分(管理1~4)にもとづいて

  • 「管理4」の石綿肺(石綿肺によるじん肺症)
  • 「管理2~4」の石綿肺に合併した疾病(肺結核、結核性胸膜炎、続発性気管支炎、続発性気管支炎拡張症、続発性気胸)

 これらが認定要件となります。

中皮腫

 中皮腫とは胸膜や腹膜など中皮細胞から発生する悪性腫瘍のことです。胸膜・腹膜・心膜・精巣鞘膜の中皮腫で、石綿肺の所見があり石綿ばく露作業従事期間が1年以上あることが認定要件となります。ただし、最初の石綿ばく露作業から10年未満に発症した場合は除きます。

肺がん

 肺がんは気管・気管支・肺胞の細胞に発生するがんのことです。他の部位から移転したものではない「原発性肺がん」で、石綿肺の所見があることや胸膜プラークの所見と一定従事期間、びまん性胸膜肥厚に併発などに該当すると認定要件が満たされます。しかし、最初の石綿ばく露作業から10年未満に発症したものは除きます。

良性石綿胸水

 良性石綿胸水とはアスベスト胸膜炎とも呼ばれ、アスベストが原因で胸膜に炎症が起こり胸水がたまる病気のことです。特に要件は記載されていませんがアスベスト以外の原因でも発症することがあるため、労働基準監督署長と厚生労働省が協議した上で業務上の疾病としての認定が判断されます。

びまん性胸膜肥厚

 びまん性胸膜肥厚とは肺を包む胸膜が線維化し厚くなっていく病気です。石綿ばく露作業に3年以上従事し著しい呼吸機能障害と一定以上肥厚の広がりがある場合に、業務上の疾病として認定されます。

労災保険の申請と給付内容

 アスベストによる疾病で労災保険の申請はどうすれば良いでしょうか。ここでは、基本的な手順と給付内容を解説します。

労災保険の申請の流れ

 労災保険の一般的な申請手順の流れは以下の通りです。

  1. 会社に労災申請をする旨を連絡する。
  2.  請求書をダウンロードし必要事項を記入する。
  3.  会社に証明欄の記入を依頼する。
  4.  労災保険指定病院の場合は病院へ、それ以外の場合は労働基準監督署に請求書を提出する。

 会社の証明が受けられない場合は、空欄にしたままその旨を労働基準監督署に伝えて申請をそのまま進めることができます。

療養補償給付

 療養補償給付とは、業務災害による怪我や病気の療養にかかった費用が支払われる給付です。アスベストによる疾病の場合も業務災害に当てはまり、病院での診療や治療にかかる費用が補償されます。
 労災病院や労災保険指定医療機関を受診すると無料で治療や薬剤などの支給が受けられます。労災保険指定医療機関以外の病院を受診する場合は費用を一旦自己負担して、労災認定後にかかった費用が支払われます。

遺族補償給付

 被災労働者の遺族には、遺族補償給付として遺族(補償)等年金・遺族特別支給金・遺族特別年金が支給されます。給付額は、遺族数により異なります。
申請は被災労働者の死亡診断書や戸籍謄本など、必要添付書類を揃えて労働基準監督署に提出します。
 なお、労災保険の遺族補償給付の請求権は、被災労働者が死亡した日の翌日から5年で時効となるので注意が必要です。

気づかずに時効になった場合は特別遺族給付金

 アスベストが原因の疾患で亡くなったと気づかずに遺族補償給付を受ける権利が失効になった場合は、特別遺族給付金を受けられる制度があります。この制度により、特別遺族年金が原則年額240万円、特別遺族一時金が1,200万円支給されます。
 特別遺族年金は請求月の翌月分から支給されますが請求期限が令和4年3月27日までなので、心当たりのある方は早めに請求しましょう。

労災認定が下りなかった場合の救済措置

 労災保険による補償給付を受けられない方の救済措置として、「石綿健康被害救済制度」があります。救済の対象となる指定疾病は、中皮腫・肺がん・著しい呼吸機能障害を伴う石綿肺・著しい呼吸機能障害を伴うびまん性胸膜肥厚です。被認定者には医療に要した自己負担分や療養手当の月額103,870円が支給されます。
 また、救済制度で認定後に亡くなった場合は葬祭料199,000円と医療費の合計金額が280万円に満たない場合の差額が支給されます。救済制度に申請する前に指定疾病で亡くなった場合の支給額は、特別遺族弔慰金280万円、特別葬祭料199,000円です。

まとめ

 アスベストによる健康被害も労災保険の対象になることを、指定疾病の認定要件や給付内容などと併せて解説しました。アスベストによる疾病は潜伏期間が長いなど特殊性を持つため、ご自身やご家族が気づかないケースも少なくありません。健康被害の救済制度にはそれぞれ請求期限や時効があるので、心当たりのある方は早めに確認して手続きを開始しましょう。
 労働災害が発生した際に、被災労働者やその家族を保護する目的で労災保険制度が定められています。一人親方のように労災保険対象外の方もいますが、その場合は特別加入制度を活用して万一の労働災害に備えましょう。
 お急ぎの場合は、最短で翌日からのご加入が可能な「一人親方団体労災センター」まで、ぜひお気軽にご相談ください。

> 労災センター通信 一覧ページへ

問い合わせ・資料請求はこちら

一人親方労災保険についての
ご不明な点は、お気軽にお問い合わせください。

お問い合わせ・資料請求はこちら

050-3786-1525

[受付時間] 平日9時~18時 (土日祝・年末年始除く)

一人親方労災保険特別加入のお申し込みはこちら

お申し込みの流れはこちらをご覧ください。

一人親方労災保険特別加入手続きの当団体対象地域

関東
東京・千葉・神奈川・埼玉・茨城・栃木・群馬・静岡
関西
大阪・京都・兵庫・奈良・和歌山・滋賀・三重・鳥取・岡山・徳島・香川
中部
長野・新潟・富山・山梨・岐阜・愛知
九州
福岡・佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島
東北
宮城・岩手・秋田・山形・福島
沖縄
沖縄