一人親方労災保険の「労災センター通信」

労災申請には時効期限がある!種類別の留意点や手続きの流れを解説

 労災保険の給付申請をするにあたり、

  • 「いつまでに申請すればよい?」
  • 「申請の期限や留意すべき点はある?」
  • 「申請手続きの流れは?」

 などと考える方は少なくありません。
 さまざまな事情で申請手続きをすぐに行えないケースもあるでしょう。しかし労災申請には時効期限があるため注意が必要です。
 本記事では、労災申請の時効期限や留意すべき点を種類別にわかりやすく解説します。申請手続きの流れもまとめますので、ぜひ参考にしてください。
労災保険の時効

労災申請には時効期限がある!

 仕事中や通勤中のケガ・病気に対して、必要な保険給付を補償してくれる労災保険。しかし労災申請の時効期限を過ぎてしまうと、請求する権利を失うため注意が必要です。
 労災保険の給付種類に応じて、以下のような時効期限が定められています。

給付金 時効
療養(補償)給付 療養の費用を支出した日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
休業(補償)給付 賃金を受けない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年
遺族(補償)給付 被災労働者が亡くなった日の翌日から5年
葬祭料(葬祭給付) 被災労働者が亡くなった日の翌日から2年
傷病(補償)年金 監督署長の職権により移行されるため請求時効はない
障害(補償)給付 傷病が治癒した日の翌日から5年
介護(補償)給付 介護を受けた月の翌月の1日から2年
二次健康診断等給付金 一次健康診断の受診日から3ヵ月以内


 参考:厚生労働省「労災保険の各種給付の請求はいつまでできますか 」

【種類別】労災申請の期限に関する留意点

労災申請
 必要な保険給付を適切に受けるためには、給付種類ごとの時効期限やルールを理解することが大切です。
 ここでは、労災保険の種類別に給付内容や期限に関する留意点を解説します。

療養(補償)給付

 療養(補償)給付は、業務または通勤が原因で傷病を負い、療養を受ける場合に支給される保険給付です。
 労災病院や労災保険指定医療機関で治療を受ける場合は、窓口での自己負担がないため時効期限はありません。ただし労災保険指定医療機関以外で治療を受ける場合は、医療費を支払った日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年が経過すると時効が成立します。定期的に通院するケースでは、労災の請求権が毎回発生するため注意が必要です。

休業(補償)給付

 休業(補償)給付は、業務または通勤を原因とする傷病の療養のために労働できず、賃金を受け取れないときに請求できる保険給付です。休業の第4日目から請求でき、給付基礎日額の60%、および休業特別支給金として給付基礎日額の20%が支給されます。
 働けず賃金の支払いが受けられない日ごとに請求権が発生し、その翌日から2年が時効期限となります。

遺族(補償)給付

 遺族(補償)給付は、労働災害により死亡した労働者の収入で生計を維持していた配偶者・子・父母・孫・祖父母または兄弟姉妹に支給される給付金です。一定の条件を満たす遺族がいれば遺族(補償)年金が、それ以外の遺族しかいないときには遺族(補償)一時金が支払われます。
 いずれも被災労働者が死亡した日の翌日から5年経過すると、時効期限により請求権を失います。

葬祭料(葬祭給付)

 葬祭料(葬祭給付)は、労働災害により死亡した労働者の葬祭を行う際に請求できる給付金で、原則として31万5,000円に給付基礎日額の30日分をプラスした額が支給されます。一般的には葬祭を行う遺族に対して支給されますが、会社や友人など遺族以外が葬祭を行った場合にも適用されます。
 ただし、被災労働者が死亡した日の翌日から2年が時効期限となり、それ以降は請求権を失うため注意が必要です。

傷病(補償)年金

 傷病(補償)年金は、労働災害により傷病を負い、療養開始後1年6ヵ月を過ぎても治癒(症状固定)せず、障害の程度が傷病等級1~3級に該当する場合に支給される年金です。
 ほかの保険給付とは異なり、被災労働者に請求権はないため、時効期限はありません。給付の決定は労働基準監督署長の職権で行われます。

障害(補償)給付

 障害(補償)給付は、労災事故を原因とする傷病が治癒した後、障害が残った場合に支給される保険給付です。障害等級1~7級の重い障害に対しては障害(補償)年金、8~14級の障害に対しては障害(補償)一時金が支給されます。
 傷病が治癒(症状固定)した日の翌日から5年が経過すると時効期限を迎え、それ以降は給付申請ができなくなるため注意が必要です。

介護(補償)給付

 介護(補償)給付は、傷病(補償)年金または障害(補償)年金を受給していて、一定の傷病等級または障害等級に該当し、現に介護を受けている場合に支給される保険給付です。
 時効期限は、介護を受けた月の翌月1日から2年で、ほかの保険給付とは起算日が異なる点に注意する必要があります。

二次健康診断等給付金

 二次健康診断等給付金は、会社の健康診断(一次健康診断)で脳・心臓疾患に関する4項目すべてに異常の所見がある場合に、無料で精密検査や特定保健指導が受けられる制度です。給付の対象となる4項目は、「血圧検査」「血中脂質検査」「血糖検査」「腹囲の検査またはBMI(肥満度)の測定」です。
 一時健康診断の受診日から3ヵ月で時効期限を迎えるため、早めに二次健康診断を受診する必要があります。

労災申請の期限と併せて知っておきたい注意点

労災申請時の注意点
 労災申請の時効期限が過ぎると、労災保険の給付を受ける権利は消滅します。時効が成立した保険給付に関しては、さかのぼっての請求はできませんので注意が必要です。
 また、労災申請に関してほかにも注意すべきポイントがあります。ここでは、労災申請の期限と併せて知っておきたい注意点を4つご紹介します。

「時効だから」と自己判断をしない

 まず労災申請の時効期限について、自己判断をしないで公的機関に相談することが大切です。
 「労災事故が発生したのは昔のことだから時効期限を過ぎているだろう」と考え、はなから諦めてしまう方もいるようです。しかし労災保険の給付種類に応じて時効期限や起算日が異なるため、実は時効成立前である可能性もあります。過去に起きた労災事故でも、時効成立前であれば労災保険の申請は可能で、労働基準監督署は詳細を審査したうえで給付を決定します。
 例えば労災事故でケガや病気をした日が2年以上前でも、療養により賃金をもらえなかった日が2年以内であるケースもあり、その分の給付は請求可能です。

うつ病の労災認定には時間がかかる

 うつ病の労災認定は時間がかかる点にも注意が必要です。実際うつ病による労災認定の割合は30%ほどで、それほど高くはありません。
 しかし、労災給付は健康保険の傷病手当金よりも有利であるため、労災申請自体はしておくとよいでしょう。
 ただし認定には、うつ病の発症が仕事と私生活のどちらに起因するかを慎重に判断する必要があるため、審査に時間がかかります。この点を考慮して、健康保険の傷病手当金を申請してから労災申請を行うケースが多いようです。

労災以外に金銭請求できるケースもある

 労災申請の時効期限が過ぎて請求権を失った場合も、労災保険以外に金銭請求できるケースがあります。
 業務上のケガや病気に関しては、本来は会社に補償責任があるところを、労災保険により責任が免除される仕組みです。つまり労災保険を使えなかった場合、会社側に安全配慮義務違反(債務不履行)や使用者責任(不法行為)があるケースでは、会社側に民法上の損害賠償責任が残っています。
 安全配慮義務違反の場合、2020年3月31日までのものは10年、それ以降のものは5年が時効期限です。また、人の生命または身体を害する不法行為の時効期限も、損害および加害者を知ってから5年です。

健康保険を使ってしまった場合は労災に切り替える

 業務上または通勤中のケガや病気であるにもかかわらず、何らかの理由で労災保険ではなく健康保険を使って治療を受けてしまった場合は、労災保険に切り替える必要があるでしょう。
 そもそも健康保険は、業務上および通勤中の傷病では使えないことになっています。それで、受診している医療機関で労災保険への切り替えができる場合は、労災保険の申請書類を提出することで支払い済みの費用を返還してもらえます。
 受診した医療機関で切り替えができない場合は、加入している健康保険組合に連絡を取り、指示通りに切り替えを行ってください。

労災申請手続きの流れ

 労災申請の手続きの流れは以下のとおりです。

  1. 労災事故の発生を会社に連絡する
    労災発生の事実を会社へ連絡し、可能であれば労災保険指定医療機関を選んで受診します。
    会社へは被災者・被災日時・災害の状況・目撃者・受診する病院などを伝えます。
  2. 労働基準監督署へ必要書類を提出する
    労災保険指定医療機関を受診する場合は病院を通して、それ以外を受診する場合は労働基準監督署へ直接、労災保険給付の請求書などの必要書類を提出します。
    基本的に被災労働者本人またはその家族が必要書類の提出を行いますが、会社の担当者が代理で提出してくれる場合もあります。
  3. 労働基準監督署による調査・確認が実施される
    労働基準監督署は、提出された書類にもとづいて労災事故の調査や確認を行います。
    会社や被災労働者に対して聞き取り調査などが行われる場合があるため、可能な限り協力することは重要です。
  4. 労災認定が下りたら保険給付が支払われる
    保険給付を行うかの決定は労働基準監督署長が行い、認定されると保険給付金が支払われます。
    労災認定が下りるまでに1~3ヵ月ほどかかるといわれています。

一人親方は労災保険特別加入制度を活用しよう!

 一人親方など労働基準法により労働者に該当しない方は、労災保険特別加入制度を活用するようおすすめします。特別加入団体を通して任意加入することで、労働災害が発生した場合に必要な給付が受けられるようになりますので安心です。
 例えば「一人親方団体労災センター 」は労働局承認の特別加入団体で、全国の一人親方が特別加入制度を利用できるようサポートしています。
 労災保険特別加入の場合も、労災申請には時効期限があるため、申請のタイミングには注意が必要です。

まとめ

 労災申請の時効期限を、労災保険の種類別にまとめました。
 労災保険のことを知らなかったり、職場に迷惑がかかることを心配して申請を躊躇したりする方も少なくなく、労災申請をすぐに行わないケースもあるようです。
しかし労災保険の種類に応じて時効期限やルールは異なるため、「もう遅いかもしれない」と思う場合でも、自己判断せずに公的機関などに相談し確認しましょう。

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