建設業に従事する方の中には、自分のスキルを活かして独立することを考えている方も少なくありません。独立して成功するには、開業資金や事務所の準備をはじめ、独立する方法や開業届など各種申請について、知っておくべきことがたくさんあります。
本記事では、
● 建設業で独立する3つの方法
● 独立して開業するまでの手順と必要な準備
についてわかりやすく解説します。
独立で成功するには万全の準備が欠かせないため、ぜひ参考にしてください!
Contents
建設業で独立する準備の前に!確認したい3つの経営形態
建設業に従事する職人の中には、長年の経験で得た知識や技能を活かして「独立」を検討する方もいます。独立を成功させるには万全の準備が欠かせませんが、そのためにも、まず独立する方法を理解し自分に合ったものを選ぶ必要があります。
建設業で独立する方法として考えられる経営形態は、以下のとおりです。
- 一人親方として独立する
- 法人として開業する
- フランチャイズに加盟して開業する
ここでは、建設業で独立する前に確認しておきたい上記3つの経営形態を解説します。
一人親方として独立する
建設業で独立する方法のひとつは、一人親方になることです。一人親方とは、従業員を雇わずに自分一人、または自分と家族だけで事業を行う個人事業主のことです。主に大工・左官・溶接工・塗装・内装・足場など、一人で作業できる職種で独立するケースが多いといえます。
一人親方になることで、雇用されているときとは異なる以下のようなメリットが得られます。
- 仕事量を調整して自分のペースで働ける
一人親方として独立すると、仕事量を自分の裁量で調整できるメリットがあります。「家族との時間を大切にしたい」「たくさん仕事して稼ぎたい」など、自由な働き方を選べるのが魅力です。また、職場の人間関係で悩むこともありません。 - 単価の交渉ができる
会社に雇われている場合、給料の相場はある程度決まっています。しかし一人親方として独立すると、請け負う仕事の単価を交渉して高収入が狙えるメリットがあります。
建設業で独立する場合、はじめに一人親方として独立し、経営が軌道に乗ってから従業員を雇うのが一般的な流れです。
法人として開業する
建設業で独立する方法として、法人として開業することも挙げられます。大きな仕事を受注して事業を拡大したい場合は、個人事業主よりも法人のほうが有利であると考えられます。
合同会社や株式会社として法人化するメリットは以下のとおりです。
- 対外的信用度が上がる
法人化することで、顧客からの信頼が得やすくなると考えられます。大手企業の中には法人でなければ取引しないケースもあり、事業を拡大したい場合は法人化にかなりメリットがあります。また、金融機関から融資を受ける際は法人の方が信用度が高く、資金調達の面で有利です。従業員を雇う場合も、個人事業主と比較して人材採用の面で有利になり、優秀な人材が集まりやすいでしょう。 - 節税面でのメリットがある
所得税は累進課税で、所得が増えるほど税率が高くなりますが、法人税は一定税率であるため稼げば稼ぐほど節税効果が期待できます。また、自分と家族の給料・福利厚生費・生命保険料・ボーナスや退職金など、経費にできる費用の幅が増えるのも魅力です。
フランチャイズに加盟して開業する
建設業で独立する方法に、フランチャイズに加盟して開業することも挙げられます。
フランチャイズとは、本部であるフランチャイザーと加盟店契約を結び、ロイヤリティを支払うことで店名や経営ノウハウを利用できるビジネススタイルのことです。フランチャイズに加盟して開業するメリットには、以下のようなものがあります。
- 集客しやすくなる
フランチャイザーの知名度を集客に活かせるメリットがあります。中にはテレビ・ラジオ・インターネット広告などで宣伝活動を行っているフランチャイザーもあり、フランチャイザーのこれまでの実績や信用を活かした有利な営業活動ができるでしょう。 - 会社経営のサポートが得られる
ロイヤリティの支払い義務があるものの、本部のサポートにより経営ノウハウや資金繰りを学べます。また、本部が部材を一括仕入れすることでコストダウンが期待できるのも魅力です。
建設業で開業するまでの手順と必要な準備
建設業で独立するには、事前準備が欠かせません。ここでは、建設業で独立し開業するまでの手順と必要な準備を、6つのステップで解説します。
必要な知識や経験を積む
建設業で独立する前に、企業に勤めて必要な知識や経験を積むのが一般的です。
そもそも専門とするスキルや経験がなければ、独立後の仕事の受注は期待できません。建設会社の社員として、または下請会社の作業員として働くことで知識や経験を積み、業界のルールを学んだり人脈を作ったりできます。
会社で働きながら経験を積むと同時に、施工管理技士などの国家資格やその他の各種資格を取得しておくと、独立してからも信用が得やすくなると考えられます。独立する前に、社用車の購入やクレジットカードの作成も済ませておくとよいでしょう。
開業資金を準備する
どの経営形態で独立するにしても、開業資金は必要不可欠です。開業資金として必要なのは、初期費用と運転資金です。
初期費用には以下のものが挙げられます。
- 事務所を借りたりリフォームしたりする費用
- 車両や工具
- 各種手続きにかかる費用
これらに加えて運転資金も必要です。仕事を受注してから売り上げが入金されるまで、数ヵ月単位のタイムラグが生じます。そのため、作業に必要な部材の仕入れや従業員の給料を最低でも3ヵ月分用意しておくとよいでしょう。
開業資金は、独立する前に貯金しておくのが理想的です。しかし資金が不足している場合は、日本政策金融公庫の新創業融資制度の利用も検討できるでしょう。
事務所や什器備品を準備する
独立にあたり、事務所や什器備品を準備する必要もあります。
事務所として自宅の一部を使うか、賃貸物件を借りるかを検討しましょう。自宅を事務所にする場合、通勤に時間がかからないことや賃料の何割かを経費にできるメリットがありますが、仕事とプライベートの区別がつきにくくなることも考えられます。事務所として物件を借りるには賃料がかかりますが、対外的な信用が得られたり仕事とプライベートを区別できたりするメリットがあります。
事務所には、デスク・椅子・ソファー・事務用品・OA機器などの什器備品が必要です。また、インターネット回線も必須であるといえるでしょう。ただし、はじめから高額な什器備品を購入し、独立後に資金繰りに困ることがないよう、必要最低限の見極めが大切です。
開業届や各種申請を行う
建設業で独立するにあたり、開業届や各種申請を行います。それぞれの概要を以下にまとめます。
- 開業届
開業届書は、国税庁の公式サイトからダウンロードできます。法人の場合は登記簿謄本などの添付書類を用意し、開業届とともに税務署に提出します。
個人事業主の場合は、添付資料は必要ありません。開業届の写しは、助成金の申請や銀行口座開設で必要なため、しっかり保管しておきましょう。 - 屋号の銀行口座開設
開業届を提出したら、開業時に決めた屋号で銀行口座を開設します。仕事用とプライベートの銀行口座を分けることで、確定申告の帳簿付けがしやすくなります。 - その他各種申請
それまで会社員であった場合は、国民健康保険や国民年金の手続きが必要です。また、独立後は「労働者」に該当せず労災保険の対象にならないため、特別加入制度の活用を検討するとよいでしょう。一人親方の場合は、特別加入団体をとおして労災保険の加入手続きを行います。特別加入についてのご相談は、安い・早い・安心がモットーの「一人親方団体労災センター」までお問い合わせください。
建設業の許可申請を行う
請負金額500万円以上の仕事を受注するには、法人・個人を問わず建設業の許可が必要です。
500万円以下の軽微な工事を行う個人事業主でも、元請けからの信頼度を上げるために建設業の許可を取得するケースは珍しくありません。
建設業の許可申請を行うには、以下の要件を満たす必要があります。
- 経営業務の管理責任者が一人以上いること
- 専任技術者が一人以上いること
- 財産的な基礎や金銭的信用があること
- 一定の欠格要件に該当しないこと
- 請負契約に関して誠実性を有すること
- 社会保険に加入していること
なお、建設業の許可を取得した個人事業主が法人化する場合、新たに建設業の許可申請が必要になります。
仕事の受注を行う
建設業で独立した後は、自ら仕事を受注しなければなりません。
独立後は、会社に勤めていたときの人脈を活かして仕事を受注するケースが多いでしょう。独立前に、社内や元請けとの間で良好な人間関係を築いておくことは大切です。
また、独立後も同業者との横のつながりを大切にするなら、閑散期に声をかけてもらえるなどのサポートが期待できます。
加えて営業力を身に付け、新規顧客獲得に努めることも重要です。元請けをひとつに絞ってしまうと、仕事量が限定されたり突然仕事がなくなったりするリスクがあります。
自社のホームページやSNSを、新しい客層の開拓に活用する方も少なくありません。ホームページやSNSは、業務拡大の際の人材確保にも効果的です。
まとめ
建設業で独立する方法、そして独立までの流れと必要な準備をまとめました。
技術や経験の積み上げが比較的容易な建設業は、独立しやすい業種だといえます。しかし独立後に失敗しないよう、万全の事前準備が不可欠です。
事前準備の中には、労災保険の特別加入など各種申請も含まれます。労災保険の特別加入は法律上任意ですが、個別の現場へ入場する際に必須とされるケースが増えています。また仕事中のケガや病気のリスクを考えても、特別加入しておくと安心でしょう。
開業資金の用意などすべきことはたくさんありますが、労災保険の特別加入を含め、万全の準備は独立後の成功につながる重要なステップです。