一人親方労災保険の「労災センター通信」

建設業の独立資金は最低100万円!?内訳や資金調達方法を解説

 建設業で独立する際に「どのくらいの資金が必要?」と考える方は少なくありません。
 人数にもよりますが、従業員を雇うなら200万円の資金を、しばらくは雇わず一人親方として仕事を請け負う場合でも、少なくとも100万円は蓄えを用意した方がよいでしょう。
 独立において必要なものがわかれば、必要な資金がより具体的になり、開業準備をスムーズに進められます。
 本記事では、建設業で独立するために必要な資金の内訳や、調達方法について解説します。また、独立するために知っておいた方がよい注意点やポイントもあわせて紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
一人親方の独立資金

建設業の独立に必要な資金の内訳

 建設業の独立に必要な資金は、業種や従業員の有無などにより異なります。資金があればあるに越したことはないですが、最低でも100万円は準備したほうがよいといわれています。
 いずれにせよ、必要な資金の内訳を理解することで、ある程度の目安がわかり、資金調達を含め独立する準備をスムーズに行えるでしょう。
 建設業の独立に必要な資金は、大きく以下の3つに分けられます。

  • 初期費用
  • 運転資金
  • 生活費

 ここでは、それぞれの内訳を具体的に解説します。

初期費用

 建設業の独立に必要な資金として、初期費用が挙げられます。初期費用には、以下のようなものが含まれます。

  • 事務所
     事務所を借りるために、保証金・前払い家賃・仲介手数料などが必要です。初期費用を抑えるために、事務所として自宅・倉庫・レンタルオフィスなどを活用する方もいます。
  • 什器備品
     事務所を開設するにあたり、パソコン・プリンター・机・椅子・インターネット回線などが必要です。また、筆記用具・文房具・事務用品・オフィス家具など、オフィス備品も用意しなければなりません。
  • 設立費用
     法人として会社を設立する場合は、定款の作成や登記などの手続きにかかる費用が発生します。
  • 車両や工具
     現場の行き来や道具を運ぶための車両が必要です。業種によっては、ショベルカーやブルドーザーなどの重機が必要になる場合もあります。また、実務で使用する工具類の購入にもお金がかかります。

運転資金

 運転資金とは、事業を行うのに必要な資金のことです。事業を開始してから実際に売上が入金されるまでに、3ヵ月ほどのタイムラグが発生します。その間の運転資金として、まとまった金額を用意しておかなければなりません。
 運転資金には、以下のものが含まれます。

  • 家賃や燃料費
     事務所を借りている場合は、毎月の家賃や光熱費がかかります。また、社用車や重機の燃料費も計算しておく必要があるでしょう。
  • 材料の仕入れ
     材料の仕入れ費用が発生します。資金がショートして仕入れができなくなると事業そのものが止まってしまうため、毎月の仕入れ費用を計算して最初の3ヵ月分は用意しておかなければなりません。
  • 人件費
     従業員を雇う場合は、給料を支払うことになります。売上の入金よりも給料の支払いが先になると考えられるため、人数分のまとまった金額を用意しておく必要があります。

生活費

 建設業で独立するにあたり、事業主である自分自身の生活費も用意しておかなければなりません。
 売上の入金までに時間がかかることを考え、自宅の家賃や光熱費を支払える分のまとまった金額が必要です。事業に必要な初期費用や運転資金と、自分で自由に引き出せるお金の区別をしっかりとする必要もあります。特に独立後は、お金の流れを把握して資金繰りをするのが難しくなるため、無駄な出費を抑えるようにしましょう。
 独立後に自分や家族の生活が苦しくならないよう、十分な資金を用意しておくことは重要です。

建設業の独立資金を調達する方法

 建設業で独立するために必要な資金を洗い出すとともに、独立資金を調達しなければなりません。独立直後の約3ヵ月間は自己資金で賄うことになるため、金額に余裕を持たせておくことは重要です。
 独立資金の調達方法として、以下の3つが考えられます。

  • 独立前に貯金をする
  • 日本政策金融公庫の融資制度を利用する
  • 家族や友人から借りる

 ここでは、それぞれの特徴やメリットを解説します。

独立前に貯金をする

 建設業で独立するための資金調達方法として、独立する前に貯金をすることが挙げられます。
 「お金を借りる=利子が発生する」ことを考えると、独立のための自己資金をできるだけ多く貯めておくことには大きなメリットがあります。また、不足分の融資を受ける際も、長期にわたり計画的にコツコツと貯金をしてきた履歴は、審査時に有利になる重要なポイントです。
 貯金をする際に大切なのは、預金通帳に入出金記録が残るようにすることです。融資を受けるときに通帳の提出が求められ、独立するために計画的に資金を準備してきたかがチェックされます。配偶者や子供など家族名義の通帳も自己資金として認められるため、独立資金の調達に活用できるでしょう。
 独立を急いでいない場合は、勤めている会社で出世を目指して収入アップを狙い、貯蓄額を増やせるかもしれません。また、副業が許されている会社に勤めている方は、アルバイトやクラウドソーシングを活用して自己資金を貯める方法もあります。

日本政策金融公庫の融資制度を利用する

 独立資金を調達する方法として、日本政策金融公庫の融資制度を利用することも挙げられます。
 これは、中小企業や小規模事業者向けに融資が受けられる国の制度で、民間の金融機関と比較して低金利であるのがメリットです。例えば、新たに事業を始める方は「新創業融資制度」の利用が可能で、無担保・無保証人で最大3,000万円(うち運転資金1,500万円)の融資が受けられます。
 ただし、融資を受ける要件として「創業時において創業資金総額の10分の1以上の自己資金を確認できる方」とあるため、一定額の自己資金を貯めておかなければなりません。また、「新たに営もうとする事業について、適正な事業計画を策定しており、当該計画を遂行する能力が十分あると認められる方」が対象で、事業内容を確認するために創業計画書の提出が必要です。

家族や友人から借りる

 独立資金を調達するのに、家族や友人から借りる方法もあります。
 信頼できる家族や友人がいて、事業についての理解がある場合、快くサポートしてくれるケースも考えられます。家族や友人から借りるメリットは、自分で貯金する場合と同様に利息が発生しないことです。
 ただし、事業を行うのは自分であることを自覚して、家族や友人に頼り切ってしまわないよう注意が必要です。また、手渡しで現金をもらうと出所がわからなくなり自己資金と認められないため、自分名義の口座に振り込んでもらうとよいでしょう。

建設業の独立における注意点

 人手不足が問題となっている建設業では、独立して会社を設立するチャンスがあります。しかし、資金繰りに行き詰って経営がうまくいかないなど、失敗するケースも珍しくありません。
 ここでは、建設業の独立で成功するために気をつけたい注意点を3つご紹介します。

建設業は資金繰りが難しい

 建設業は資金繰りが難しいため、独立後は特に注意が必要です。
 会社員から独立する場合、特に運転資金を見落としてしまいがちです。前述のように、建設業では資金回収に時間がかかりやすく、仕事があって利益を出しているにもかかわらず、支払いに必要な資金が不足して倒産してしまうことも。これを「黒字倒産」と呼び、主な原因として資金繰りの難しさが挙げられます。
 そこで、お金の流れを把握できるようキャッシュフロー計算表を作成し、手元資金を確認できるようにしましょう。資材の仕入れや従業員がいる場合は給料の支払いなども計算に入れて、仕事を受注する際は途中で行き詰ることがないよう、しっかりと計画してから請け負うことが大切です。

請け負う工事内容によっては許可や資格が必要

 建設業で独立する際に、請け負う工事内容によっては許可や資格が必要である点にも注意が必要です。
 独立後に事業をはじめるには、道路の使用許可などさまざまな許可を取得しなければなりません。その中でも、金額の大きな仕事を請け負う際に必要となる「建設業の許可」について知っておく必要があります。
 建設業の許可は、一件当たりの請負金額が税込500万円以上、建築一式工事の場合は税込1,500万円以上の工事で必要です。建設業の許可には「一般建設業」と「特定建設業」があり、元請として工事を受注する場合に、4,000万円以上(建築工事業の場合は6,000万円以上)を下請けに発注するケースでは、「特定建設業」として建設業の許可を取得します。
 建設業の許可は建設工事の種類ごとに取得し、有効期限は5年と定められています。更新する場合は、有効期限満了日の30日前までに申請が必要です。

独立後は労災保険が適用されなくなる

 建設業で独立するにあたり、独立後は労災保険が適用されなくなる点にも注意が必要です。
 労災保険は、労働基準法が定める「労働者」を対象としていて、請負で働く一人親方や会社の役員は対象外になります。建設業では、独立してからも一人親方または役員として現場作業に携わる機会が多く、事故のリスクは避けられません。そこで、一人親方や役員など労災の対象とならない方でも、任意で特別加入制度を利用できます。
 一人親方の労災保険特別加入制度については、「一人親方団体労災センター」までお問い合わせください。
 また、一人でも従業員を雇う場合は、労災保険への加入と完全管理をしっかり行いましょう。

まとめ

 建設業で独立するために必要な資金の内訳や、資金調達方法をまとめました。
 独立するには、事務所・什器備品・車両や工具など、初期費用としてまとまった金額が必要です。それに加えて、毎月の材料の仕入れや燃料費、従業員がいる場合は給料の支払いなど、事業を行う運転資金が発生します。特に建設業では、売上が入金されるまでに3ヵ月ほどかかるため資金繰りが難しく、運転資金を含めたお金の流れをしっかりと把握する必要があります。

独立後の資金繰りで行き詰らないためにも、事前に貯金をするなど計画的に自己資金を調達し、融資制度などを上手に活用して独立資金に余裕を持たせましょう。

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