「大工」は、自分の腕次第で独立しやすい職種のひとつです。本記事では、大工として独立するにはどうすればよいか、以下の流れで解説します。
- 大工で独立する2つの方法
- 独立するまでの流れ
- 大工で独立するのに役立つ資格
大工で独立して成功するために必要な情報が含まれていますので、ぜひ最後までお読みください!
Contents
大工で独立するには【2つの方法】
大工として経験や技術を磨くと、やがては独立して自分の腕ひとつで生計を立てたいと考えるものです。大工で独立するには、以下の2つの方法が考えられます。
- 一人親方として働く
- 工務店を経営する
まずは一人親方として独立して、安定した収入が得られるようになってから工務店を経営するのが一般的です。ここでは、それぞれの概要を具体的にまとめます。
一人親方として働く
大工で独立するのに、一人親方として働く方法があります。
一人親方は、従業員を雇わずに自分一人または家族だけと事業を行います。会社に属してはいないため、仕事の報酬は時給や給料ではなく出来高払いです。
一人親方として独立した大工は、請負元の就業規則に縛られることなく、1日の仕事の時間や量を自分で決められます。スキルを評価してもらい高単価の仕事を引き受けたり、1日に複数の現場をこなしたりして、収入アップを狙える魅力があります。また、まとまった休みを取るなどライフワークバランスを重視した働き方も可能です。
ただし、仕事を請け負う営業や事務仕事など、付随する作業も同時にこなさなければなりません。また、仕事のない時期は収入が得られないことや、請け負える仕事の規模に限界がある点も考慮に入れる必要があるでしょう。
工務店を経営する
大工で独立するのに、工務店を経営する方法もあります。
工務店を開業する際は、自分以外にも大工・とび職・足場職人・電気工事士など各分野の職人を雇用したり、一人親方と業務委託契約をしたりして工事を行います。一人親方として請け負う仕事と比較して、大規模な工事の依頼を引き受けられるため、大幅な年収アップも期待できるでしょう。
独立して工務店を開業する場合、大工として現場作業に従事するよりは、経営者としての作業が増えることになります。例えば、従業員の社会保険や人件費などの手続きを行い、各職人とコミュニケーションを図りながら作業を進め、次の現場を確保するために営業活動も行わなければなりません。
事業を本格的に展開し収入を大きくアップさせる可能性がある一方で、従業員の生活を守るなど社会的な責任が増すことも考慮する必要があります。
大工で独立するまでの流れ
ここでは、大工で独立するまでの流れを4つのステップに分けて解説します。
- 修行を積む
- 開業資金を貯める
- 開業手続きを行う
- 仕事を探す
開業届を出して独立するだけなら誰でもできますが、独立後に仕事をもらって安定した収入が得られるようにするには、一つひとつのステップを慎重に踏む必要があります。
修業を積む
大工として独立するには、修行を積んで経験とスキルを身に付ける必要があります。
一人前の大工として認められるには、5~10年ほどかかるのが一般的です。中には2~3年で独立する方もいますが、確かな技術を身に付け、建設会社や親方との信頼を構築するには時間がかかると考えられます。
修業期間中は、さまざまな現場を経験して親方や先輩大工の仕事を間近で見て学びます。工務店で働く場合は、大工以外にも電気屋・クロス屋・設備屋などさまざまな職人の仕事を見ながら、工事全体の流れを掴めるのが魅力です。
修行で経験やスキルを磨くと同時に、現場で出会う職人や建設会社の社員たちとの良好な関係を築くようにしましょう。名刺を渡して連絡先を交換しておくのもよいでしょう。後述しますが、これは独立後の仕事探しでとても重要なポイントになります。
開業資金を貯める
大工として独立する重要なステップに、開業資金を貯めることが挙げられます。一人親方として独立するには数百万円、工務店を開業するには1千万円以上の費用がかかると考えられます。
一人親方の場合、作業に必要な工具備品を揃える必要がありますが、自宅を事務所として活用し、移動や工具運搬用の車両を確保できていれば、開業費用はそれほどかからないでしょう。
工務店を開業する場合に必要なものは、以下のとおりです。
- 事務所を借りる保証金・敷金・礼金など
- 事務所の改装施工費
- 工具備品
- 移動や工具運搬の車両
- 法人設立費用
- 建設業許可を取得する費用
- 運転費用
工務店の経営では、従業員を雇うため人件費が発生します。事業が安定するまでは収益から人件費を支払うことが難しいため、運転費用の中に含めておくと安心です。
開業手続きを行う
大工で独立するには、開業手続きを行う必要があります。基本的な手続きには、以下のようなものがあります。
- 税務署に開業届を提出する
- 税務署に所得税の青色申告承認申請書を提出する
- 都道府県に個人事業開始申告書を提出する
- 国民健康保険・国民年金に変更する
- 都道府県に建設業許可を申請する(500万円以上の工事を請けるために必要)
工務店を経営する場合は、従業員の社会保険・労災保険の手続きが必要です。
一人親方として仕事をする場合は、一人親方労災保険に加入します。一人親方労災保険は、労働者に該当しない一人親方でも特別に任意で加入できる特別加入制度です。強制加入ではありませんが、万一被災した場合に家族や元請に迷惑がかからないよう、加入することがすすめられています。また、一人親方労災保険に加入していないと入れない現場が多いため、仕事を請け負うのに必要です。
一人親方労災保険への加入は、特別加入団体をとおして手続きをすることになっています。「一人親方団体労災センター」は都道府県労働局承認の特別加入団体のひとつで、全国規模で展開しています。最短翌日から加入可能、加入証明書は即日発行していますので、急ぎの場合も安心してお問い合わせください。
仕事を探す
大工として独立する準備が整ったら、いよいよ仕事を探します。
仕事をもらう方法のひとつに、前職の社長や知り合いの工務店から声をかけてもらうことが挙げられます。この方法で仕事をもらうには、前述のように人脈を構築しておくことが重要です。大工仲間がたくさんいると、営業して仕事を探す前に人伝いに仕事の紹介をされる可能性が高くなります。
また、建設会社やハウスメーカーに電話をして、下請けとして仕事をもらう方法もあります。ただし、低単価の仕事が多いため、下請け仕事だけを行うのではなく、顧客から直接依頼を受ける努力をしましょう。
例えば、ホームページを作成したりSNSやYouTube動画を活用したりできます。人脈頼りの仕事探しはいつか仕事が終わってしまうリスクがあるため、新規顧客確保を目指して営業活動にも力を入れる必要があります。
大工で独立するには資格が必要?役立つ資格3選
大工になるにも大工として独立するにも、特に資格は必要ありません。ただし、資格を取得することで顧客へアピールでき、仕事の幅を広げたり大きな仕事を受けたりできると期待できます。
ここでは、大工で独立する際に役立つ資格を3つご紹介します。
建築大工技能士
建築大工技能士は、木造建設の大工工事に必要な技術を認定する国家資格で、都道府県職業能力開発協会が実施する試験に合格することで取得できます。1~3級の3種類があり、いずれの場合も学科試験と実技試験の両方の合格が必要です。
3級に関しては誰でも受験できますが、2級を取得するには3級合格または実務経験2年がなければなりません。1級を取得するには7年以上の実務経験、または2級合格後2年以上、3級合格後4年以上の実務経験が必要です。
建築大工技能士の資格取得者は、神社仏閣の建設・修理に携われるようになります。また、級ごとに実務経験が問われるため、建築大工技能士の資格取得者は、独立後の仕事探しで大工としての経験やスキルをアピールできるでしょう。
建築士
建築士は、建築物の設計や工事に関連した国家資格で、以下の3種類があります。
- 一級建築士
3つの資格の中で最も難易度が高く、国土交通省から認可を受けている国家資格です。
資格取得することで、大型商業施設・オフィスビル・学校など、ほとんどすべての建築物の設計・工事管理が行えるようになります。 - 二級建築士
建築士の登竜門ともいえる資格で、各都道府県が免許を交付する国家資格です。
二級建築士は、戸建住宅規模の建築物の設計・工事管理が行えます。 - 木造建築士
都道府県が免許を交付する国家資格で、主に2階建てまでの木造建造物の設計・工事管理が行えるようになります。
建築士の資格を取得することで、大工として独立した後に、建物のデザインも含めて総合的に仕事を請け負えるようになるでしょう。
建築施工管理技士
建築施工管理技士は、国土交通大臣指定機関が実施する国家資格試験に合格することで取得可能です。
1・2級があり、それぞれ第一次検定を合格すると「〇級建築施工管理技士補」、第二次検定を合格すると「〇級建築施工管理技士」となります。1級建築施行管理技士になると、大工だけでなく左官・鉄筋・タイル・レンガ・塗装・防水など各工事の監督ができるようになります。
建築施工管理技士は、特に工務店を開業したい方にとって取得しておくと便利な資格です。
まとめ
大工で独立するにはどうすればよいのか、2つの方法と独立までの流れを解説しました。まずは一人親方として働いて、安定した収入が得られるようになってから工務店の立ち上げを検討するとよいでしょう。
大工として独立するには、以下のステップを踏むのが一般的です。
- 修行を積む
- 開業資金を貯める
- 開業手続きを行う
- 仕事を探す
独立することで、自由な働き方ができたり収入アップが狙えたりするメリットがありますが、収入が安定しなかったり責任が増したりするなど考慮すべき点もあります。
大工として独立する際は、労災保険の特別加入を含めた各種手続きについてもしっかりと理解しうえで、各ステップを慎重に踏むようにしましょう。