電気工事の経験を活かして独立したいと考える方は少なくありません。
- 「開業資金はいくらくらい必要?」
- 「独立するのに資格はいる?」
- 「独立後の年収はどのくらい?」
など数多くの疑問が生じるでしょう。
本記事では、電気工事で独立するための準備を大きく4つのポイントに分けて解説します。また、独立後がイメージできるように会社員との違いもまとめました。独立を検討されている方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
電気工事で独立するための準備
電気工事の経験と技術を積むと、いずれは独立して自由に働きたいと考えるようになるでしょう。独立することで「稼げるようになる」「自由に自分のペースで働けるようになる」など、さまざまなメリットが期待できます。また、周囲の職人が独立している様子を見て、「電気工事士は将来独立するものだ」と考える方もいます。
では、電気工事で独立するにはどのような準備が必要でしょうか。ここでは、電気工事で独立するための準備を、大きく4つに分けて解説します。
第二種電気工事士の資格
電気工事で独立するには、最低でも「第二種電気工事士」の資格が必要です。電気工事は他の建設業とは異なり、スキルや経験の不足が火災事故など災害に直結するため、電気工事士の資格がきちんとチェックされます。
第二種電気工事士の資格取得に実務経験は不要で、試験に合格するか専門学校・職業訓練校などをとおして取得を目指せます。試験は年2回開催され、合格率は筆記試験が50~60%、技能試験は60%台だといわれており、難易度は決して高くありません。
第二種電気資格士の資格取得により、電圧600V以下の電気工事が行えるようになります。具体的には、一般住宅・小規模店舗・事務所などでコンセントの設置・交換やエアコン専用回路増設工事などが行えます。
第二種電気工事士ができる作業は限られていますが、独立するには最低限必要な資格のため、修行中や独立前に取得しておくとよいでしょう。
開業資金の用意
電気工事で独立する準備として、開業資金の用意が挙げられます。
現時点で使用している道具と技術さえあれば、開業資金はそれほど必要ないと考える方もいるようです。しかし、独立後すぐに仕事を得られる保証はないため、ある程度の資金は用意しておいた方がよいでしょう。
開業資金として必要な項目は、以下のとおりです。
- 工具備品
- 車両
- 法定設立費用(法人の場合)
- 約3か月分の給料(従業員を雇う場合)
- 当面の生活費
会社員の場合、工具備品は会社から与えられていましたが、独立後はすべて自分で用意する必要があります。古くなった工具備品の買い替えなども含めて、十分な資金を用意しておきましょう。
また、移動や工具運搬のための車両が必要です。自家用車を併用できれば、コストを大幅に抑えられるでしょう。
従業員を雇う場合の給料や当面の生活費については、独立後の事業が安定するか予想するのは容易でないため、余裕を持った資金の用意が重要です。建設業では入金と支払いのタイミングがずれるケースが多く、利益を出しているにもかかわらず手元に現金が残らないことにならないよう、資金繰りには細心の注意が必要です。
あると役立つその他の資格・許可
電気工事で独立する準備として、以下の資格や許可の取得も検討できます。
- 第一種電気工事士
第二種電気工事士と同様、資格試験取得の条件は特にないため誰でも受験できます。しかし、免状の交付を受けるには3年以上の実務経験が必要です。第一種電気工事士は、ビル・工場・大型店舗などで最大電力500kW未満の電気工事が行えるようになります。 - 認定電気工事従事者
第一種電気工事士合格、または第二種電気工事士免状取得後3年以上の実務経験を有する方は、認定電気工事従事者の交付申請が可能です。認定書の交付を受けることで、最大500kW未満の需要施設のうち、電圧600V以下で使用する電気工作物の工事が行えるようになります。 - 建設業許可
建設業許可は、1件あたり500万円以上の電気工事を行う際に必要な許可です。将来事業を拡大して大規模工事を受注する可能性がある場合は、建設業許可の取得も検討できるでしょう。
電気工事業者の登録手続き
電気工事で独立するにあたり、各都道府県へ電気工事事業者の登録手続きをしなければなりません。
登録の際には、第二種電気工事士または第一種電気工事士の免状取得後、3年以上の電気工事実務実績が必要です。具体的な提出書類や手続きは都道府県ごとに異なるため、居住地の都道府県で確認するとよいでしょう。
東京都の場合の必要書類は、以下のとおりです。
【申請様式】
- 登録申請誓約書
- 主任の誓約書(主任電気工事士が従業員の場合)
- 実務経験証明書(主任電気工事士が第二種電気工事士の場合)
【添付書類および確認書類】
- 主任電気工事士の電気工事士免状
- 主任電気工事士等の身分証明書(主任電気工事士が従業員の場合)
- 認定電気工事従事者認定書(認定書を取得している場合)
- 履歴事項全部証明書(法人の場合)
- 申請者の住民票(個人の場合)
登録の有効期限は5年間で、満了日の30日前から1週間前までに更新手続きを行います。
電気工事で独立するとどうなる?
電気工事で独立すると、会社員のときと比較して働き方や生活が大きく変化します。メリットだけでなく注意点もあるため、事前に確認しておくなら対策を講じられるでしょう。
ここでは、電気工事で独立してからの生活をイメージできるように、会社員との違いを含めて解説します。
年収アップを目指せる
電気工事で独立すると、年収アップを目指せるメリットがあります。
独立後の平均年収は600~800万円ほどで、会社員のときと比較して大幅なアップが期待できるでしょう。事業を拡大して従業員を雇用する方の中には、年収1,000万円を超えるケースもあります。
独立後は直接案件を受けることで、売上を中抜きされることなく全額が報酬として入ってきます。ただし、手元に残るのは経費や税金などを差し引いた額であることを念頭に置きましょう。また、単価や仕事量が報酬に直結し、仕事がなければ当然収入は0になります。
会社員時代は給料日が固定されていましたが、独立後は案件に応じて入金のタイミングが異なる点にも注意が必要です。毎月の収入が安定しないことを踏まえて、資金繰りを上手に管理しなければなりません。
仕事のスケジュールの融通がききやすくなる
電気工事で独立すると、仕事のスケジュールの融通がききやすくなるのもメリットです。
独立後は、会社との指揮命令関係が生じなくなります。労働日や就労時間など、スケジュールは自分で決めます。
例えば、会社員時代は就労規約に基づいて仕事の開始時間と終了時間が指定されていました。しかし、独立後は受注した案件の納期に応じて、自分で労働量を調整できるようになります。
子どもを学校へ送り出してから作業を開始したり、長時間労働する日と短時間労働する日を分けたりもできるでしょう。また、繁忙期に集中して働き、閑散期は休みを多くとることも可能です。
ただし、受注の状況などによっては独立後もスケジュールの都合がつけにくい場合もあります。
事務作業や営業の仕事が発生する
電気工事で独立すると、事務作業や営業の仕事が発生することを忘れてはなりません。
会社員時代は、社内に事務スタッフや営業スタッフがいて、これらの作業に従事してくれました。自分自身は、電気工事に専念できたでしょう。
しかし独立後は、事業にかかわるすべての作業を自分で行わなければなりません。電気工事で独立した方の多くは、営業活動に慣れるのが大変だったと感じているようです。営業は電気工事とは全く異なる仕事で、人脈やコミュニケーション能力を必要とします。黙々と働く職人気質の方にとって、営業は難しいと感じられるかもしれません。
また、見積書や請求書の作成など、事務仕事も自分で行うようになります。パソコン操作が苦手な方は事務作業に時間がかかってしまい、期待していたほど自由な時間が得られていないと感じる場合もあるようです。
営業や事務作業は、事業を円滑に進めるために欠かせない大切な仕事です。アウトソーシングを活用するなど、作業を効率化できる方法を検討しておくとよいでしょう。
【注意】労災保険が適用されなくなる
電気工事で独立すると、労災保険が適用されなくなる点に注意が必要です。
会社員のときは、労災保険は強制加入であるため会社が費用を負担して加入していました。しかし、独立すると労働基準法が定める「労働者」に該当しなくなり、労災保険は適用されません。
労災保険未加入者が仕事中に災害にあってケガや病気をすると、治療費は全額自己負担になります。また、療養中の休業補償もないため、生活が厳しくなると考えられます。
そこで、建設業に従事する個人事業主を対象に任意で加入できる、一人親方労災保険の活用を検討しましょう。一人親方労災保険に加入することで、仕事中のケガや病気の際に、労働者に準じて労災保険の手厚い補償が受けられるようになります。
一人親方労災保険に関するご質問・ご相談は、「一人親方団体労災センター」までお気軽にお問い合わせください。
まとめ
電気工事で独立するのに必要な準備をまとめました。
独立にあたり、最低でも第二種電気工事士の資格取得が必要です。また、電気工事士の取得後3年以上の実務経験を経て、電気工事業者の登録手続きをしなければなりません。さらに、複数の資格取得や開業資金を用意するなど、やるべきことは多岐にわたります。
電気工事で独立すると、年収アップを目指せたり仕事のスケジュールの融通がききやすくなったりするなど、多くのメリットが得られるチャンスがあります。ただし、営業や事務作業を自分で行うことや、労災保険が適用されなくなるなど、デメリットもあるため注意が必要です。
労災保険に関しては、一人親方でも加入できる一人親方労災保険を活用すると安心です。