個人事業主になることを検討されている方の中には、
「個人事業主とはどのような人のことをいうのか?」
「一人親方やフリーランスも個人事業主に該当するのか?」
と疑問に思われている方がいらっしゃるかもしれません。
まずは個人事業主の定義をしっかりと確認し、どのような手続きや届け出が必要なのかを調べておくと安心です。
本記事では、個人事業主になってから必要な手続きや、一人親方を対象とした労災保険の特別加入制度についてご紹介します。
Contents
個人事業主とは?
個人事業主になることを検討されるにあたって、まずは個人事業主がどのようなものなのかを確認しておく必要があります。個人事業主は誰にでもなれるものなのか、フリーランスとの違いや一人親方に関することもあわせてご紹介します。
個人事業主には誰でもなれる?
個人事業主とは、会社を設立せず個人で事業を行っている人のことをいいます。もともと会社勤めをされていた方が独立して個人事業主になるイメージがありますが、実は、学生や主婦・フリーターの方でも届け出をすれば個人事業主になることは可能です。
また、企業などに勤めている方でも、就業規則で副業が認められている場合は個人事業主になっても問題ありません。
時間面や健康面など最低限の自己管理ができて、営業・事務・経理などの業務を行う能力がある方なら、基本的には誰でも個人事業主になれると考えてよいでしょう。
フリーランスとの違い
働き方が多様化してきている今、フリーランスとして活動されている方も増えてきているのが現状です。
フリーランスと個人事業主の違いについては、「開業届を提出したか、していないか」がポイントになります。
また、フリーランスとはあくまでも「働き方」を意味する言葉であり、企業などと雇用契約を結ばずにさまざまな顧客の仕事を請け負う「独立した業務」です。
これに対して個人事業主は税法上で区分されるもので、「働き方」を意味する言葉ではありません。一人で働くだけでなく、会社を設立して従業員を雇う方もいらっしゃいます。
「一人親方」は個人事業主なのか?
労働者を使用せず、特定の業務を常態的に行う方のことを「一人親方」といいます。基本的に一人親方も個人事業主の一種ですが、この2つには明確な違いがあるため、事前に確認しておきましょう。
まず、業種が指定されていない個人事業主に対して、一人親方は建設業や林業・水産業など7種類の業種に限られます。
従業員の雇用についても、個人事業主は特に制限はありませんが、一人親方は「雇用日数が100日未満であること」という決まりがあるのです。もし100日を超えて雇用した場合は一人親方に該当しなくなるため、注意してください。
さらに、労災保険の加入資格についても違いがありますが、これについては後ほど詳しく解説します。
個人事業主になる事前準備
個人事業主になるためには届け出が必要ですが、その前に準備しておかなければならないことがあります。具体的にどのようなことをするのか、一つひとつ確認していきましょう。
クレジットカードを作っておく
会社を退職して個人事業主になることを検討されている場合は、退職する前にクレジットカードを作成しておくことをおすすめします。
プライベート用のクレジットカードを持っている場合であっても、事業用で使用するカードを新たに作成しておくとよいでしょう。プライベートと事業の支払いをわけることで、事業の資金繰りを把握しやすくなります。
クレジットカードの作成については、会社に在籍している状態のほうが審査に有利です。審査では勤続年数や収入が大きなポイントになるため、退職後だと「安定性がない」と判断されてしまう可能性があります。
資金を用意しておく
開業にいくら必要かはケースにより異なりますが、どのようなことにお金がかかるのか確認しておくことが必要です。
まず、店舗やオフィスとして賃貸物件を借りる場合は敷金や礼金・保証料などの初期費用がかかります。リフォームが必要な場合は、その資金も予算に入れておかなければなりません。
そのほか、パソコンなど業務に必要な機器を購入・レンタルする費用や、オフィスに置くデスクやイスなどを購入する費用、通信回線の工事費用などが必要です。
それとは別に、仕入れや必要経費に充てる運転資金を最低でも3か月分は用意しておくと安心でしょう。
営業方法を考えておく
開業後いかに早く安定した仕事ができるようになるかは、営業方法にかかっています。会社に勤めていれば営業の担当者が仕事を取ってきてくれますが、個人事業主になると自分で仕事を見つけなければなりません。
もともとある人脈を活かして紹介してもらうことはもちろん、自ら積極的に営業を行う必要があります。具体的には、電話やメールでアポイントを取る方法のほか、SNSを通じて同業者や関連企業とのつながりを作る方法もおすすめです。
セミナーに参加して新たな人脈を築く方法も検討してみましょう。
自分で営業を成功させる自信がない場合は、営業代行サービスなどを利用するのも一つの手段です。
個人事業主になる手順
個人事業主になるためにはまず何をすればよいのか、手順を確認しておきましょう。開業までスムーズに進められるよう、必要な種類なども早めにチェックしておくことをおすすめします。
税務署に開業届を提出する
個人が事業を始める際には、管轄の税務署に開業届を提出する必要があります。基本的には開業してから1か月以内に開業届を提出することが望ましいとされていますが、提出しなくても罰則はありません。
しかし、確定申告の際に節税効果の高い青色申告を利用する場合は、開業届の提出が必須です。そのほか、オフィスの賃貸契約時や融資の審査時に開業届の控えを提出するよう求められることがあります。
気持ちの区切りをつける意味でも、できれば開業届は提出しておいたほうがよいでしょう。
開業届は税務署で入手するか、国税庁のホームページからダウンロードすることが可能です。
青色申告承認申請書を提出する
確定申告で青色申告を利用するために、開業届と一緒に「青色申告承認申請書」を提出しておきましょう。この書類を提出していなかった場合は自動的に白色申告となるため、注意が必要です。
青色申告は白色申告に比べて提出書類が多く、帳簿への記帳方法も複雑ですが、最大で65万円の控除が受けられたり損失が出た場合に3年間の繰り越しができたりするメリットがあります。また、家族が従業員になっている場合は、家族への給与を経費に計上することが可能です。
手作業での記帳は簿記の知識がないと難しくなっていますが、会計ソフトを使えば比較的簡単に帳簿を作成できます。
屋号を決める
個人事業を始める際には、屋号があったほうが何かと便利です。
屋号とは会社でいう会社名のことで、個人事業主の場合は本名をそのまま使っても問題ないため、決めなければならないわけではありません。しかし、屋号を決めることで事業内容が明確になり、仕事を取りやすくなるメリットもあります。
そのため、屋号を決める際はできるだけ事業内容がわかりやすいものにしたり、活動する地域名などを入れたりするとよいでしょう。
また、インターネットで検索したときにヒットしやすい名前にすることも重要です。似たような名前の企業やお店がすでに存在している場合は、検討し直すことをおすすめします。
個人事業主になってから必要な手続き
個人事業主になってからも、やらなければならない手続きがいろいろとあります。事業を開始してから慌てることのないよう、事前にしっかりと確認しておきましょう。
国民健康保険に加入する
個人事業主になったら、自分で国民健康保険に加入する必要があります。会社を退職して個人事業主になる場合は、社会保険の脱退手続きを行ってから、国民健康保険に加入する手続きをします。
社会保険の場合は家族を扶養に入れることが可能でしたが、国民健康保険は家族それぞれ加入する必要があるため、注意してください。
加入手続きをする役所の窓口には、健康保険の資格喪失証明書をはじめ、マイナンバーを確認できるものや身分証明書を忘れずに持参しましょう。手続きが完了したら、後日、保険証が郵送されてきます。
国民年金に加入する
会社勤めをしているときは厚生年金に加入していますが、個人事業主になると国民年金への切り替えが必要です。役所の窓口に離職票や健康保険喪失証明書など退職日が確認できる書類と身分証明書・年金手帳・印鑑を持参して手続きを行ってください。
厚生年金の資格失効後14日以内に変更手続きを行わなければ、未納期間が発生してしまいます。将来受け取る年金の金額にも影響してしまうため、注意が必要です。
小規模企業共済に加入する
個人事業主には退職金がないため、退職後の生活維持のために小規模企業共済に加入しておくことをおすすめします。
毎月の掛け金は1,000円~7万円まで自由に設定でき、途中で増額したり減額したりすることも可能です。受け取り方法は一括・分割・一括と分割の併用から選択できるため、詳細を確認しておくとよいでしょう。
【一人親方必見】労災保険の特別加入制度をチェックしておくと安心!
労働者の勤務中・通勤途中のケガや病気に対して補償する労災保険は、一人親方のような個人事業主には適用されません。
しかし、個人事業主も労働者と同じように保護されるべきという考えのもと、労災保険の特別加入制度が設けられています。加入すると一般の労働者と同様に自己負担なく治療を受けられたり、治療のための休業に対して休業補償が給付されたりするため、チェックしておくとよいでしょう。
「一人親方団体労災センター 」では、一人親方を対象として労災保険の特別加入制度を提供しています。興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。
まとめ
個人事業主になるために必要な準備や手続きの流れについてご紹介しました。
建設業などで労働者を使用せずに事業を行う一人親方をはじめ、個人事業主になるためには、やらなければならないことがいろいろとあります。
開業後も安心して事業を進められるように、保険や年金の手続きを手順も含めしっかり確認しておきましょう。
また、仕事中のケガについてもきちんとした補償を用意しておかなければ、安心して働けません。この機会にぜひ、一人親方労災保険への加入をご検討ください。