一人親方労災保険への特別加入を検討されるにあたって「一人親方労災保険料は経費にできるのか?」「勘定科目は何に仕訳すればよいのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。
一人親方が労災保険へ加入する際は特別加入制度を利用する必要があるため、経由する特別加入団体に支払う入会費や組合費なども発生します。
それらの費用も含めて、どのような勘定科目として仕訳し、管理すればよいのでしょうか。
本記事では、経費計上できる費用とできない費用について解説するとともに、一人親方が確定申告を行う際の手順などもご紹介しています。
Contents
一人親方の労災保険特別加入とは?
労災保険とは、業務中や通勤中にケガをしたり病気になったりしたときに療養補償や休業補償など、さまざまな補償を受けられる保険です。一人親方として活動されている方は、労災保険に加入できるのでしょうか。
一人親方は特別加入制度を利用すれば労災保険に加入できる
労災保険は、会社などに雇用されていて賃金をもらって働いている労働者が対象となるため、労働者に該当しない一人親方は加入対象になりません。
しかし、特に建設現場などで働いている一人親方は労災事故に遭うリスクが高く、一般的な労働者と同じように保護されるべきとされています。そこで、特別加入制度を利用することで一人親方も労災保険に加入できるようになっています。
一人親方労災保険に特別加入した場合は、一般的な労働者と同程度の補償を受けられるようになるため、安心して現場に入れるようになるでしょう。
一人親方が労災保険に特別加入する方法
一人親方が労災保険に特別加入するには、特別加入団体への所属が必要です。
特別加入団体とは都道府県労働局長の承認を受けた団体で、一人親方の労災保険の手続きなどに対応しています。
まずは、自分が住んでいる地域で入会できる団体の中から、条件に合ったところを探すことから始めましょう。
団体が決まったら直接申し込みが必要なため、申し込み方法を団体のホームページで確認します。ホームページから申込申請書をダウンロードして郵送またはFAXで送るか、インターネットでの申し込みとなる団体が多いでしょう。
一人親方が労災保険に特別加入する際にかかる費用
一人親方が労災保険に特別加入した場合にかかる費用について、内訳ごとに詳しくご紹介します。
労災保険料
労災保険料は全国一律であるため、入会した特別加入団体による違いはありません。
一般的な労働者は収入によって労災保険料が算定されますが、決まった給料がない一人親方は給付基礎日額を設定して、そこから保険料が決まります。
給付基礎日額は3,500~25,000円までの16段階があり、特別加入団体に入会する際に自分で選択します。
給付基礎日額が高いほど補償内容は手厚くなりますが、その分保険料も高額になるため、支払いが負担になりすぎないようバランスのよい給付基礎日額を選ぶことが大切です。
入会費
特別加入団体に入会する際、団体によっては入会費がかかります。
基本的に一度払えば以後発生することはありませんが、労災保険加入期間が過ぎてから再び入会する場合は、再度同じ金額がかかることもあります。
入会費は団体によって差が大きく、1,000円前後の団体もあれば5,000~10,000円の団体もあるため、事前によく確認しましょう。また、団体によっては入会費が無料というところもあります。
組合費
組合費は団体の運営にかかる事務手数料として支払うもので、特別加入団体に入会している間は発生します。
組合費も団体によって金額は異なりますが、月500円前後、年払いにすると6,000円前後という団体が多くなっています。月払いと年払いを選べるようになっている団体も多いため、確認しておくとよいでしょう。
その他諸経費
団体によっては、入会後に以下のような費用が発生することがあります。
- 労災事故発生時の手続きにかかる手数料
- 更新手数料
- 組合員証紛失時の再発行手数料
上記の費用は団体によって金額が異なります。
入会費や組合費が安く設定されていても、諸経費がかさんで割高になってしまうケースもあるため、注意が必要です。
一人親方労災保険は経費計上できるのか?
一人親方労災保険への特別加入を検討されるにあたって「保険料は経費計上できるのか?」と疑問に思われる方もいらっしゃるでしょう。経費計上できる費用とできない費用、区分される勘定科目も含めて解説します。
労災保険料は経費計上できない
一般的な労災保険は会社が従業員のために支払うものなので保険料の経費計上が可能です。しかし、一人親方の場合は自分の保険料として支払うものなので経費計上できません。
一人親方の労災保険料は「事業主貸」という個人事業主のみが利用できる勘定科目で管理します。
「事業主貸」は、事業の収入から事業と関係のない目的のために支払ったお金が該当します。「経費」ではなく、プライベートな支払いとして仕訳する必要があるため、間違えないようにしましょう。
団体に支払う費用は経費計上できる
一人親方労災保険にかかる費用のすべてを経費計上できないわけではありません。特別加入団体に支払う入会費や組合費・事務手数料などは経費として計上することが可能です。
ただし、こうした費用を経費計上するためには勘定科目を使用して仕訳する必要があるため、確認しておきましょう。
使用する勘定科目は明確に決められていませんが「諸会費」としてまとめておくと、見返したときに分かりやすくなります。
労災保険料は経費には計上できないが社会保険料は控除される
一人親方労災保険料を経費に計上することはできませんが、社会保険料控除の対象にはなります。
控除を受けるためには確定申告の際に支払った保険料の金額を記載する必要があるため、忘れずに手続きを行いましょう。
ただし、経費として計上できる入会費や組合費・事務手数料などは社会保険料控除の対象にならないので注意が必要です。
一人親方が経費計上できるものとは?
労災保険にかかる費用以外に、一人親方が経費として計上できるのはどのようなものがあるのかを確認しておきましょう。
そもそも経費とは「事業に使用したもの」であるため、事業としての使用を証明できることが必要です。
例えば、仕事用に借りている倉庫や駐車場の賃貸料や現場に行くまでの交通費・仕事用に契約している携帯電話の通信費などは、経費計上が可能です。
プライベートの旅行にかかった費用や、友人への個人的なプレゼントを購入した費用などは経費計上できないため、注意しなければなりません。
一人親方の確定申告のやり方
一人親方は自分で確定申告を行う必要があります。スムーズに申告できるよう、手順を詳しくまとめました。
必要書類を準備する
確定申告ではさまざまな書類の提出が必要となるため、まずは書類を準備することから始めましょう。
確定申告書は国税庁のホームページからダウンロードできます。そのほか、請求書など売上金額がわかる書類や、領収書など支出が分かる書類、各種控除証明書が必要です。
書類以外にも、マイナンバーや会計帳簿・金融機関の口座情報などを用意しておきましょう。
年間収支を帳簿にまとめる
1年の収支を正確に把握するために、帳簿の整理を行います。請求書や領収書をもとにして作成する必要があるため、捨てずに取っておきましょう。
1年分をまとめて整理しようとすると時間がかかりすぎるので、なるべくこまめに整理しておくことをおすすめします。また、会計ソフトなどを用いると手間を軽減できます。
所得金額・控除金額・所得税額を算出する
1年間にどれだけの所得があったかを計算していきましょう。
一人親方の場合は「事業所得」として計算する必要があるため、総収入金額から必要経費を差し引いて求めます。
続いて、労災保険料を含む社会保険料・医療費・寄附金などの控除金額を計算していきましょう。社会保険料は支払った保険料の全額が控除対象となり、医療費は支払いが10万円を超える場合に控除が適用されます。
さらに、税金の納税額を算出するために所得税額を計算します。
まずは所得金額から各種控除を差し引いて課税所得金額を出し、所得税の税額をかけて税額控除を引くと、所得税額を算出可能です。
確定申告書を作成して税務署に提出する
税務署に提出する確定申告書を作成します。
手書きの場合は国税庁のホームページからダウンロードした申告書に必要事項を記入していきましょう。手書き以外の場合は、国税庁が提供する「確定申告書等作成コーナー」を利用するか、会計ソフトを使う方法があります。
確定申告書を作成したら、必要書類とともに税務署へ提出します。
確定申告書等作成コーナーを利用した場合はe-Taxでの提出が可能なため、簡単に済ませたい方におすすめです。ほかにも、税務署に直接持ち込むか、郵送により提出できます。
まとめ
一人親方労災保険料は経費計上が可能なのか、どの勘定科目として管理すればよいのかということについて、詳しくご紹介しました。
一人親方が労災保険に加入するには特別加入団体を経由する必要があるため、保険料以外にも団体に支払う入会費や組合費などがかかることがあります。
しかし、経費として計上できるのは入会費や組合費などのみで、保険料は計上できません。
その分、保険料は社会保険料控除の対象となるため、節税効果は十分期待できるでしょう。
一人親方の労災保険加入について検討されているなら、一人親方団体労災センター へご相談ください。組合費は月500円から加入でき、最短翌日に加入できるため、興味のある方はご確認ください。