一人親方が業務中や通勤中にケガをしたり病気になったりした場合、基本的に元請がその責任を負うことはありません。
元請が加入している労災保険も一人親方には適用されないため、安心して働くためには特別加入制度を利用して労災保険に加入した方がよいでしょう。
一人親方が労災保険に未加入だと、万が一のときに補償を受けられないだけでなく、現場に入れない事態も起こり得ます。
特別加入の条件や方法なども確認しておき、早めに加入を検討することが重要です。
本記事では、特別加入団体選びのポイントについてもご紹介しているため、ぜひ参考にしてください。
Contents
一人親方と元請の関係性とは?
一人親方とは、労働者を雇用せず、個人で仕事を請け負っている方のことをいいます。
元請会社から仕事を請け負うことが多いため、その関係性について確認しておくことが大切です。
一人親方が労災に遭ったときの元請責任は?
元請から請け負った現場で一人親方が労災事故に遭った場合など、元請には責任が生じるのでしょうか。
基本的には、一人親方が労災事故などに遭っても元請が責任を負うことはないと考えられます。
ただし、労働契約法第5条 では、企業が配慮すべき安全配慮義務について定められています。
これは、企業が雇用する従業員に対して安全で働きやすい環境を作り出すために配慮する義務のことであり、安全配慮義務違反により従業員がケガをした場合などは、損害賠償が発生する可能性もあります。
また、従業員だけでなく一人親方に対しても安全配慮義務違反による損害賠償が認められたケースがあるようです。
しかし、裁判を起こす必要があること、裁判を起こしたとしても判決によっては損害賠償が認められない場合もあることを考えると、必ず補償されるわけではないでしょう。
元請の労災保険は使えるのか?
従業員を一人でも雇用している事業者には、労災保険への加入が義務づけられています。
そのため、元請は労災保険に加入しており、元請に直接雇用されている従業員が労災に遭った場合は労災保険が適用されます。
しかし、元請から仕事を請け負っている一人親方とは仕事の契約関係があるだけで雇用関係はないため、元請が加入している労災保険は適用されません。
労災への備えは自分自身で行っておく必要があるのです。
もし現場でケガをしたり病気になったりした場合は、元請への報告は必要ですが、労災保険の申告は自分が加入している団体や組合へ行うことになります。
一人親方が労災保険に加入していない場合はどうなる?
一人親方が労災保険に加入していないと、どのようなことが起こるのでしょうか。
未加入のまま仕事をし続けるリスクについてご紹介します。
労災発生時に補償が受けられない
労災保険に未加入だと、万が一、現場や通勤中にケガをしたり病気になったりした場合、一切の補償を受けられません。
労災保険に加入した場合に受けられる補償内容は以下のようになっています。
- 療養補償:ケガや病気に対する治療費として支給される
- 休業補償:ケガや病気で働けなくなったときに支給される
- 障害補償:障害が残ってしまった場合に支給される
- 傷病補償:労災から1年半経過してもケガや病気が治っていない場合に支給される
- 介護補償:介護が必要になった場合に支給される
- 遺族補償:一人親方が死亡した場合に遺族に支給される
- 葬祭費:葬儀を行う際に支給される
これらの補償が受けられないと、治療が必要になったときや仕事を休まなければならなくなったときなど、自己負担で何とかしなければならなくなってしまいます。
現場に入れないこともある
労災保険に未加入の一人親方を現場に入れることは安全配慮義務違反に該当するため、契約したがらない元請も少なくありません。
たとえば、大手ゼネコンの工事ではその現場で働くすべての人の労災保険番号を記入する必要がある安全書類の提出が必要です。
労災保険に加入していないと労災保険番号が発行されていないため、現場に入ることはできません。
そうなると、仕事のチャンスを逃してしまうことになるため、一人親方にとって大きな痛手となるでしょう。
一人親方は労災保険に加入できるのか?
「労働者」に該当しない一人親方が労災保険に加入するにはどうすればよいのか、加入方法とともにご紹介します。
特別加入する必要がある
一人親方は「特別加入制度」を利用することで労災保険への加入が可能です。
特別加入制度は国が特別に労災保険への加入を認めている制度で、任意での加入となります。
特別加入制度を利用できるのは「中小事業主等」「一人親方等」「特定作業従事者」「海外派遣者」の4種類で、一人親方の場合は以下のようなものが加入対象となります。
- 個人で仕事を請け負っている
- 労働者を使用する日数が1年間で100日未満である
- 会社に所属していても請負で仕事をしている
- 法人の役員のみで仕事をしている
労災保険への特別加入を検討されている場合は、まずは自分が加入対象に当てはまるか確認しましょう。
加入方法は?
一人親方労災保険へ特別加入するには、労働局から承認を受けた特別加入団体を経由する必要があります。
まずは、自分が住んでいる地域から加入できる特別加入団体の中から、利用しやすそうな団体を探しましょう。
次に、給付基礎日額を設定します。
給付基礎日額とは労災保険料の金額を決める基となるものです。
一般の労働者は給料に応じて保険料が算出されますが、決まった給料がない一人親方の場合は、自分で設定する必要があります。
給付基礎日額は3,500~25,000円まで16段階あり、高いほど保険料は高額に、補償内容は手厚くなります。
支払い負担のバランスを考えたうえで、自分に合った給仕基礎日額を設定しましょう。
最後に身分証明書などの必要書類をそろえて、団体ごとに決められた方法で申し込みを行います。
一人親方労災保険の特別加入団体を選ぶポイント
一人親方労災保険の特別加入団体は、団体ごとにさまざまな特徴があります。
団体を選ぶ際にチェックすべきポイントをまとめました。
保険料以外の費用はいくらかかるか
労災保険料の金額は全国一律であり、どの特別加入団体を選んでも同じです。
しかし、入会費や組合費などの費用は団体ごとに異なるため、事前に確認しておきましょう。
入会費が無料の団体や、組合費が安く設定されている団体もあります。
また、入会費や組合費以外にも、労災事故発生時の手続き費用や更新費用などの追加費用が発生する可能性があるため、注意が必要です。
入会費や組合費が安くても、結果的に負担が大きくなってしまうおそれがあります。
グループで申し込むと団体割引が適用される団体もあるので、該当する場合はチェックしておくとよいでしょう。
申込から加入までの時間はどのくらいか
申込手続きをしてから実際に労災保険に加入できるまで、どのくらいの時間がかかるか確認しておきましょう。
最短で翌日には加入可能な団体もあります。
また、加入できるのは翌日でも、申し込み当日に加入申請書を発行してくれる団体もあるため、急いでいる場合も安心です。
元請から急な仕事の依頼が入り、すぐに労災保険への特別加入が必要になった場合でも間に合う可能性があるでしょう。
ただし、翌日加入や加入証明書の即日発行が可能でも、追加費用が発生する場合もあるため、事前の確認が必要です。
支払い方法は選択できるか
保険料や組合費などの支払い方法も団体によって異なります。
銀行振込のほか、口座引き落としやクレジットカード払い・コンビニ払いなどに対応している団体も多くなっています。
複数の支払い方法から選べるようになっている団体もあるため、なるべく選択肢が多いところを選ぶとよいでしょう。
また、支払い回数についても、毎月払いや年払いを選べるようになっているところもあります。
自分にとって都合のよい支払い方ができる団体を選ぶことをおすすめします。
安心して加入できるか
安心感で団体を選ぶことも大切です。
例えば、労災事故発生時にスムーズな対応ができるよう、社会保険労務士が常駐している団体を選ぶことをおすすめします。
専門家である社会保険労務士がいれば、労災申請用の書類の作成を代行してくれる可能性もあるでしょう。
また、政治団体や宗教団体とのつながりがない団体かどうかも確認が必要です。
そのような団体と関係のある団体だと、選挙活動の手伝いや集会への参加などを求められることがあります。
もちろん活動に興味があれば問題ありませんが、そうでない場合は本業以外の活動が忙しくなり、負担に感じることになる可能性が高いでしょう。
まとめ
一人親方が労災に遭ったときの元請責任について詳しくご紹介しました。
現場で一人親方がケガをしたり病気になったりしたとき、安全配慮義務違反がなければ元請に責任を問うことはできません。
また、元請が加入している労災保険も雇用関係のない一人親方には適用されないため、一人親方は大きなリスクを抱えながら仕事をすることになります。
そのため、一人親方労災保険に特別加入することで、リスクに備えることが大切です。
労災保険に未加入だと万が一のときに補償を受けられないだけでなく、現場に入ることも認められない可能性があるため、早めに検討しましょう。
一人親方が労災保険に特別加入するには、特別加入団体を経由して手続きを行う必要があります。
一人親方団体労災センター は最短翌日より加入でき、社会保険労務士がいる安心の団体です。
労災保険への特別加入を検討されている方は、ぜひご相談ください。