工事現場などで働く一人親方にとって、万が一の事故やトラブルが発生したときのためにしっかりと備えておくことが大切です。
「工事保険」とは、工事現場で起こりうるさまざまな事故に対応できる保険のことをいいます。
工事保険には「ものの損害に備える保険」「人に備える保険」「第三者の損害に備える保険」があるため、それぞれ保険の種類や補償内容・補償範囲などを確認しておきましょう。
また、一人親方が加入しておくと安心なその他の保険についてもご紹介しているので、ぜひ参考にしてください。
Contents
工事保険とは?
工事現場では、作業員の労災事故をはじめ、通行人にケガを負わせるような事故やトラブルが発生する可能性もあります。
そのほかにも「借りているクレーン車を誤って壊してしまった」「電気工事中に漏電して火災を発生させてしまった」など、多額の賠償金を支払わなければならない事態が起こることもあるかもしれません。
工事現場で発生する可能性のあるそのような事故に備えて、任意で加入する保険が「工事保険」です。
建設業はほかの業種に比べて特に危険度の高い事故が起こりやすいため、万が一のときのために工事保険に加入し、安心して働けるようにしておくことをおすすめします。
工事保険の種類
「工事保険」は、工事現場で発生する可能性のあるさまざまな事故に備えて加入できる保険の総称です。
大きく分けて「ものの損害に備える保険」「人に備える保険」「第三者の損害に備える保険」の3種類があるため、それぞれについて詳しく確認しておきましょう。
ものの損害に備える保険
工事現場にある「もの」の損害に備えるための保険には「建設工事保険」「組立保険」「土木工事保険」の3種類があります。
建設工事保険
建設工事保険とは、ものや設備などへの損害に備えるための補償です。
新築・増改築工事のほか、配管工事や電気工事などの設備工事も対象となります。
補償範囲としては「損壊・破損した部分を元の状態に戻すためにかかる費用」が基本であり、工事の請負額を補償の上限額に設定している商品が多くなっています。
資材の盗難や放火による火災なども対象になりますが、天災による被害については保険金が支払われるかどうか判断が難しい場合もあるようです。
組立保険
組立保険とは、機械や設備などを組み立てる際に事故が発生し、建物以外の機材や設備などが損害を受けた場合に補償を受けられる保険です。
具体的には、火災や爆発事故・突風や落雷などの自然災害・施工ミスによる事故・盗難などが起きたときに保険金を受け取れます。
また、損害額そのものだけでなく、損害の拡大を防ぐためにかかった費用や、事故が発生する前の状態に戻すための復旧費なども補償されるため、加入しておくことで大きな安心を得られるでしょう。
土木工事保険
土木工事の際に工事の対象物や資材などが損害を受けた際に補償を受けられるのが「土木工事保険」です。
対象となる工事には、土地の造成工事や道路・トンネルの敷設工事、河川・ダムの整備工事などが挙げられます。
現場事務所や宿舎などのプレハブ建物・工事用資材や仮設材なども補償の対象となります。
建物の建設がメインとなる工事では土木工事保険ではなく建設工事保険の対象となるため、注意が必要です。
人に備える保険
従業員や下請業者などの人に備える保険には「使用者賠償責任保険」や「政府労災保険」「労災上乗せ保険」などがあります。
使用者賠償責任保険
従業員が業務上の事故に遭い、使用者側に損害賠償責任が発生する可能性もあるでしょう。
そのような場合に備えるのが、使用者賠償責任保険です。
従業員が労災認定を受けた場合は労災保険からの給付金が支払われますが、それだけでは足りない部分を使用者賠償責任保険で補えます。
また、裁判になった場合の訴訟費用や和解金、慰謝料、示談金、弁護士への相談費用なども支払いの対象になるため、必要性の高い保険といえるでしょう。
政府労災保険
政府労災保険とは、労働基準法により事業主に義務づけられている公的な労災保険のことをいいます。
労働者が業務中、もしくは通勤中にケガをしたり病気になったりした場合、必要な補償を受けられる保険です。
労災保険で補償される内容には、次のようなものがあります。どのようなときに補償を受けられるのかも同時に確認しておきましょう。
- 療養補償:医療機関で治療費や薬代などがかかったとき
- 休業補償:労災が原因で仕事を休まなければならなくなったとき
- 障害補償:労災により後遺症が残った場合
- 介護補償:労災により介護が必要になった場合
- 遺族補償:労災により死亡した場合
労災上乗せ保険
労災上乗せ保険とは、労災保険の補償の上乗せを目的として任意で加入できる保険です。
また、労災保険では対象にならない部分も補えるため、より補償が手厚くなり、安心して仕事ができるようになります。
「労働災害総合保険」「任意労災保険」「業務災害補償保険」など、保険会社によって名称が異なるため、確認が必要です。
労災上乗せ保険には、治療費などを政府労災保険に上乗せする「法定外補償保険」と、労働者からの損害賠償請求に備える「使用者賠償責任保険」の2種類があります。
第三者の損害に備える保険
ほかの人のものを壊したときや、ケガをさせてしまったときなどに備える保険には「請負業者賠償責任保険」や「生産物賠償責任保険(PL保険)」などがあります。
請負業者賠償責任保険
第三者に損害を与えた場合に、会社が被る損害を補償してくれるのが「請負業者賠償責任保険」です。
例えば、工事中に工具を落として通行人にケガをさせた場合や、工事中に近くの建物を壊した場合などに補償を受けられます。
このようなケースでは多額の賠償金が発生する可能性があるため、請負業者賠償責任保険に加入していればすぐに支払うことが可能です。
工事遅延損害補償特約や借用財物損壊補償特約などの特約も追加できるので、補償範囲をさらに広げたいときはチェックしておくとよいでしょう。
生産物賠償責任保険(PL保険)
生産物賠償責任保険(PL保険)とは、工事業者が行った工事が原因で他人や他人のものに損害を与えた場合に補償を受けられる保険です。
損害賠償金のほか、訴訟費用や弁護士報酬、損害防止費用、事故発生時の応急手当費用などに対して保険金が支払われます。
この保険は引き渡し後に発生した事故を補償するものであり、作業中に生じた事故は対象になりません。
作業中の事故については請負業者賠償責任保険などで補償されるため、確認しておきましょう。
一人親方は工事保険に加入すべき?
工事現場ではさまざまな事故が発生する可能性があります。
誰が現場の責任者だとしても、負わなければならない責任の大きさは同じです。
一人親方の場合は事故が起きた責任をすべて自分で負わなければならず、その負担は非常に大きなものになると考えられます。
例えば、多額の賠償金を支払わなければならなくなったときの負担も相当なものになる可能性があるでしょう。
そのため、万が一のときに備えて、一人親方も工事保険に加入しておいたほうが安心です。
また、元請によっては現場に入るために工事保険への加入を義務づけているところもあるため、一人親方こそ早めに加入を検討しておく必要があります。
一人親方が加入すべきその他の保険は?
一人親方が安心して働けるように、加入しておいたほうがよいその他の保険についてご紹介します。
一人親方労災保険
労災保険は「労働者」を対象とした保険なので、会社などに雇用されているわけではない一人親方には適用されません。
しかし、工事現場で働く一人親方には一般の労働者と同様のリスクがあるため、同じように保護されることが望ましいでしょう。
そこで、特別加入制度を利用することで、一人親方も労災保険に加入できることになっています。
加入すると、療養に必要な費用や休業したときの補償、後遺症が残ったときの補償、死亡したときの遺族に対する補償などを受けられます。
工事保険は「もの」「使用者」「第三者」に対する保険であるのに対し、一人親方労災保険は「自分」に対する保険なので、あわせて加入しておくとさらに安心です。
加入するには労働局の承認を受けた特別加入団体を経由しなければならないため、まずは自分の希望条件に合った団体を探すことから始めましょう。
組合費や入会費の金額、加入までにかかる時間など、団体ごとに特徴の違いがあります。
生命保険
一人親方が加入しておくと安心な民間保険の一つが、生命保険です。
生命保険に加入していれば本人が亡くなったときに家族が保険金を受け取れるため、しっかりと備えておいたほうがよいでしょう。
死亡保障の金額については、残された家族が生活するのに困らないようにしておくことが大切です。
特に、小さな子供がいる家庭は、学費も含め子供が大人になるまでに必要な費用を計算したうえで金額を決めることをおすすめします。
医療保険
一人親方が任意で加入すべき保険には、医療保険もあります。
医療保険はけがや病気で入院や手術をした際に受けられる保険なので、医療機関にかかった際の自己負担を抑えられます。
特約の種類も豊富で、三大疾病や認知症・死亡時の保障などもあるため、必要に応じて備えておくとよいでしょう。
生命保険は家族のための保険ですが、医療保険は自分自身のケガや病気に備える保険なので、安心して働けるようにするためにも加入を検討しましょう。
まとめ
工事現場などで発生するおそれのある事故に備えて加入できる保険が、工事保険です。
工事保険には「ものの損害に備える保険」「人に備える保険」「第三者の損害に備える保険」の3種類があり、それぞれさまざまな保険が用意されています。
一人親方は万が一の事故が起きた際にすべて自分で責任を負わなければならないため、補償内容や補償範囲などをチェックしたうえで、必要性が高いと思われる工事保険に加入しておくとよいでしょう。
本記事では、一人親方が加入すべきその他の保険についてもご紹介しています。
安心して働けるよう備えておきたい方は、ぜひ参考にしてください。