一人親方が健康保険に加入しようとする際は、国民健康保険や建設業国民保険組合など、さまざまな選択肢があります。
しかし、健康保険にはそれぞれ特徴があるため、どれを選べばよいのか疑問を抱いている方もいらっしゃるでしょう。
また、独立したばかりの一人親方においては、業務にともなうけがや病気に対する労災保険への加入も検討する必要があります。
そこで本記事では、一人親方が健康保険へ加入する方法やそれとあわせて加入を検討したい制度などを解説します。
健康保険への加入を検討している方、独立したばかりで労災保険に加入していない方は、ぜひご一読ください。
Contents
健康保険とは
健康保険とは、万が一の事態が発生した際に保険給付を受給できる公的医療保険制度のことです。
たとえば、体調を崩して医療機関を受診する場合、健康保険に加入していないと医療費を全額負担しなければなりません。
健康保険に加入していれば、医療費の負担は3割に軽減されます。(※年齢や収入により異なる)
保険給付を受給するためには、健康保険へ加入して保険料を納める必要があります。
一定の保険料を支払うことで、医療機関を受診した際にかかる費用を軽減できる仕組みです。
なお、一人親方は、社会保険に加入できません。
社会保険の加入条件は、企業に雇用されている従業員であることが前提だからです。
どの企業にも属さず働く一人親方は、国民健康保険へ加入するのが一般的です。
一人親方が健康保険へ加入する4つの方法
一人親方が健康保険へ加入する4つの方法は、以下のとおりです。
- 国民健康保険へ加入する
- 建設業国民保険組合へ加入する
- 任意継続で加入する
- 扶養家族として健康保険へ加入する
それぞれ解説します。
①国民健康保険へ加入する
国民健康保険とは、被用者保険やその他の医療保険に加入していない者、もしくは生活保護非受給者を対象とした健康保険です。
国民健康保険へ加入する主なメリットは、所得に応じて保険料が設定されることです。
また、高額療養費制度により、上限を超えて高額な医療費を支払う場合でも超過分は支給されます。
一方、業務が原因となる病気やけがにおいては、給付の対象外になるため注意が必要です。
国民健康保険へ加入する方法
国民健康保険へ加入する際は、お住まいの市区町村の窓口へ必要書類を持参します。
窓口へ持参する書類は、以下のとおり状況に応じて異なります。
状況 | 必要書類 |
転入したとき | 保険証 |
健康保険をやめたとき | 職場の健康保険をやめた証明書 |
職場の健康保険の扶養家族でなくなったとき | |
子どもが生まれたとき |
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一人親方が国民健康保険加入する際は、勤めていた企業や加入していた健康保険組合に「健康保険資格喪失証明」を作成してもらい、持参する必要があります。
また、原則として、マイナンバーカードも必要です。
マイナンバーカードを持っていない場合は、通知カードと運転免許証を持参します。
②建設業国民保険組合へ加入する
建設業国民保険組合とは、建設工事業に携わっている個人事業主もしくは一人親方を対象とした健康保険のことです。
建設業国民保険組合へ加入するメリットは、所得に関わらず保険料が一定であることです。
また、傷病手当金や葬祭費などの給付も充実しています。
ただし、家族が増えるほど保険料は加算されるため、世帯によっては国民健康保険より保険料が高くなる点に注意しましょう。
例として、ある組合では組合員の年齢が30~34歳の場合に支払う保険料は1万8,000円ですが、家族が2人増えると保険料は2万8,600円 に上がります。
ご自身の家族構成や所得に応じて、適切な健康保険を選択しましょう。
建設業国民健康組合へ加入する方法
建設業国民保険組合へ加入するためには、国民健康保険組合の支部へ必要書類等を持参します。
加入時に必要なものは以下のとおりです。
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※出典:建設業国民保険組合 加入方法
建設業国民保険組合によっては、必要書類が異なる場合もあります。
詳細は、加入する建設業国民保険組合へお問い合わせください。
③任意継続で加入する
任意継続とは、一定の条件を満たす場合に健康保険に継続加入できる制度のことです。
たとえば、退職および転職にともない被保険者資格を喪失した場合でも、同様の健康保険給付を2年間受けられます。
任意継続で加入するメリットは、加入している健康保険組合独自の給付を受けられることです。
退職後に一人親方として独立するケースでは、次の健康保険へ加入するまでのつなぎとしても活用できるでしょう。
一方で、これまで企業が負担していた分の保険料を、ご自身で負担する必要があります。
これまで支払っていた保険料が2倍になることで、負担に感じる場合もあるでしょう。
国民健康保険と比較して、保険料が安くなるほうを選ぶのが得策です。
任意継続で加入する方法
任意継続で加入する方法は「任意継続被保険者資格取得申出書」に必要事項を記入して、継続加入する保険組合へ提出します。
「任意継続被保険者資格取得申出書」は、継続加入する保険組合でもらえる場合が大半です。
家族を扶養に入れる場合は「健康保険被扶養者届」や「被扶養者認定に係る誓約書兼認定調書」なども必要になります。
④扶養家族として健康保険へ加入する
扶養家族として健康保険へ加入するとは、家族が加入している健康保険へ扶養家族として加入することです。
扶養家族として健康保険に加入する利点は、保険料の支払いが免除されることです。
被保険者の保険料が増えることもないため、家族への負担も軽減されます。
ただし、扶養家族として健康保険へ加入する場合は、年収を103万円以下に抑える必要があります。
独立したばかりで収入が低い場合は、有効な選択肢といえるでしょう。
扶養家族として加入する方法
扶養家族として健康保険へ加入する場合は、健康保険被保険者(異動)届を提出します。
あわせて、被扶養者の戸籍謄本および収入を証明できる書類も必要です。
これらの書類は、年金事務所もしくは事務センターへ提出します。
なお、郵送や電子申請でも可能です。
一人親方の健康保険料を安く抑える方法
一人親方の健康保険料を安く抑える方法は、以下のとおりです。
- 免除・減免制度を利用する
- 社会保険料控除を利用する
それぞれ解説します。
免除・減免制度を利用する
健康保険料を安く抑えるためには、免除・減免制度を利用します。
たとえば、千葉県市川市では、世帯の総所得金額の合計が一定基準額以下である場合は、均等割額および平等割額が7割・5割・2割に軽減される仕組みです。
仮に、前年度の合計所得が50万円であった場合は、均等割額と平等割額が7割軽減されます。
なお、免除・減免制度を受けるには、お住まいの市区町村の窓口で取得を申請する必要があります。
詳細は、管轄の市区町村へお問い合わせください。
社会保険料控除を利用する
社会保険料控除とは、その年に支払った社会保険料を取得から全額差し引ける制度です。
例として、1年間の所得が500万円であった場合は、50万円の税金を支払う必要があります。
社会保険控除を利用すれば、50万円を所得の500万円から控除できる仕組みです。
そのため、500万円から50万円を控除した450万円に対して税金を支払えばよいことになり、税金の負担を軽減できます。
社会保険料控除を利用するためには、適用を受ける年の確定申告書に適用証明書を添付したうえで、保険料の金額が証明できる書類を提出します。
※出典:国税庁 社会保険料控除とは
健康保険以外にも一人親方が加入しておきたい制度
健康保険以外にも、一人親方が加入しておきたい制度は以下のとおりです。
- 国民年金
- その他の年金制度
- 労災保険
それぞれ解説します。
国民年金
一人親方は、厚生年金に加入できないため、国民年金に加入する義務があります。
国民年金へ加入することで、老後の保証・障害時や死亡時の保証を受け取れる仕組みです。
一人親方にとっては、老後の生活を支える重要な制度になります。
国民年金へ加入する際は、以下いずれかの書類を管轄の市区町村もしくは町村役場へ提出します。
- 基礎年金番号通知書
- 年金手帳等の基礎年金番号を証明できる書類
※出典:日本年金機構 国民年金保険料
その他の年金制度
国民年金だけでは、将来受け取れる年金は少なくなる可能性があります。
そのため、ご自身で年金制度を活用して、将来もらえる年金を増やすことが重要になります。
一人親方が加入できる年金制度でおすすめなのは、iDeCoと国民年金基金です。
項目 | iDeCo | 国民年金基金 |
掛金 | 月5,000円から1,000円単位で自由に設定できる | 加入時の年齢やプランによって異なる |
種類 | 確定拠出年金 | 確定給付年金 |
運用指示 | 必要 | 不要 |
掛金の税制 | 全額小規模企業共済等掛金控除 | 全額社会保険料控除 |
年金給付受取方法 | 一括受取/基本有期年金 | 基本終身年金 |
年金受取開始時期 | 60~75歳 | 原則65歳(プランによっては60歳) |
国民年金基金は、掛金によって受け取れる金額が決まっているため、安定した年金を長期的に受け取りたい方におすすめです。
iDeCoは、運用次第で多くの年金を受け取れます。
両者は併用可能ですが、掛金の合計は6万8,000円までとなっています。
将来の資金を確保するために、年金制度への加入も検討しましょう。
労災保険
健康保険以外に労災保険へも加入しておくとよいでしょう。
労災保険に加入すれば、業務が原因となるけがや病気などにかかる医療費の負担が軽減されます。
また、けがや病気により仕事ができなくなった場合も、休業補償を受けられる仕組みです。
ただし、一人親方の場合は、特別加入団体で加入手続きをする必要があります。
まとめ
一人親方は健康保険以外にも労災保険へ加入しよう
一人親方が健康保険へ加入しようとする際は、国民健康保険や建設業国民保険組合など、さまざまな選択肢があります。
これらの健康保険においては、業務中に負ったけがや病気に関する給付は対象外です。
そのため、健康保険とセットで労災保険へ特別加入することを検討しましょう。
「一人親方団体労災センター 」では、一人親方を対象として労災保険の特別加入制度を提供しています。
弊社の労災保険であれば、労災保険料と月々500円の組合費のみで加入できます。
お急ぎで加入を希望される場合は、費用の振り込み確認後、最短翌日から加入可能です。
労災保険への加入を検討している方は、お気軽にお問い合わせください。