一人親方は健康保険や年金保険・労災保険などに加入していないと現場に入れないことがあります。
特に、労災保険は労働者を対象とした保険なので、一人親方が加入するためには特別加入制度を利用することが必要です。
本記事では、一人親方労災保険に特別加入する方法やメリット・事前に必要なことなども詳しくご紹介します。
一人親方として活動されていて、現場に入れないことを心配されている方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
一人親方は社会保険に未加入だと現場に入れない
一人親方として働いている場合、元請会社からの要請で現場に入ることが多いでしょう。
しかし、社会保険に未加入だと現場に入れない可能性があります。
国土交通省の「社会保険の加入に関する下請指導ガイドライン」 でも、元請企業が下請け先に対して社会保険へ加入することを推奨しているため、確認しておくとよいでしょう。
一人親方が加入すべき社会保険には、次の3つがあります。
健康保険
健康保険とは、病気やケガなどにより医療機関にかかる必要がある際、医療費の自己負担が1~3割で済むようになる保険のことをいいます。
その他にも、健康保険に加入していると、出産手当や傷病手当を受給することが可能です。
日本には「国民皆保険制度」があり、必ず健康保険に加入しなければなりません。
一人親方の場合は、会社員や公務員と違って「国民健康保険」に加入することになりますが、建設業で働く方が組合員となる「建設国保」に加入することもあります。
年金保険
健康保険と同じように、日本には「国民皆年金制度」があるため、20歳以上60歳未満の方はすべて年金保険に加入しなければなりません。
会社員などはすべての国民が加入する国民年金にくわえて、厚生年金にも加入することになるため、両方から年金が支給されます。
しかし、一人親方は厚生年金には加入できず、国民年金のみの加入となります。
労災保険
労災保険とは、業務中、もしくは通勤中にケガをしたり病気になったりした際に、必要な保険給付を受けられる保険です。
労災保険の対象となるのは「労働者」なので、会社などに雇用されていない一人親方は加入できません。
しかし、建設業の一人親方などは現場で労災事故に遭うリスクが高く、一般的な労働者と同じように保護されるべきと考えられています。
そこで、特別加入制度を利用することで一人親方も労災保険に加入できるようになっています。
一人親方が特別加入すべき労災保険とはどのような保険?
一人親方は労災保険に特別加入しておくと安心といわれていますが、労災保険とは具体的にどのような保険なのでしょうか。
対象者
労災保険に特別加入できる一人親方の条件を確認しておきましょう。
まず、個人で仕事を請け負っていることが条件になります。
会社などに雇用されている労働者は特別加入の対象外です。
会社に所属していても、会社と雇用関係になく、請負で仕事をしていれば対象者に該当します。
また、一人親方で労働者を使用している場合であっても、1年間の使用日数が100日未満であれば特別加入は可能です。
そのほか、お互いに雇用関係にないグループで業務をおこなっている場合や、法人のみで仕事をしている場合も、労災保険に特別加入できます。
一人親方の家族従事者も加入の対象になる可能性があるため、詳しく確認しておくとよいでしょう。
加入するメリット
一人親方労災保険に特別加入すると、労働者と同程度の補償を受けられるようになります。
家族に対する補償もあるため、安心して働けるようになるでしょう。
また、請け負える仕事の幅が広がることもメリットの一つです。
元請会社は安全配慮義務を負っているため、現場で働くすべての人を労災事故から守る必要があります。
しかし、万が一、一人親方が労災事故に遭っても元請会社の労災保険は適用されません。
とは言え、元請会社が責任を問われることになる可能性は高いでしょう。
そうなることを防ぐために、労災保険に未加入の一人親方に仕事を依頼しない元請会社も少なくありません。
逆に言えば、労災保険に特別加入することで、多くの仕事を請け負えるようになります。
補償内容
一人親方労災保険に特別加入した場合は、以下のような補償を受けられるようになります。
- 療養補償:業務中もしくは通勤中のケガや病気で医療機関にかかる際の治療費
- 休業補償:業務中もしくは通勤中のケガや病気で仕事を休まなければならなくなったとき
- 障害補償:業務中もしくは通勤中のケガや病気により後遺症が残った場合
- 遺族補償:一人親方が労災事故などにより死亡した場合
- 葬祭料:一人親方が労災事故などにより死亡し、葬祭を執り行う場合
- 介護補償:業務中もしくは通勤中のケガや病気で介護が必要になった場合
一人親方が労災保険に特別加入する際にすべきこと
一人親方が労災保険に特別加入するにあたって必要な確認事項についてご紹介します。
自分に合った特別加入団体を探す
一人親方労災保険への特別加入は、特別加入団体を経由して行うことになります。
そのため、まずは自分が住んでいるエリアで加入できる特別加入団体の中から、条件に合ったところを探すことから始める必要があります。
特別加入団体にはそれぞれ異なる特徴があるため、しっかり比較して選びましょう。
団体選びで特に重視すべきポイントは、以下の通りです。
費用はいくらかかるか
労災保険料は全国一律なので、どの団体を経由しても変わりません。
しかし、入会費や組合費などは団体によって金額が異なるため、事前に確認しておきましょう。
また、入会後に更新手数料や労災申請時の手数料などが発生する団体もあります。
入会費や組合費が安く設定されていても、手数料の金額によっては割高になることもあるため、注意が必要です。
加入までのスピードはどのくらいか
申し込み手続きをしてから、実際に加入できるまでどのくらいかかるのかも重要なポイントになります。
急な仕事の依頼がきて、すぐに労災保険に加入しなければならないこともあるでしょう。
そのようなときに、加入までのスピードが速い団体だと安心です。
団体によっては申し込みの翌日には加入でき、加入証明書が即日発行されるところもあるため、チェックしてみるとよいでしょう。
安心して加入できる団体か
安心して加入できる団体かどうかを見極めるためには、まず、厚生労働省や都道府県の労働局に承認された団体であるか確認しましょう。
ウェブで団体の情報が公開されているか、特定の宗教団体や政治団体とつながりがない独立した団体であるかなどもチェックしてください。
また、社会保険労務士がいる団体だと、万が一のときでもしっかりと対応してもらえる安心感があります。
給付基礎日額を選ぶ
加入する団体が決まったら、給付基礎日額を選びます。
給付基礎日額とは労災保険料を算定する際の基礎となるもので、3,500~25,000円までの16段階があります。
決まった給料がない一人親方は、自分で給付基礎日額を選んで設定しなければなりません。
給付基礎日額が高いほど保険料が高額になりますが、補償内容も手厚くなります。
自分の収入も考えて、無理なく支払える金額を選ぶとよいでしょう。
前年の年収を365日で割った金額が、給付基礎日額を決める際の目安となります。
申し込みに必要な書類をそろえる
特別加入団体への申し込みに必要な書類をそろえておきましょう。
まず、氏名や生年月日・住所などの個人情報をはじめ、現在の業務内容や特定業務の有無などを記載する加入申込書が必要です。
ホームページからダウンロードできるようになっている団体もあるため、確認してみてください。
必要事項を記入したら、郵送またはFAXで送付します。
インターネットでの受付が可能な団体だと、加入申込書は不要な場合もあります。
そのほか、身分証明書のコピーも用意しておきましょう。
顔写真付きのものであれば1枚で済みますが、顔写真がないものだと2枚必要になる場合が多くなっています。
また、高い給付基礎日額を設定すると所得証明書の提出を求められることがあるため、確認しておきましょう。
一人親方が現場に入る際に確認すること
これまで現場に入れなかった一人親方でも、社会保険や労災保険に加入しておくことで、現場に入れる可能性は高くなります。
もし現場に入れるようになった場合は、いくつか確認しておきたいポイントがあります。
具体的には、次のことを確認しておきましょう。
- 工事全体の概要:工事の名称や工期・建物の構造・発注者・設計者・施工者など
- 施工管理体制:元請工事事務所の組織体制や安全衛生管理体制
- 現場の配置図:通行可能な通路や休憩所・喫煙所など
- 車両の運用ルール:入退場ルートやルール・速度制限や高さ制限・駐車場の位置など
- 安全に関するルール:保護具の着用ルール・災害や事故が起こった際の報告などのルール
- 品質・環境に関するルール:施工要領書や作業手順書の内容・5Sや産業廃棄物の分別ルールなどの環境に関するルール
上記を確認しておくことで、品質や安全を確保しながら作業できます。
まとめ
一人親方が現場に入るにあたって必要な保険について、詳しくご紹介しました。
一人親方は、健康保険や年金保険・労災保険に未加入だと現場に入れない可能性があります。
特に、労災保険は加入するために特別加入制度を利用する必要があるため、対象者や補償内容などをよく確認しておくのがおすすめです。
本記事では、一人親方労災保険が適用可能な労災事例や、特別加入する際に必要なことなどもご紹介しています。
一人親方として活動されている方は、ぜひ参考にしてください。
また、一人親方団体労災センターでは、最短で翌日からのご加入が可能です。
お急ぎで加入したい方でも対応できる場合があるため、労災保険の特別加入を検討している場合はぜひご確認ください。