「社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは?」
「一人親方にも関係する内容はある?」
上記のような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインは、国土交通省によって策定されたガイドラインです。
保険未加入の企業を選定しない・適切な保険へ未加入の作業員に対し現場入場を認めないなどが定められています。
この記事では、社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインについて、具体的な内容や改定内容をまとめました。
各企業の役割や責任も紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインとは、国土交通省が策定している元請企業および下請企業の取組の指針となるガイドラインのことです。
令和4年4月より適用が開始されており、以下のような内容が定められていました。
- 社会保険未加入の企業を下請企業に含めないように要請
- 保険未加入の作業員に対して現場入場を認めない
上記のような対策の履行強化により、社会保険への未加入問題の解決を促進しています。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインの改定内容
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインは、時間外労働上限規制の適用と一人親方についての内容が改定されました。
それぞれの改定内容は、以下のとおりです。
時間外労働の上限規制適用 時間外労働の上限について、原則として月45時間・年360時間の超過を禁止
一人親方について 一人親方を雇用するにあたって、ガイドライン内の文章追加
時間外労働の上限規制適用については、災害の復旧や復興を除いて上記の内容を守らなければなりません。
ただし、臨時の特別な事情があって労使が合意する場合、以下の条件を厳守すれば上限規制の適用外となります。
- 時間外労働の累計時間が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計時間が月100時間未満
- 時間外労働と休⽇労働の合計時間が2ヶ月~6ヶ月平均で月80時間以内
- 時間外労働が45時間を超える月数が年6ヶ月以内
一人親方についての部分は、以下の文章が追加されています。
- 建設業界として目指す一人親方の基本的な姿とは、請け負った工事に対し自らの技能と責任で完成させることができる現場作業に従事する個人事業主
- 技能とは、相当程度の年数を上回る実務経験を有し、多種の立場を経験していることや、専門工事の技術のほか安全衛生等の様々な知識を習得し、職長クラス(建設キャリアアップシステムのレベル3相当)の能力を有すること等
- 責任とは、建設業法や社会保険関係法令、事業所得の納税等の各種法令を遵守することや、適正な工期及び請負金額での契約締結、請け負った工事の完遂、他社からの信頼や経営力があること等
上記のほか、10代や経験年数が3年未満・働き方自己診断チェックリストで雇用労働者に当てはまる場合、一人親方としての仕事をさせているかが疑われる例が記載されています。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインにおける企業の役割と責任
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインでは、元請企業と下請企業それぞれに役割と責任が定められています。
- 元請企業の役割と責任
- 下請企業の役割と責任
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
元請企業の役割と責任
建設業の元請企業に求められる役割と責任は、以下の3つです。
- 社会保険の加入状況確認
- 適切に法定福利費が確保されているかの確認
- 作業員の保険加入確認
それぞれの詳細について解説します。
社会保険の加入状況確認
元請企業は依頼先として選定候補となる企業に対し、社会保険の加入状況確認が必要です。
もし未加入である場合は、できるだけ早めに加入手続きを進めるような指導が求められます。
未加入の企業においては、下請企業に選定しないように取り扱う方針を徹底する姿勢も重要でしょう。
なお、選定先については建設キャリアアップシステムに登録されている企業から選ぶことも推奨されています。
適切に法定福利費が確保されているかの確認
元請企業は、必要経費として見積もり段階から法定福利費の確保が必要です。
下請企業から提出された法定福利費を内訳に記載した見積書は、提出された内容の尊重が求められます。
元請企業が法定福利費に相当する額を一方的に減らす・その他の費用で減額する行為は認められていません。
もし法定福利費に相当する額を賄えない場合は、請負契約自体を結ぶべきではないとされています。
作業員の保険加入確認
元請企業は、現場作業員に対する社会保険の加入状況確認が求められます。
作業員名簿の社会保険欄を確認し、万が一未加入の作業員がいる場合は、保険加入の指導が必要です。
社会保険の加入状況確認は、建設キャリアアップシステムの登録情報を用いることが原則化されています。
一人親方が作業に従事している場合も、関係を記載した再下請負通知書および請負契約書の提出を求めたうえで、内容が適切か・作業の実態は問題ないかの確認が必要です。
下請企業の役割と責任
建設業に従事する下請企業に求められる役割と責任は、以下の3つです。
- 労働者の適切な保険加入手続き
- 元請企業が実施する指導・確認への協力
- 適正金額での法定福利費確保
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
労働者の適切な保険加入手続き
下請企業は、労働者に該当する社員に対して適切な保険加入手続きを進めなければなりません。
このとき、一人親方と労働者をしっかりと区別する必要があります。
適切な保険加入手続きができていない場合は、下請企業の選定先から外れてしまう可能性も高いでしょう。
そのため、早急な手続きが求められる場面も多いようです。
元請企業が実施する指導・確認への協力
建設現場において、元請企業はさまざまな指導や確認が必要です。
指導や確認を実行する際、下請企業は協力姿勢が求められます。
元請企業の指導は、建設工事の施工に関係するすべての企業に行き渡らなければなりません。
一部が協力しない体制を見せると、工事が滞ったり他社への負担が増えたりする可能性が考えられるため、下請企業として守らなければいけない項目の一つです。
適正金額での法定福利費確保
下請企業は、自社で負担しなければならない法定福利費の適正金額で見積もる必要があります。
見積もった後は内訳を記載した見積もりを元請企業に提出しなければなりません。
もし業務の一部を再下請負させる場合は、対象の企業から法定福利費を適正に確保することも求められます。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインで一人親方が対応すべきこと
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインにおいて、一人親方が対応すべきことは以下の2点です。
- 働き方自己診断チェックリストの記述・提出
- 建設業法等の遵守
それぞれの内容について、詳しくみていきましょう。
働き方自己診断チェックリストの記述・提出
建設企業と一人親方の契約が請負契約であった場合も、働き方自己診断チェックリストを記述し、提出する必要があります。
働き方自己診断チェックリストとは、現場作業に携わる際の実態を確認する目的で使用されるものです。
働き方自己診断チェックリストでは、以下8つの内容に関する質問が用意されています。
- 依頼に対する諾否
- 指揮監督
- 拘束性
- 代替性
- 報酬の労務対称性
- 資機材等の負担
- 報酬の額
- 専属性
上記はいずれもAとBの2択が用意されており、Bに多くあてはまる場合は雇用契約締結の検討が必要です。
建設業法等の遵守
一人親方として仕事を請け負う際は、工事の目的を確認しましょう。
建設工事の完成が目的となっている場合、建設業法等の順守が求められます。
また、適正な取引か・請負代金は必要経費が反映されているかの確認も必要です。
事前に見積書を交わしたり、請負契約書を書面で交付したりしなければならない点に注意して、作業に従事しましょう。
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインに関するよくある質問
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインに関するよくある質問として、一人親方が特に疑問を感じやすい以下の3つをみていきましょう。
- 一人親方は社会保険に加入しなければならない?
- 一人親方が社会保険の適用除外になるのはなぜ?
- 一人親方が加入を求められる保険はある?
それぞれの内容について、詳しく解説します。
一人親方は社会保険に加入しなければならない?
結論、従業員を雇用しない個人事業主の場合は社会保険への加入義務はありません。
ただし、加入していないと以下のようなリスクがともないます。
- 労働災害で働けなくなった際の補償がない
- 案件の選択肢が狭まる
- 労働災害時の医療費負担が全額自己負担になる
これらのリスクを避けるためにも、社会保険はできるだけ加入しておいたほうがよいでしょう。
一人親方が社会保険の適用除外になるのはなぜ?
一人親方が社会保険の適用除外になるのは、個人事業主の扱いになるためです。
社会保険だけでなく厚生年金も適用されませんが、従業員が5人以上いる・従業員が常勤である場合は加入対象となります。
一人親方が加入を求められる保険はある?
一人親方として働く際、労働者の働き方に近い場合は社会保険への加入が必要です。
現場によっては社会保険の加入がないと受けられない案件もあるため、注意してください。
まとめ
社会保険の加入に関する下請指導ガイドラインは、元請企業や下請企業の取り組みの指針となるものです。
各企業の役割や責任について記載されており、労働環境を整えるために必要な内容が記載されています。
一人親方についても自己診断チェックリストの記述・提出や建設業法等の順守が定められているため、必ず内容を確認しておきましょう。
一人親方団体労災センターでは、社会保険の特別加入に関する案内・問い合わせへの対応を随時受け付けております。
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