「安全衛生教育とは?」
「一人親方は安全衛生教育を受けられる?」
上記のような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
安全衛生教育は、労働者が働く上で安全や衛生面の知識を付与するための教育です。
知識を身につけることで、労働災害の防止に役立つとされています。
なお、安全衛生教育はすべての労働者に対して実施する必要があり、建設業も例外ではありません。
この記事では、安全衛生教育の概要や一人親方が受講する方法をまとめましたので、ぜひ参考にしてください。
Contents
安全衛生教育とは?
安全衛生教育とは、労働災害を防止するために実施される教育のことです。
主には安全や衛生などに関する知識を共有するために行われ、事業者は4種類の安全衛生教育を行うことが義務付けられています。
ただし、4種類のうち1種類は努力義務となります。
上記の内容は労働基準法第59条および第60条に記載されており、第69条の内容も含めると全6種類の安全衛生教育が必要です。
安全衛生教育は主に「人的要因」からなる労働災害の防止を目的と実施され、所定労働時間内に行わなければなりません。
また、教育にかかる費用も、事業者による負担が必要となる点には注意しましょう。
安全衛生教育の種類にはどのようなものがある?
安全衛生教育の種類は、大きく以下5つの内容に分類されます。
- 雇入れ時・作業内容変更時の教育
- 特別の危険有害業務従事者への教育
- 職長等への教育
- 安全衛生管理者等への能カ向上教育
- 安全衛生水準向上のための教育
各教育の内容および詳細について、詳しく見ていきましょう。
雇入れ時・作業内容変更時の教育
雇入れ時・作業内容変更時の教育は、新規従業員を雇用した際や既存の作業内容が変更された際に実施する必要があります。
対象の作業に従事する従業員については、もれなく実施しなければなりません。
なお、具体的な教育の内容として、以下があげられます。
- 機械等、原材料等の危険性又は有害性及びこれらの取扱い方法に関すること。
- 安全装置、有害物抑制装置又は保護具の性能及びこれらの取扱い方法に関すること。
- 作業手順に関すること。
- 作業開始時の点検に関すること。
- 当該業務に関して発生するおそれのある疾病の原因及び予防に関すること。
- 整理、整頓及び清潔の保持に関すること。
- 事故時等における応急措置及び退避に関すること。
- 前各号に掲げるもののほか、当該業務に関する安全又は衛生のために必要な事項
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則 」
なお、上記の内容について十分な知識があると判断した従業員については、対象の安全衛生教育を省略することも可能です。
特別の危険有害業務従事者への教育
特別の危険有害業務従事者への教育は、厚生労働省によって指定されている危険有害業務に携わる従業員への実施が義務付けられています。
危険有害業務に該当する例として挙げられるのは、以下の通りです。
- 研削砥石の取替または取替え時の試運転の業務
- 動力プレスの金型、シャーの刃部・プレス機械・シャーの安全装置若しくは安全囲いの取付け、取外し・調整の業務
- アーク溶接機を用いて行う金属の溶接、溶断等
- 低圧の充電電路の敷設もしくは修理の業務
- 対地電圧が50ボルトを超える低圧の蓄電池を内蔵する自動車の整備の業務
- 最大荷重一トン未満のフォークリフトショベルローダー・フォークローダー・不整地運搬車の運転 など
出典:e-Gov法令検索「労働安全衛生規則 」
なお、業務経験者および特別教育を受講済みの労働者については、省略が認められています。
また、特別教育の実施状況について、最低でも3年間の保存が必要な点には注意しましょう。
職長等への教育
職長等への教育は、班長や作業長など、第一線監督者になる人物への実施が必要な安全衛生教育です。
対象となる業種は以下の9つで、作業方法の決め方や配置方法・指揮監督など、安全衛生を守るために必要な項目を教育しなければなりません。
- 電気業
- ガス業
- 自動車整備業
- 機械修理業
- 食料品製造業
- 新聞業
- 出版業
- 製本業
- 印刷物加工業
もし職長となる人物が安全衛生責任者も兼ねる場合は、安全衛生責任者の職務等の項目を合わせて実施しても問題ないとされています。
安全衛生管理者等への能力向上教育
安全衛生管理者等への能力向上教育は、企業が努力義務で行う安全衛生教育となります。
主な内容は、安全衛生業務の従事者の能力を維持・向上させることです。
具体的には、社内で以下に該当する人物への実施が推奨されています。
- 安全管理者
- 衛生管理者
- 安全衛生推進者
- 衛生推進者
- 作業主任者
- 安全衛生管理者
教育については、初めてその職務に就くタイミングがよいでしょう。
なお、実施については一回のみではなく、定期的な教育も推奨されています。
安全衛生水準向上のための教育
安全衛生水準向上のための教育は、安全管理者・衛生管理者・安全衛生推進者・衛生推進者などが対象となる教育です。
安全衛生の水準を向上するのが主な目的となり、従事する業務に関する能力の向上を図るための教育・講習を実施する必要があります。
教育が推奨されているタイミングは、以下の3つです。
- 初任時教育:初めて該当の業務に従事する際に実施される教育
- 定期教育:一定期間ごとに実施される教育
- 随時教育:作業内容や使用機材など、大幅な変更が行われた際に実施される教育
労働災害に関する内容はもちろん、社会経済の情勢や職場の変化に対応するための教育が実施されると考えておけば問題ないでしょう。
安全衛生教育の実施方法
安全衛生教育は、社内と社外で実施の仕方が異なります。
ここからはそれぞれの具体的な実施方法について、詳しく見ていきましょう。
社内の場合
社内で実施する場合は、まずどのように教育していくかの計画を立てましょう。
計画を立てることで、どのように教育を進めていくのかの見通しをつけられます。
その後、教育を実施するトレーナーを選定しましょう。
選定するトレーナーについては、勤務歴が長かったり、社内の業務をある程度把握していたりする人物がおすすめです。
トレーナーと教育計画のすり合わせが完了したら、実践に移ります。
安全衛生教育を実施していく中で改善点を見出し、より良い内容に近づけていくことが重要といえるでしょう。
社外の場合
社外で実施する場合は、安全衛生教育センターを利用するのが代表的な方法としてあげられます。
安全衛生教育センターは全国各地に設置されており、さまざまな内容の講座を実施しているのが特徴です。
例えば職長教育や特別教育、トレーナーの養成講座などを活用すれば、社内にノウハウがない場合も困らずに済むでしょう。
なお、受講については基本的に予約が必要になるため、事前の手続きを忘れないようにしてください。
一人親方が安全衛生教育を受けるには?
一人親方が安全衛生教育を受ける方法は、大きく分けて2つ挙げられます。
一つ目は厚生労働省が配布している「安全衛生教育テキスト」を活用する方法です。
基本的な安全衛生管理や一人親方が行うべき日常管理、安全衛生活動の進め方などが書かれているため、一度目を通してみるのがよいでしょう。
二つ目は、「建設業で働く一人親方等のための安全衛生研修会」を利用する方法です。
無料で受講でき、さまざまな日時・場所で開催されています。
開催情報は公益社団法人全国労働基準関係団体連合会 が発表しているため、参加できる回がないか、一度確認してみてください。
安全衛生教育の具体的な実施例
安全衛生教育の具体的な実施例として、以下の3つをご紹介します。
- 計画や実績に基づいた実施
- 作業時に発生する危険の疑似体験
- 外部講師を招いた教育
それぞれの実施例について、詳しく見ていきましょう。
計画や実績に基づいた実施
社内で安全衛生教育を実施する際は、計画や実績に基づいた内容を取り入れるのがおすすめです。
高い教育効果にも期待でき、従業員一人ひとりに定着しやすいと考えられます。
なお、計画や実績に基づいて安全衛生教育を実施する場合は、いつ実施するかも整理しておきましょう。
また、実施して終わりにするのでは、その後の効果や教育自体の定着に期待できません。
従業員一人ひとりに対し、長期的な視点で実施内容を記録しておくことも重要です。
作業時に発生する危険の疑似体験
作業時に発生する可能性がある危険を疑似体験してもらうのも、安全衛生教育の実施方法としておすすめです。
建設業においては、VR映像を用いて再現したシチュエーションを体験させる教育も実施されていました。
疑似体験によってイメージができれば、危険が身近なものである印象も従業員に与えられます。
そのため、実際の作業を行う際の意識づけにも効果的といえるでしょう。
外部講師を招いた教育
もし社内の人間にノウハウや知識がない場合は、外部講師を招いて教育を行うのもよいでしょう。
実際、安全衛生教育に関するセミナーは数多く実施されているようで、利用している企業も見られました。
なお、外部講師を招く際は、できるだけ知識や経験を持ち合わせている人物を選定しましょう。
建設業の場合は、実際に現場で働いていたり、該当の業界に精通した産業医だったりするのが望ましいです。
まとめ
安全衛生教育は、労働安全衛生規則によって義務付けられているものです。
実施しなければ従業員を危険にさらすだけでなく、大きな責任問題につながるかもしれません。
建設業の一人親方についても、安全衛生研修会が無料で実施されています。
そのため、身を守るために受講を検討してみるのもよいでしょう。
この記事で紹介した内容をもとに、安全衛生教育への理解を深め、労働災害やケガなどのリスクを軽減しましょう。