「建設業のヒヤリ・ハット運動とは?」
「実際にどのようなヒヤリ・ハット運動がある?」
上記のような悩みを抱えている人も多いのではないでしょうか。
建設業では、日々さまざまなヒヤリ・ハットが付きまといます。
その中で、現場での周知や状況の確認などが運動例として挙げられるでしょう。
この記事では建設業におけるヒヤリ・ハットの例や、ヒヤリ・ハット運動の具体例をまとめました。
その他、よくある質問もご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
そもそもヒヤリ・ハットとは?
建設業におけるヒヤリ・ハットとは、大きな災害や事故には至らなかったものの、一歩間違えれば大きな事故につながる可能性があった危険な出来事を指します。
例えば作業中に発生した少しのミスや不注意などがあげられるでしょう。
「ヒヤッとした」「ハッとした」と感じるような事例が多いことから、ヒヤリ・ハットと呼ばれています。
建設現場では、高所作業や重機の使用など、危険がともなう場面も少なくありません。
ヒヤリ・ハットを実施することで再発防止に向けた対策を講じ、安全な職場環境を実現するために、ヒヤリ・ハットは重要視されています。
建設業で起こりうるヒヤリ・ハットの事例
建設業で起こりうるヒヤリ・ハットの事例として、以下の6つをご紹介します。
- 墜落・転落
- 挟まれ・巻き込まれ
- 激突
- 飛来・落下
- 感電・火災
- 転倒
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
墜落・転落
建設現場における墜落・転落のヒヤリ・ハット事例として、以下があげられます。
- 新築住宅のボード張り作業を手すりなし2連式脚立上でボードを持ち上げ壁張り中ふらついて足元がずれ足場から落ちそうになった。
- 建設工事現場において、作業床の上で布板を結束してあった番線につまずいたが、とっさに枠組足場の筋交いにつかまって、転倒をまぬがれた
- 外壁改修工事の外部足場解体作業中、部材を引き抜いたときにバランスを崩して墜落しそうになりヒヤッとした。
参考:厚生労働省『見せます・出します「ヒヤリハット事例」~安全衛生活動への参加の見える化~』
墜落や転落のヒヤリ・ハットは、足場に関係するものが多く見られました。
作業環境が整備されていない場合や、用具や荷物が散乱している場合は、上記のようなヒヤリ・ハットの事例につながると考えられるでしょう。
挟まれ・巻き込まれ
建設業の現場で発生した挟まれ・巻き込まれのヒヤリ・ハット事例としてあげられていたのは、以下の内容です。
- 工場構内で不要材を小型チェーンソーで引き割を担当。炎天下で汗を拭くため首に巻いていたタオルがたれ下がりチェーンソーに巻き込まれそうになった。
- バックホーの誘導作業で、バックホーが方向転換するとき、通行者が来たのでバックホーを背に通行人の誘導をしたところ、後進したバックホーのキャタビラに足がひかれそうになった。
参考:厚生労働省『見せます・出します「ヒヤリハット事例」~安全衛生活動への参加の見える化~』
挟まれや巻き込まれは、身につけているものや周囲の安全確認不足などから引き起こされる傾向にあります。
自分だけ確認するのではなく、周囲と連携しながら安全環境を整えることが重要といえるでしょう。
激突
建設業に関する激突のヒヤリ・ハット例として、以下の2つを見ていきましょう。
- 造成工事現場で、ダンプトラックで土を運んできて、土を降ろそうといったん車を止め、シフトをバックに入れてバックしかかったところ、バックミラーに人が見えたので、あわててブレーキを踏んで事なきをえた。
- コンクリート製電柱を積載して後進してきたトラックの荷台から2.75mはみ出した部分に気がつかず、原動機付自転車で激突しそうになりヒヤッとした。
参考:厚生労働省『見せます・出します「ヒヤリハット事例」~安全衛生活動への参加の見える化~』
激突のヒヤリ・ハット事例を見てみると、車と人の激突に関連するものが多いです。
また、車両同士が安全確認を怠り、激突寸前までいった事例も見られました。
飛来・落下
建設業の現場で起こりうる飛来・落下のヒヤリ・ハット事例として、以下の2つをご紹介します。
- 基礎工事の資材置場において、H鋼材2本をクレーンで吊り上げトラックの荷台に移す作業を行っていたところ、鋼材を吊っていたワイヤーが切れて落下した。
- 資材置場で型枠の製作を行っていたところ、製作済みの型枠が突風にあおられて約15m移動した。
参考:厚生労働省『見せます・出します「ヒヤリハット事例」~安全衛生活動への参加の見える化~』
飛来・落下は、資材が固定できていなかったりワイヤーが劣化していたりなどが原因となるようです。
飛来物や落下物が人とぶつかると大きなけがにつながる可能性があるため、作業環境を整える意味でも、日常の点検が重要と考えられます。
感電・火災
建設業での感電・火災のヒヤリ・ハットとして、以下の内容をご紹介します。
- 配電盤の配線変え作業のために、盤内の主電源ブレーカーを切って作業中に、ビスが落下したので取り出そうとしたら、主電源スイッチの1次側に腕が触れそうになってヒヤッとした。 配電盤の作業では電気室の元電源を切ってから作業するようにした。
- 船体ブロック内において、溶接箇所の補修作業を行っていたところ、付近に置いていた錆止め用の塗料が入っていた缶に、グラインダーの火花が飛び込んだ。
参考:厚生労働省『見せます・出します「ヒヤリハット事例」~安全衛生活動への参加の見える化~』
感電や火災は、思わぬところで手が触れてしまったり、火気が塗料に飛び込んでしまったりなどがあげられるようです。
意図せずに起こってしまう可能性があるヒヤリ・ハットと考えられるため、作業前にできるだけ安全な環境かを確認することが重要となるでしょう。
転倒
建設業における転倒のヒヤリ・ハット事例は、以下の2つです。
- 建設工事において、内装材の入ったダンボール箱をかかえて運搬中、通路に放置されたパイプにつまずいてよろめいた。
- 道路舗装工事において、未施工部分に設置した合板製仮通路の端につまずいて、転倒しそうになった
参考:厚生労働省『見せます・出します「ヒヤリハット事例」~安全衛生活動への参加の見える化~』
建設現場では、作業をしている中で資材を置きっぱなしにしたり段差が生まれたりなどがあるとされています。
どうしても避けられない部分はあるかもしれませんが、段差がある場合は注意喚起の立て札をする・資材は決められた部分に置くなどの対策方法があげられるでしょう。
建設業ではどのようなヒヤリ・ハット運動が行われている?
建設業で行われているヒヤリ・ハット運動の例として、以下の3つを見ていきましょう。
- 現場での周知
- 現場状況の確認
- ヒヤリ・ハットの共有
それぞれの内容について、詳しく解説します。
現場での周知
建設業の現場では、事故や災害を防ぐためにしっかりとヒヤリ・ハットの周知を徹底しています。
作業員に言い聞かせをすることで、事故や災害につながるリスクを軽減できるでしょう。
例えば朝礼や昼の打ち合わせ・KYミーティングなどを活用する方法があげられます。
ヒヤリ・ハットの事例はもちろんのこと、現場内の危険箇所や注意点を周知するのも、効果的なヒヤリ・ハット運動の一つです。
現場状況の確認
建設業の場合、現場状況を都度確認することは重要なポイントです。
常に環境が変動するため、過去に安全だった場所が危険な場所に変わるケースは珍しくありません。
例えば重機の位置が変わったり、仮設物の配置が変更されたりなどすれば、危険な要素につながる可能性もあるでしょう。
毎日同じ環境で作業できるわけではないからこそ、作業開始前後に安全かどうかの確認を徹底することも重要になります。
ヒヤリ・ハットの共有
ヒヤリ・ハットの事例が発生したら、現場内で共有することも忘れてはいけません。
特にヒヤリ・ハットの横展開をすれば、労働災害の防止にもつながるでしょう。
労働災害は、いつどのような状況で起こるかわかりません。
危険な要素を排除するために、現場全体で事例を把握できるような態勢を整えるようにしましょう。
建設業のヒヤリ・ハットに関するよくある質問
建設業のヒヤリ・ハットに関するよくある質問として、以下の3つをご紹介します。
- 新ヒヤリ・ハットとヒヤリ・ハットの違いは?
- ヒヤリ・ハットのネタが切れたらどうすればいい?
- 新ヒヤリ・ハット報告に様式はある?
それぞれの内容について、詳しく見ていきましょう。
新ヒヤリ・ハットとヒヤリ・ハットの違いは?
ヒヤリ・ハットは、物的・工学的および教育・管理的な災害防止対策として実施されてきました。
新ヒヤリ・ハットでは上記に加え、人そのものに着目したヒヤリ・ハット対策を検討するものです。
新ヒヤリ・ハットによって、作業員全体で安全衛生活動を展開する行為に意義があると考えられています。
結果として新たな仕組みの構築につながり、安全衛生活動を見直すきっかけにもなるでしょう。
ヒヤリ・ハットのネタが切れたらどうすればいい?
ヒヤリ・ハットのネタが切れてしまった場合、まずは職場内の安全対策における「常識」が本当に正しいかを見直しましょう。
場合によっては、常識だと思っていたものが誤っているかもしれません。
もし少しでも違和感を覚えた場合は、対策方法を大幅に見直すことも必要です。
結果として、新たなヒヤリ・ハットの事例が見つかり、より良い安全対策につながる可能性があります。
新ヒヤリ・ハット報告に様式はある?
新ヒヤリ・ハット報告の様式は、さまざまな場所で配布されています。
もし既存で新ヒヤリ・ハット報告の様式を持ち合わせていない場合は、それらを流用するのもよいでしょう。
もちろん、新ヒヤリ・ハット報告の様式は自社で作成しても問題ありません。
どのような様式が使いやすいかを検討し、運用する際の負担にならないようにしましょう。
まとめ
建設業におけるヒヤリ・ハット運動は、現場内の安全を守るために重要なものです。
ヒヤリ・ハットを実施すれば重大な事故や災害の防止にもつながるため、どのような事例があるのかについても確認しておきましょう。
また、ヒヤリ・ハットは現場での周知や現場状況の確認・共有などが重要と考えられています。
作業に関わる全ての人員が把握できるような体制づくりも意識し、危険の種を減らすことを目的としてみてください。