一人親方労災保険の「労災センター通信」

安全衛生対策とは?事例や法律をもとにわかりやすく解説

安全衛生対策は、重大な労働災害を防止するほか、従業員の心身の健康を守り、生産性を維持するためにも重要な取り組みです。
また、事業者は安全衛生を守ることが法律によって義務付けられています。

この記事では、安全衛生対策とは何かをわかりやすく解説。
具体的な取り組み内容や、企業で取り入れられている安全衛生対策の事例をもとに、安全衛生への理解を深めましょう。

安全衛生対策とは?

はじめに、安全衛生対策とはどのような目的で、どのようなことを行うのか理解を深めましょう。
誰でも理解できるよう簡単に解説します。
安全対策

安全衛生対策の目的

安全衛生対策の目的は、労働災害などのトラブルを未然に防ぎ、労働者が心身ともに安全・健康的な状況で働けるようにすることです。

労働安全衛生法でも、事業者に対して、労働災害防止のために事前の対策を講じるよう義務付けています。
厚生労働省発表の資料「5 労働災害の発生と企業の責任について」によれば、昨今では、事業者が民事上の損害賠償の責任を問われる裁判で、「労働契約の付随義務として安全配慮義務を尽くして労働者を災害から守らなければならない債務不履行責任(民法第415条)」に基づいて、損害賠償を認める判例が増えているとのことです。

このほかにも、労働災害は雇用する企業のブランドイメージの低下、人材不足、生産性の低下、売上の低下など、多方面に悪影響を及ぼしてしまうため、安全衛生対策は事業者と従業員が一丸となり、しっかりと取り組む必要があります。

安全衛生の意味

「安全衛生」には、労働災害を防ぐ意味の「安全」と、従業員が心身ともに健康的に活動するための「衛生」の意味が含まれており、どちらも欠けてはいけません。

令和5年9月には、労災認定基準が改正され、カスタマーハラスメントや、パワーハラスメントによって心理的な負担を受け、精神障害を患ってしまった場合にも、労働災害に含まれることになりました。

安全衛生対策では、現場での事故防止だけでなく、従業員のメンタルヘルスをケアする取り組みも大切です。

安全衛生対策に関わる法律を知ろう

効果的な安全衛生対策を実行するには、主に表にある安全衛生対策に関連する法律、規則、施工例に基づいて計画することが重要です。

法律・規則の名称 概要 詳細
労働安全衛生法 労働者の安全と健康を確保するための法律 事業者が労働者に対して安全衛生教育などの安全衛生対策を実施することが義務付けられている
労働基準法 労働者の基本的な権利と安全を保障するための法律 労働時間、賃金、休日、残業などについて細かく取り決められている
労働安全衛生規則 労働安全衛生法に基づいた安全衛生対策を実施するための具体的な規則 具体的な作業手順、教育内容に盛り込むべき内容、現場装置の設置基準などが細かく取り決められている
労働安全衛生法施行令 労働安全衛生法を効果的に適用するための重要な命令 法律のように罰則は設けられていないが、政府が発するルールの中で優先度が最も高いルール

事業者はもちろんのこと、従業員もこれらのルールを理解することで、従業員の安全、良好な健康状態の維持に繋がり、事業者の立場を守ることにも繋がります。

必ず取り入れたい安全衛生対策

「法律や規則に基づいて」と聞いても、何から始めたら良いのかわからない方もいるでしょう。
以下4つの項目は、最低限取り入れるべき安全衛生対策といえます。

  • 労働災害防止の取り組み
  • 安全衛生教育の実施
  • メンタルヘルスケア
  • 健康対策

ここでは、4つの重要な安全衛生対策について、具体的に実施すべきことを解説します。

労働災害防止の取り組み

安全衛生対策を行う上で、労働災害防止の取り組みは欠かせません。
予め現場の危険因子を特定し、リスクを評価したうえで、適切な予防措置を講じることを「リスクアセスメント」といいます。
事業者は、計画段階で労働災害となり得る要素の排除を目指し、リスクアセスメントの徹底に努めましょう。

また、従業員としても、少しでも違和感を感じたら上長や担当者へ相談することも大切です。
疑問を解消することで、従業員自身の知識や意識の向上にも繋がります。

安全衛生教育の実施

安全衛生の知識や理解を深めてもらうための場を定期的に設け、従業員に意識を高めてもらう取り組みを行います。
教育の場では、事業者と従業員が協力し合うことが重要です。
事業者は継続的な取り組みを、従業員は積極的に参加しましょう。

また、安全衛生委員会を設置するなど、安全衛生の管理体制を強化することも有効的です。

メンタルヘルスケア

従業員の心の健康は、生産性向上に繋がる重要な要素です。
昨今では、社会情勢の変化により、業務の心理的な負担から精神障害を患ってしまう人がいる事実について、より深刻な問題として受け入れられるようになっています。

安全衛生対策の一環として、定期的なストレスチェック、カウンセリングサービスの提供、ワークライフバランスの実現・見直しなどを積極的に行いましょう。
従業員が心から安心して働ける環境を整えることで、現場の士気の向上や、企業の豊かな成長に繋がります。

健康対策

メンタルヘルスケアとあわせて、身体的な健康対策も取り入れましょう。
物理的な負担が大きな業務では欠かせない取り組みです。

具体的な健康対策としては、例えば労働時間の見直しや、重労働の対策、定期的な健康診断の実施などが挙げられます。
業務の内容をふまえ、定期的に従業員の疲労を解消できるような取り組みを心がけましょう。

建設業における安全衛生対策の事例

安全対策事例
実際に、企業ではどのような安全衛生対策が行われているのかチェックしましょう。
ここでは、厚生労働省から「安全衛生優良企業」として認定された企業の、取り組み事例をいくつかご紹介します。

事例①坂川建設株式会社(福井県)

福井県にある坂川建設株式会社では、安全衛生対策の事例が報告された平成28年の直近1年間で、多彩な取り組みを実行されています。

  • 安全委員会の設置
  • 安全衛生協力会会員とともに月2回の定期的な現場パトロール
  • 年2回の大規模な安全衛生教育の実施
  • 法改正などに基づいた特別教育の実施
  • 職長や安全衛生責任者への再教育
  • 安全衛生協力会員に対し、安全衛生情報をメールなどで発信

このように、同社では専門委員会の設置や、定期的な教育、現場パトロール、役職者への再教育など、徹底した安全衛生対策が行われていました。

多方面での対策を定期的に実施し、取り組みが形骸化しないよう工夫することも重要です。

事例②やまこう建設株式会社(鳥取県)

鳥取県にあるやまこう建設株式会社では、「みえる化」の徹底による安全衛生対策を実行しました。

  • 担当者ごとに色分けし、名称を大きく記載したメッシュベストの着用
  • ヘルメットのステッカーで「現場指揮者」「合図者「玉掛者」などを識別
  • バリケードの表示に目立つカラーを採用し、作業員、通行車両ともに注意喚起
  • 昇降階段開口部の手すりにネットを配置し、落下物を防止
  • 分電盤に配線図を掲示し作業の誤りを防止
  • ウレタンフォームを使って構造物の模型を再現し、従業員に現場の仕組みを理解してもらう

このように「みえる化」を徹底的に取り入れることで、作業中の誤認や判断の誤りを防げます。
安全衛生教育など、ほかの対策とともに、ぜひ「みえる化」にも取り組むことをおすすめします。

事例③有限会社鈴木工業(神奈川県)

神奈川県にある有限会社鈴木工業では、教育、現場パトロール、現場での「みえる化」の取り組みを積極的に行っています。

  • 年1回の安全大会
  • 講師を招いての年2回の勉強会
  • 中堅幹部向けの安全衛生教育
  • パトロール車両を導入した年3回の安全パトロール
  • 全車両ドライブレコーダー設置で安全意識の向上
  • 現場の「みえる化」

現場の「みえる化」の取り組みにおい/ては、看板の設置のほか、作業内容や作業手順、KY(危険予知)活動について現場に掲示するなどして、すぐに確認できるよう工夫を凝らしていました。

一人親方の安全衛生対策

一人親方の安全対策
一人親方の場合、どのようにして安全衛生対策に取り組むべきか悩んでしまう方がいるかもしれません。
一人親方が講ずべき安全衛生対策のポイントは、以下の3つです。

  • 一人KY活動の実施
  • 無資格で作業をしない
  • 元請への報告、確認を徹底する
  • 労災保険の特別加入制度を利用する

また、万が一労働災害が発生した場合も考慮し、労災保険の特別加入制度に加入しておくと安心です。

一人KY活動の実施

KY(危険予知)活動とは、現場などで発生する可能性のある災害を未然に防ぐために、予め危険を予測して対策を講じる活動のことです。
冒頭でご紹介したリスクアセスメントと似ていますが、リスクアセスメントは主に設備面に注目して対策するのに対し、KY活動では、行動面で対策し労働災害を防ぎます。

また、一人親方の場合は単独での作業となることから、一人でKY活動を行う必要があります。

リスクアセスメントと同様に、作業中の行動の危険度などを点数化によって評価し、未然に事故を防げるよう危険予知を重点的に実施しましょう。

無資格で作業をしない

免許、技能講習、特別教育が必要な作業は、絶対に無資格で作業を行ってはいけません。
現場作業では、ひとつの知識が不足しているだけでも重大な事故に繋がってしまう可能性があります。

作業に際して必要な資格がある場合は、必ず資格を取得してから作業へ入るようにしましょう。

元請けへの報告・確認を徹底する

一人親方は、スポットで作業をすることも珍しくありません。
そのような場面では、自分自身で状況を判断し、ときに報告や確認のプロセスを怠ってしまうこともあるでしょう。
労働災害の事例では、予め決定していた作業内容の勝手な変更や、確認不足、報告不足によって、災害に発展してしうまう例がとても多いです。

些細なことでも、必ず元請けへ報告、確認を徹底するように癖づけましょう。

労災保険の特別加入制度を利用する

一人親方の場合、労災保険の特別加入制度を利用できます。
本来の労災保険は、労働者の保護を目的として、労働基準法に基づいて雇われている人が対象です。
しかしながら、一人親方も外形的には雇われている人と変わらない作業を行っていることから、労働者と同様に保護することが適切とされる人も労災保険に加入できるようになっています。

一人親方は、通常の労災保険では万が一労働災害が発生しても、保険で守ってもらうことはできません。
「一人親方労災保険の特別加入制度」を活用し、万が一労働災害が発生しても、安心して生活できるように、今から準備を整えておきましょう。

一人親方団体労災センター では、上記でご説明した「一人親方労災保険の特別加入制度」に関するご相談、加入のお手続きを手厚くサポートいたします。
月々500円の組合費のみで、簡単・スピーディーに加入できます。
ご興味のある方はぜひ一度お問い合わせください。

まとめ

事業者は、労働安全衛生法によって、労働災害防止のための事前の対策を講じるように義務付けられています。
労働災害防止の取り組み、安全衛生教育の実施、メンタルヘルスケア、健康対策と4つの観点から、安全衛生対策に関わる法律・規則に基づいてしっかりと計画し、実行しましょう。

また、一人親方の場合、KY活動、資格の取得、元請けへの報告・確認の徹底などに取り組むことを前提に、一人親方労災保険の特別加入制度を活用するのがおすすめです。

労災保険に加入しておけば、万が一のことが起こっても、安心して生活できます。

安全衛生対策についての知識と理解を深め、従業員の心身の健康を守りましょう。

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