安全衛生活動は、現場での労働災害防止や労働者の健康保護のために欠かせない取り組みです。
特に一人親方のような個人事業主にとって、安全への配慮は自身の健康と安全を守るだけでなく、作業効率を高めるためにも重要です。
本記事では、一人親方が実践すべき具体的な安全衛生活動と、それを継続するためのコツについて詳しく解説します。
現場で行うべき安全衛生活動を知りたい一人親方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
安全衛生活動とは
安全衛生活動とは、職場での労働災害の防止や労働者の健康保護のために実施される活動のことで、リスクアセスメントや整理整頓、ヒヤリハット報告などが挙げられます。
安全衛生活動を実施する際は、以下のポイントを意識しましょう。
- 雇用形態関係なく、職場で働くすべての労働者に対して実施する
- 繰り返し実施する
- 労働者一人ひとりが考える機会を設ける
安全衛生活動は職場の責任者だけが意識することではありません。
すべての労働者が安全衛生活動を実施することで、安全に働ける環境を整えられます。
一人親方に安全衛生活動が必要な理由
一人親方は会社に属していないため、自分の判断で仕事を進めていく必要があります。
そのため、自分の身を守るために安全衛生活動は欠かせません。
この章では、一人親方に安全衛生活動が必要な理由を解説します。
さまざまな職種が関わっている現場で働くから
一人親方は、さまざまな職種が関わっている現場で働くため、安全衛生活動が必要です。
建設現場では、同じ場所に元請業者、下請業者、再下請負業者などの複数の事業者が関わり合いながら作業をしています。
さまざまな職種が混在している現場では、統括管理によって安全衛生管理が行われています。
しかし、統括管理だけで多くの作業員の安全衛生活動を促すのは難しいです。
加えて、下請業者に雇用されている作業員や一人親方などが、現場で勝手に作業を進めてしまうと労働災害が発生する可能性が高まります。
そのため、雇用されている労働者だけでなく、現場で働く一人親方などにも安全衛生活動の実施や知識の習得が求められます。
特に、建設業の場合は、死亡者数が全産業の約3割を占めているため、安全衛生活動の継続が重要視されているのです。
出典:厚生労働省「令和5年の労働災害発生状況を公表」
一人親方の業務災害のリスクが高いから
一人親方は、雇用された作業員に比べて安全衛生教育の機会が少なく、結果的に災害防止の知識が十分ではないまま現場で働いているケースが少なくありません。
厚生労働省によると、一人親方等の死亡者数は、労働災害による死亡者数の約3分の1に相当する数となっているというデータもあります。
加えて、現場に入りたての時期は、現場の状況が把握できていないこと、作業者のルールに不慣れであることが関係し、被災率が高い傾向にあります。
このように、建設業の一人親方は、業務災害のリスクが高い仕事であるため、安全衛生活動を実施し安全を確保することが重要です。
一人親方が行うべき安全衛生活動
一人親方が行うべき安全衛生活動は、以下の6つです。
- 安全朝礼に参加する
- 安全ミーティングに参加する
- 作業開始前に点検する
- 保護具、足場、器具、工具を正しく使用する
- 翌日の工程などを確認する
- 持ち場の後片付けを行う
安全に作業を実施するために必要な取り組みのため、しっかり身につけましょう。
安全朝礼に参加する
現場で実施される安全朝礼には、必ず参加しましょう。
安全朝礼では、以下のような情報が共有されます。
- 当日の作業に関わる注意事項
- 現場にある危険箇所
- ヒヤリハット報告 など
これらの情報を得ることで、作業中の危険を事前に察知し、事故防止につながります。
また、他の作業者と顔を合わせることで、コミュニケーション不足によるミスを防止することも可能です。
安全ミーティングに参加する
一人親方の作業に関連するグループの安全ミーティングには必ず参加しましょう。
安全ミーティングは、作業に関する問題点や改善点などを話し合い、安全な作業環境を作るための重要な機会です。
一人親方の場合、他の作業者と協力して作業を行う機会は少ないかもしれませんが、安全ミーティングに参加することで最新の安全情報を入手したり、他の作業者から有益な情報を得たりすることができます。
また、安全ミーティングによって、一人親方の作業内容を十分に把握することにもつながります。
作業内容に関して疑問点があった場合は、安全ミーティングで解消しておきましょう。
作業開始前に点検をする
一人親方にとって、作業開始前の点検は、安全衛生活動の基本中の基本です。
作業前の点検を徹底することで、作業環境を安全に保ち、安心して業務に取り組めます。
点検を怠った場合、作業中に予期せぬトラブルが発生するリスクが高まります。
作業前に点検する際は、以下の2つを実施するとよいでしょう。
- 一人KY
- 指差呼称
一人KY
KY活動とは、現場に潜む危険箇所を予知し、労働災害を防ぐ活動のことです。
雇用されている場合は、労働者全員で行うケースが多いですが、一人親方は単独で作業するケースも多いため、一人KYを実施することになります。
一人KYは以下の7つの視点で行いましょう。
- 高い所からは落ちる
- 立っている物は倒れる
- 吊っている物は落下する
- 丸い物は転がる
- 動いている物には挟まれる
- 回転している物には巻き込まれる
- 通路にある物にはつまずく
指差呼称
指差呼称は、作業で確認すべき対象を指で指し、声に出して確認する作業です。
「スイッチオン、ヨシ!」「前方確認ヨシ!」「通路確保ヨシ!」など、声に出しながら危険な箇所を確認しましょう。
指を指して声に出すことで、作業への集中力が増します。
また、危険な箇所だと再認識でき、気を付けて作業できるようになります。
保護具、足場、器具、工具を正しく使用する
安全に作業を実施するために、当日使用する機械や工具、保護具などを正しく使用しましょう。
適切な保護具を着用しないと、作業中にけがをするリスクが大幅に増加します。
また、足場や器具を不適切に使用すると、事故の発生確率が高くなるでしょう。
安全な作業環境を維持するためには、機械や工具、保護具などの使用方法を常に確認し、正しく利用する必要があります。
正しい使い方を習得することで、事故を防止し、安全に作業が実施できます。
正しく使用するためには、点検作業も重要です。
当日使用する機械や工具、保護具は使用前に点検して、不具合がないか確認しましょう。
翌日の工程などを確認する
作業終了後には、翌日の工程や、持ち帰りの道具などを確認しましょう。
確認作業は、突発的なトラブルを防ぎ、余裕をもって作業を進めるためにも有効です。
特に、危険な作業がある場合は、事前に計画を立て、安全対策を講じる必要があります。
加えて、一人親方の作業に関連する業者との打ち合わせが必要だった場合は、打ち合わせを実施しましょう。
労働災害はコミュニケーション不足で起こることもあるため、打ち合わせをすることで労働災害のリスクが減らせます。
持ち場の後片付けを行う
持ち場の後片付けも、一人親方が行うべき安全衛生活動です。
持ち場の片付けをする際は、4Sである「整理・整頓・清掃・清潔」を意識しましょう。
4Sができていないと、地面に置かれた工具でケガをしたり、整頓されておらず作業動線が確保できなかったりと、労働災害につながりかねません。
また、散らかった作業場は、次の作業者の安全を脅かすだけでなく、自分の作業効率を低下させる原因にもなります。
4Sを意識し、工具や材料を元の場所にきちんと戻すことで、次の作業の準備時間短縮にもつながります。
安全衛生活動を継続するためのコツ
安全衛生活動は継続する必要があります。
一人親方が安全衛生活動を継続するためのコツを、2つ解説します。
- 安全衛生活動を受けて安全意識を高める
- 周囲とコミュニケーションをとる
けがや事故を起こさず働き続けるために、コツを意識して行動しましょう。
安全衛生教育を受けて安全意識を高める
安全衛生活動を継続するためには、まず安全衛生教育を定期的に受け、安全意識を高めることが重要です。
教育を通じて、最新の安全対策やリスク管理の知識を習得できるため、日常の業務で安全意識を常に保てます。
特に法改正や技術の進化によって新たな危険が生じることもあるため、定期的な教育は欠かせません。
厚生労働省では、一人親方等のための安全衛生教育テキストの配布や、一人親方等のための安全衛生研修会を開催しています。
安全に現場で作業をするために、一人親方は活用してみてください。
周囲とコミュニケーションをとる
安全衛生活動を継続的に実施するためには、周囲とのコミュニケーションをとりましょう。
作業現場では、情報共有や確認不足が原因で事故が起こることが少なくありません。
周囲の作業員と日常的にコミュニケーションをとり、作業内容やリスク、注意点をしっかりと話し合うことで、事故のリスクを大幅に減らせます。
作業中に危険を感じたときや、不明な点があるときは、遠慮なく質問したり、相談したりしましょう。
また、他の作業者からアドバイスを受けることも、安全作業を行ううえで非常に有効です。
周囲の人と協力し合い、安全な作業環境を作り上げましょう。
まとめ
一人親方は、労働災害のリスクが高く、さまざまな職種が関わっている現場で働くことが多いため、労働衛生活動が欠かせません。
安全朝礼への参加や作業開始前の点検、持ち場の後片付けなどを意識して実施することで、自分自身の安全だけでなく作業場全体の安全にもつながります。
また、安全衛生活動を継続するために、知識の習得も重要です。
労働災害を起こさず安全に作業するために、安全衛生活動を継続していきましょう。
加えて、一人親方は労働災害のリスクが高いため、安全衛生活動の継続に加えて労災保険への加入を推奨します。
労災保険へ加入することで、けがや事故で仕事ができなくなっても休業補償によって収入が得られます。
建設の事業をしている一人親方で労災保険へ加入したい方は、ぜひ「一人親方団体労災センター」へお問い合わせください。