一人親方労災保険の「労災センター通信」

安全施工サイクルの概要と目的|実施内容の解説と活動例を紹介

安全施工サイクルとは、毎日の現場業務の中に安全活動を組み入れて作業の効率化を図る取り組みです。
建設現場の1日の流れは安全施工サイクルに基づき、イラスト化された安全施工サイクルをポスターなどで掲示しています。

今回は、毎日・毎週・毎月・随時行われる安全施工サイクルの目的や内容について具体例を用いて紹介していきます。
会社や現場ごとに工夫した活動例を日々の業務に活かし、安全対策に欠かせない安全施工サイクルに取り組みましょう。
安全施工サイクル

安全施工サイクルとは

「安全施工サイクル」とは、建設現場において、一定の期間ごとに実施すべき安全衛生管理上必要な事項を決め、継続して実施することです。
「安全施工サイクル活動」とも呼ばれ、毎日・毎週・毎月・随時行う活動の中に安全活動を組み入れて行います。

安全施工サイクルを定める法律

安全施工サイクルを定める法律は「労働安全衛生法 」「労働安全衛生規則 」です。
労働安全衛生法第29条では請負人の法令違反について元方事業者による是正指導、第30条では協議会について規定されています。
法や規則に基づく指示に従わないと行政処分や刑事罰にあたる可能性があるため、注意が必要です。

安全施工サイクルの目的

安全施工サイクルの目的は、安全衛生活動の習慣化と安全衛生の一体化を図ることです。
建設現場での安全衛生活動を高める安全施工サイクルは、品質の安定と早く安い工事の完成につながります。
また、従業員全体の安全衛生に対する創意工夫を高め、職種間の協力関係を円滑にする役割を持っています。

毎日実施する安全施工サイクルの内容

朝礼から作業終了後までに組み込んで行う毎日の安全施工サイクル内容について解説します。

  1. 安全朝礼
  2. 安全ミーティング(KY活動)
  3. 作業開始前点検
  4. 安全巡視(職長による作業中の指導・監督)
  5. 作業間連絡調整と作業安全指示
  6. 持ち場の後片付け(4S活動)
  7. 終業時の確認と報告
  8. 安全通勤

安全朝礼

安全朝礼では、現場作業者全員が参加し、当日の作業内容や指示・連絡などを全体へ周知します。
また、体操でケガの予防と健康チェックを行い、作業者全員の安全意識を高めます。
朝礼で作業所の一体感を構築し、朝礼後に作業開始することで作業効率の向上が期待できるでしょう。

安全ミーティング

安全ミーティングは、各職種や作業グループごとにわかれて打合せを行います。
安全朝礼後、職長を中心に作業者へ作業内容や手順、人員配置、注意事項などを前日の作業間連絡調整の結果も踏まえて指示します。

安全ミーティングの目的は、当日の作業を計画通り安全に進めることです。
安全ミーティング後は危険予知活動を全員で行い、当日の作業チームで行動目標を決定します。

危険予知活動(KY活動)とは

危険予知活動(以下、KY活動)とは、作業開始前にグループで作業中の危険有害要因を洗い出し、対策を立ててチームの行動目標を決めていく活動です。

KY活動の基本手法に「基礎4R法」があります。
KY活動の目的は、毎日繰り返し行い危険予知力を高め、指差し呼称で作業の集中力、危険有害要因に作業者自身が気づく問題解決能力と、実践意欲を高める効果があります。

<基礎4R法の流れ>

  1. 作業中の危険要因の洗い出し
  2. 危険なポイントを絞る
  3. 事故防止の対策
    行動目標の設定

参照:厚生労働省「KYT基礎4R法

作業開始前点検

安全ミーティング後は、作業開始前に当日使用するクレーンや機械、電気工具、作業環境に不備がないことを確認します。
作業開始前点検後に作業を開始することは、事故を未然に防ぐために重要です。

安全巡視

安全巡視は労働安全衛生法によって、作業が混在している現場を、元方事業者が巡視することを義務付けられています。
作業所長・主任・安全担当者は現場全体、職長は担当区域を巡視します。
現場が安全に作業できているか、労働災害を防止するために、一日一回は必ず巡視することが労働安全衛生規則に定められており、また安全施工サイクルの一環として行われているのです。

職長による作業中の指導と監督のポイント

作業中の災害は現場慣れによる原因も多く、職長は危険性や有害性などの注意点を作業者に対して指導することが重要です。
職長が担当区域を巡視する際は、作業計画や安全ミーティングに基づき、作業環境と作業者の配置や行動をチェックしましょう。

<職長による作業中の指導・監督のポイント>

  • 適正な作業手順の監督指導
  • 作業者の適正配置と指示の確認
  • 作業進行状況と機械や車両などの運行時の安全対策
  • 混在作業などの危険箇所や不安全行動の監視と是正
  • 記録と報告

作業間連絡調整と作業安全指示

作業間連絡調整とは、作業状況と翌日の作業予定を確認して作業全体の工程を打合せすることです。
各事業者の作業状況に応じて必要な調整を図り、元方事業者をはじめ下請や工事関係者が参加します。
打合せ結果を記載した書類は関係者に配布され、翌日の朝礼で共有し、作業の再調整や作業指示を行います。

職長・安全衛生責任者は、事前に当日の作業進捗状況や作業上の問題点、機械の使用状況、作業者の状況を把握して打合せを行いましょう。
元方事業者の安全衛生担当者は事前調整会議を行い、「安全工程打合せ書・安全衛生指示書」を作成します。

持ち場の後片付け

毎日終業前10分程度で作業場所・安全通路・詰所・共用部分を片付けます。
具体的には、使用工具・器具・材料などの準備や指定場所への集積、保管場所への返却と共用部分の整理・整頓・清掃などです。
作業現場周辺にたばこの吸い殻や残土、ゴミが落ちていないか確認しましょう。

持ち場の後片付けは作業環境の維持と災害防止につながり、とくに整理・整頓・清掃・清潔は4S活動といわれ、作業効率と安全性向上に寄与します。

終業時の確認・報告

持ち場の後片付け後、職長・安全衛生責任者は終業確認を行い、作業所長へ報告します。
とくに、住宅地の工事などでは住民へのあいさつも心掛けることで近隣住民に好印象を与え、事業者のイメージアップにつながるでしょう。
関係請負人と元方事業者それぞれ終業時の作業報告イメージを表にまとめました。

実施時期 報告者 報告先 目的 確認項目
作業終了後 関係請負人 職長・安全衛生責任者 防火・盗難・第三者災害の防止、翌日の作業準備 共用部の片付け・火の始末・ 施錠・資材保管状況など
作業終了報告後 元方事業者 係員、安全当番 安全・品質・工程の確保 火の始末・チェックによる再手配・事務処理など

安全通勤

終業後、建設業では会社から現場まで乗り合わせて移動する場合が多くあります。
会社と自宅の往復時には交通事故のリスクがあるため、職長は適切な指示と日頃から交通安全教育を行うことが大切です。

たとえば、運転時には速度超過や信号無視などを行わない、乗り合い時には運転者への話しかけや、大声での会話といった、安全運転を妨げる行為をしないなど配慮しましょう。

実施時期別の安全施工サイクルの内容

安全施工サイクルの内容
毎日行う安全施工サイクル活動に加えて、毎週・毎月・随時実施する活動内容について解説します。

毎週行う安全施工サイクル活動の内容

毎週実施する安全施工サイクル活動として、週間安全工程打合せ・週間点検・週間一斉片付けがあります。
毎週の安全施工サイクル活動について表にまとめました。

実施項目 実施時期 実施者 内容 目的
週間安全工程打合せ 毎週一回週末、定期 元方事業者の現場事務所
  • 工程計画に基づく週間進捗状況と作業予定
  • 各職種の作業間連絡調整
  • 生産性と品質の向上
  • 混在作業による事故・労働災害の防止
  • 搬出入車両の調整による災害と公衆災害防止
週間点検 毎週一回週末、定期 作業所の機械設備
  • 持込機械設備、各種工具類の点検実施要領の決定
  • 機械設備各種工具類の責任範囲全般の点検
  • 点検結果と是正結果の報告と是正措置の指示受け
  • 事故や労働災害の防止
  • 作業能率の向上
週間一斉片付け 毎週一回、定例の曜日と時刻 作業所内全域の担当区域
  • 協議会や職長会などで実施方法の決定
  • 共用部分など作業所担当区域の一斉片付け
  • 不要材の搬出と未使用材の整理
  • 作業所内の規律保持の定着化
  • 作業環境の確保と能率向上

毎月行う安全施工サイクル活動の内容

毎月実施する安全施工サイクル活動として、災害防止協議会(安全衛生協議会)と定期自主検査があります。
災害防止協議会は労働安全衛生法に基づき、混在作業における労働災害の防止が目的です。

災害防止協議会の統括管理として、労働者数が常時50人(一部30人)以上混在して作業する場合は、元方事業者の作業所長が統括安全衛生責任者となります。
また、定期自主検査の対象機械と実施時期はゴンドラ則やクレーン則、安衛則などで規定されています。

対象時期 対象機械
1月以内・使用再開時 ゴンドラ
1年以内・1月以内・使用再開時
  • 移動式クレーン、デリック、建設用リフト、簡易リフト
  • 車両系建設機械、車両系荷役運搬機械、高所作業車、不整地運搬車
6月以内、使用再開時 絶縁用保護具、絶縁用防具、活線作業用装置、活線作業用器具

随時で行う安全施工サイクル活動の内容

随時実施する安全施工サイクル活動の4項目を表にまとめました。

項目 内容
新規入場の事前打合せ
  • 元方事業者と関係請負人による取り組み ・新規入場者への適切な教育を行う
新規入場者の受け入れ教育
  • 現場ルールを作業開始前に教育
  • 入場1週間以内に多い労働災害防止が目的
持込機械の届出
  • 職長・安全衛生責任者は元方事業者に使用届を提出
  • (一社)全国建設業協会統一様式または元方事業者指定様式などを使用
安全大会
  • 5~8月に実施される作業者の安全衛生意識を高める大会
  • 全員参加が望ましい

職長・安全衛生責任者は持込機械等使用届を提出し、交付後は見やすい場所へ貼付しましょう。

安全施工サイクルの活動例

安全施工サイクルの実例
安全施工サイクルの活動例として、現場業務の中で各事業所によって工夫した取り組みがされています。
建設現場において、作業ルールを記録して日々のリスクを視覚化するなど、作業者の安全意識を向上させることが大切です。

<毎日実施する安全施工サイクル活動例>

  • 担当者の明確化
  • 担当者による現地KY活動
  • RA作業手順書の確認とブラッシュアップ
  • 作業間連絡調整会議の項目記入
  • 作業者による安全宣言ステッカーへの記入

まとめ

建設現場における安全施工サイクルは、作業者全員が共通認識のもと継続して実施することが重要です。
現場を管理する職長や一人親方の皆さんも安全施工サイクル活動の内容や目的を理解し、安全な作業環境を整えましょう。
毎日の安全施工サイクルの流れや活動例など、現場管理や労働災害防止に本記事をお役立てください。

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