「数年前からよく聞くようになったアルコールチェックって何?」
「一人親方でもアルコールチェックは必要なの?」
アルコールチェックは、これまでも緑ナンバーの車両を運転するドライバーには義務化されていました。
そのアルコールチェックが、2022年より自家用自動車である白ナンバーにも適用されるように、法律が改正されました。
これにより、一定数の車両を保持する事業者はアルコールチェックが義務化されたのです。
この記事では、2022年から法改正され義務化となったアルコールチェックについてまとめました。
アルコールチェックについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
Contents
アルコールチェックの義務化とは
2022年4月1日に施行された改正道路交通法施行規則より、事業所の安全運転管理者に対して、運転者が酒気を帯びていないかのアルコールチェックを目視で確認するように義務化されました。
あわせて同年10月1日からは、目視に加えてアルコール検知器によるチェックも義務化される予定でした。
こちらの施行は、半導体不足の影響でアルコールチェッカーの製造、流通に影響が出ていた背景から延期され、2023年12月にスタートしています。
もともとアルコールチェックが義務付けられていたのは、緑ナンバーと呼ばれる事業用自動車の運転者のみで、2011年から実施されていました。
しかし、今回の改正により、白ナンバーの自家用自動車を運転する場合でも、アルコールチェックが新たに義務化となりました。
アルコールチェックの義務化に至った背景
アルコールチェックが義務化された背景には、2021年6月に千葉県八街市で発生したトラックの飲酒運転事故があります。
この事故では、飲酒運転していたトラック運転手が小学生5人をはね、2人が死亡、3人が重傷を負いました。
事故を起こしたトラックは白ナンバー車で、当時、アルコールチェックは義務付けられていませんでした。
この事故をきっかけに、事業用トラックやバスによる飲酒運転のリスクが社会で大きな問題となったのです。
こうした背景を受け、警察庁は飲酒運転の根絶を目指し、2022年4月に道路交通法を改正しました。
この改正により、それまでアルコールチェックの義務があった緑ナンバー車だけでなく、白ナンバー車にもチェックが義務化されたのです。
飲酒運転による事故の推移
警察庁のデータによると、飲酒運転による交通事故件数は年々減少傾向にあるものの、2021年度には2,198件、2022年度には2,167件が発生しています。
しかし、直近2023年度では2,346件と若干増加しました。
また、飲酒運転による死亡事故件数としては、2021年度は152人、2022年度の120人、2023年度には112人と減少していますが、まだまだ飲酒運転により、多くの死傷者が出ている結果となっています。
※参考:警察庁「飲酒運転による交通事故件数の推移」 「飲酒運転による死亡事故件数の推移」
そのため、飲酒運転による事故を無くすためにも、アルコールチェックの義務化は重要な取り組みだといえます。
アルコールチェック義務化に関する法改正の内容
アルコールチェックの義務化についての法改正内容を解説します。
アルコールチェックの義務化は、2022年4月施行の第一段階、2023年12月施行の第二段階に分かれて実施されました。
各段階での詳細について下記にて解説します。
2022年4月施行の内容【第一段階】
2022年施行の改正道路交通法施行規則では、安全運転管理者に対して、運転業務に就く従業員の酒気帯びの状態確認が義務化されました。
安全運転管理者は、運転業務に就いている従業員の状態を目視などで確認し、従業員が酒気帯び状態でないか確認しなくてはいけなくなったのです。
アルコールチェックを実施した結果についても安全運転管理者が記録を作成し、1年間保存するように定められています。
2023年12月施行の内容【第二段階】
2023年12月からは、延期された検知器を使用したアルコールチェックの実施が義務化されました。
安全運転管理者がアルコール検知器による確認を実施し、その結果を第一段階同様に記録し保存しなくてはいけません。
検知器による確認を適切に行うために、安全運転管理者はアルコール検知器を常時保持するように義務付けられました。
アルコールチェック義務化に関する法的根拠は、道路交通法施行規則9条の10第6号、同第7号、同第8号 にて定められています。
アルコールチェック義務化の対象者
アルコールチェック義務化の対象者は、次の条件を満たした事業所にて、事業所の業務のために運転する者となります。
- 乗車定員11人以上の白ナンバー車を1台以上保有している事業所
- そのほかの白ナンバー車を5台以上(原動機付自転車を除く自動二輪車は0.5台で計算)保有している事業所
この条件は、安全運転管理者を選任する要件となっているため、この要件を満たす事業所では安全運転管理者を選任し、事業所の本拠地を管轄する警察署へ届け出が必要となります。
改正された法律(道路交通法施行規則9条の10第6号)により、選任された安全運転管理者は、運転業務に当たる従業員に対しての、アルコールチェック実施が義務化されたのです。
アルコールチェック義務化の対象は、具体的には事業所で作業員を送迎するためにシャトルバスを使用している建設現場、営業車両や工事用車両を5台以上使用している事業者が該当します。
安全運転管理者とは
安全運転管理者とは、一定台数以上の白ナンバー車を使用する事業所ごとに、選任された者が自動車の安全運転に必要な管理業務を行うことです。
安全運転管理者の選任要件は、上記で解説したアルコールチェック義務化の対象となる条件と一緒になります。
つまり、安全運転管理者を選任しなくてはいけない事業者が、アルコールチェック義務化の対象です。
アルコールチェックを怠った場合の罰則
アルコールチェック義務化の対象事業者がチェックを怠った場合、その事業者における安全運転管理者がルール違反として責任を問われるようになります。
最悪の場合、安全運転管理者が解任されたり、命令違反の罰則を受けたりする場合もあるため、対象事業者はアルコールチェックを必ず実施しなくてはいけません。
もしアルコールチェックを怠ったために運転手の飲酒運転を防げなかった場合、運転手だけでなく、会社の代表者や運行管理者も「酒気帯び運転等の禁止」違反として、最長5年の懲役または100万円以下の罰金が科される可能性があります。
※参考:警視庁「飲酒運転の罰則等 」
さらに、運転手が酒を飲んでいるとわかっているのに運転業務を命じた場合には、管理不足として会社の責任者や管理者が刑事責任を問われる可能性もあります。
罰則を受けなかったとしても、アルコールチェックを怠った企業は『飲酒運転への意識が低い企業』と見られる可能性があり、会社のイメージに大きな悪影響を与えるでしょう。
アルコールチェックの方法
アルコールチェックの実施に際し、必要なもの、アルコールの測定方法、測定結果の記録方法について、解説します。
間違った方法で行っては、飲酒事故を無くす目的を達成できず、アルコールチェックする意味がありません。
正しい方法を確認しておきましょう。
必要なもの
アルコールチェックは目視とアルコール検知器を使った測定を行わなければいけません。
そのため、アルコール検知器は、必須のアイテムになります。
ただし、アルコール検知器について明確な基準や仕様は定まっていません。
国家公安委員会は、息に含まれるアルコールを調べて、酒気帯びの有無を音や色、数字で結果を知らせる機能があれば良いと定めており、高性能なものでなくても良いとされています。
アルコール検知機器のセンサーには、半導体センサーと電気化学式センサーの2種類があり、耐久性、測定にかかる時間、検知の正確さや値段が異なります。
現在、各メーカーからさまざまなアルコール検知器が販売されているため、業務や使い方にあったアルコール検知器の選択が可能です。
検査方法は主に次の3タイプがあります。
- 機器本体に直接息を吹きかけるタイプ
- ストローを使って息を吹き込むタイプ
- 専用のマウスピースを装着して息を吹き込むタイプ
検知の精度を高めるためには、ストロー式やマウスピース式の検知器を選ぶのがおすすめです。
測定方法
安全運転管理者に義務付けされたアルコールチェックは、運転者の業務開始前と、業務終了後に実施しなくてはいけません。
アルコールチェックは、基本的に対面での目視確認と検知機器による測定とされています。
目視確認では、運転者の顔色や呼気のにおい、受け答えの声の調子といった状況をチェックします。
万が一機械が故障していたとしても、運転手に酒気帯びの疑いがないか、感覚でチェックできるため、酒気帯びの疑いがある運転手に業務させるのを防げる検査です。
直行直帰や遠隔地での業務の場合は、安全運転管理者は対面でチェックできません。
国家公安委員会が、遠隔でアルコールチェックをする方法として、対面での目視に準ずるとして2つの方法を紹介しています。
- 安全運転管理者がカメラやモニターにより運転者の顔色や応答時の様子を確認し、アルコール検知器の測定結果を確認する
- 携帯電話や無線で直接やり取りを行い、運転者の声の調子を安全運転管理者が確認しつつ、アルコール検知器の測定結果を運転者から報告させる
アルコールチェックを行った後には、検査結果を記録します。
記録方法
アルコールチェックの記録は、以下の内容を保存します。
- 確認者の氏名
- 運転者の氏名
- 運転に使用した車両の登録番号または識別記号
- 確認した日時
- 確認方法(アルコール検知器を使用したかどうか、非対面の場合はその方法)
- 酒気帯びの有無
- 必要な指示事項
なお、記録は紙でもデータでの管理でも構いません。
まとめ
道路交通法の改正により、緑ナンバーでの事業者だけでなく、一定数の白ナンバーを所有する事業者に対しても、アルコールチェックは義務化されました。
これまで自家用車両としてアルコールチェックがなかったところに、安全運転管理者を選任しアルコールチェックを実施しなくてはいけなくなったため、安全運転管理者は大きな負担となりえます。
とはいえ、飲酒運転の危険性や、飲酒運転による死亡事故などの発生を考えると、そうとも言っていられないのです。
チェックを怠った場合、その事業者における安全運転管理者がルール違反として責任を問われるようになります。
罰則が科される可能性もあるため、適切な方法で管理するようにしましょう。