一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方に源泉徴収は関係ある?必要な手続きや注意点も解説

「一人親方って源泉徴収を受ける必要があるの?」
「どんな場合に源泉徴収が関係するの?」
と疑問に感じている方もいるでしょう。

一人親方の働き方は多様で、源泉徴収が必要なケースやそうでないケースがあります。
また、源泉徴収を受けた場合や受けなかった場合に必要な手続きや注意点も異なるため、それぞれに合った対応が必要です。

本記事では、一人親方に源泉徴収は関係するのか、必要な手続き、注意点などを解説します。
お金で損をしないために、一人親方はぜひ参考にしてください。
一人親方にとっての源泉徴収

源泉徴収とは

源泉徴収は、所得税を納付するための制度です。
給与や報酬を支払う際に、支払者があらかじめその金額から一定の税額を差し引き、国に納付する仕組みです。
この制度は、主に給与所得者やフリーランス、個人事業主に適用されます。

給与をもらっている方は、給与から社会保険料などが引かれた金額を、国税庁が発行している「源泉徴収税額表」に当てはめて、その額が差し引かれています。
この作業は雇用元の企業が行うため、個人で行う必要はありません。

原稿料や弁護士報酬などを受け取っている個人事業主は、報酬金額によって税率が異なります。

  • 100万円以下の場合:報酬×10.21%
  • 100万円を超える場合:(報酬–100万円)×20.42%+10万2,100円

源泉徴収の対象期間は1月1日から12月31日までの1年間です。
1月から12月までの働いた分の給与ではなく、実際に支払われる給与に対して実施されます。

一人親方に源泉徴収は関係ある?

一人親方と源泉徴収の関係は、働き方によって大きく変わってきます。
この章では、一人親方が源泉徴収を受けるケースと受けないケースについて詳しく解説します。

一人親方が源泉徴収を受けるケース

一人親方が源泉徴収を受けるのは、元請けから受け取る報酬が給与として扱われる場合です。

一人親方は、元請けから仕事を受注した際、報酬を個人事業の売り上げとするケースが一般的です。
しかし、場合によっては元請けと雇用契約を結ぶケースがあります。

たとえば、元請けから作業の進め方について細かい指示を受けるなど指揮命令を受けながら働いている場合は、雇用関係があるといえます。

雇用関係を結んだ状態で働いている場合は、報酬は個人事業の売り上げではなく、一人親方の給与となるため、源泉徴収票が発行されるのです。

継続的に給与をもらっていなくても、1回でも受け取った場合は源泉徴収票が発行されることを覚えておきましょう。

一人親方が源泉徴収を受け取らないケース

一人親方が元請けから外注として業務を受注し、報酬を個人事業の売り上げとして計上している場合、通常は源泉徴収の対象とはなりません。
そのため、源泉徴収票も発行されません。

ただし、給与として受け取っていない場合でも、元請けは源泉徴収を行っている可能性があります。
その場合は、源泉徴収票ではなく、支払調書が発行されることがあります。
支払調書は源泉徴収と異なり、発行義務がありません。

一人親方が知らない間に源泉徴収されている可能性があるため、支払調書をもらったり、請求書に記載されている源泉徴収金額を確認したりして、源泉徴収されている額を把握しましょう。

一人親方が源泉徴収票をもらった場合に必要な手続き

一人親方の確定申告時の手続き
一人親方が源泉徴収票をもらった場合、必要な手続きはありません。

源泉徴収票は、年末調整のタイミングである12月頃に受け取れます。

源泉徴収票を受け取ったら、金額が正しいか確認しましょう。
もし12月にもらえなかったら、元請けに問い合わせてみましょう。

ただし、ほかの事業者からも報酬を受け取っている場合は、確定申告が必要になります。

一人親方が源泉徴収票をもらわなかった場合に必要な手続き

一人親方が源泉徴収票をもらわなかった場合、自分で納税する必要があります。
主な手続きは以下の2つです。

  • 確定申告
  • 納税

それぞれの手続きについて詳しく説明していきましょう。

確定申告

一人親方が源泉徴収票をもらわなかった場合、確定申告が必要です。

確定申告では、1年間の収入と経費を計算して、納めるべき税金の額を確定させます。

具体的には、事業所得として得た収入から、仕事に使用した道具代や車両費、保険料などの経費を差し引いて、課税対象となる所得を計算します。
この際、帳簿や領収書などの証拠書類が必要となるため、日頃から収支の記録を正確に管理することが重要です。

確定申告は毎年2月16日から3月15日までの期間に行います。
確定申告書は、e-taxを利用してオンラインで申告書の作成・提出が可能です。

余裕を持って準備するようにしましょう。

納税

確定申告完了後、納税の手続きを確実に行う必要があります。
確定申告によって算出された所得税は、期限内に納付しなければいけません。

納税方法には、金融機関やコンビニエンスストアでの納付、クレジットカードでの納付、インターネットバンキングを利用した電子納付などがあります。

納税は所得税の確定申告と同じ期限である3月15日までに行います。
期限までに納付を済ませないと延滞税がかかる場合があるため、余裕をもって手続きを進めましょう。

一人親方が源泉徴収されたときの注意点

一人親方の源泉徴収の注意点
一人親方が源泉徴収された場合、気をつけるべき注意点が2つあります。

  • 源泉徴収票を失くさないように大切に保管する
  • 二重納税しないようにする

これらの注意点について、具体的に解説します。

源泉徴収票を失くさないように大切に保管する

源泉徴収票は、確定申告を行う際に必要な書類です。
年間の収入や源泉徴収された税額が記載されており、確定申告時に正確な所得税額を計算するために用いられます。

万が一紛失してしまうと、再発行の手続きに時間がかかり、申告が遅れる可能性があります。
そのため、源泉徴収票を受け取った際には、すぐに確認し、専用のファイルや引き出しなどに大切に保管しましょう。

また、電子データとして受け取る場合もありますので、データのバックアップを取ることをおすすめします。

二重納税しないようにする

源泉徴収された金額は、すでに所得税の一部として支払われています。
そのため、確定申告の際に二重納税とならないよう注意が必要です。

確定申告書には、源泉徴収税額を記入する欄が設けられており、正確な金額を記載することで、支払い済みの税額を差し引いた最終納税額が計算されます。

二重納税を避けるためにも、源泉徴収票の内容を必ず確認し、記載ミスや不明点があれば早めに発行元に問い合わせて修正を依頼しましょう。

一人親方が源泉徴収されなかったときの注意点

一人親方が源泉徴収されなかった場合、注意が必要な点が2つあります。

  • 偽装請負に関与しない
  • 期間内に確定申告をする

これらの注意点について、詳しく説明していきましょう。

偽装請負に関与しない

偽装請負とは、元請けと請負契約を結んでいるのにもかかわらず、実際には雇用契約と同様な働きをする状態を指します。
たとえば、一人親方として独立して働いているように見せかけながら、元請けからの指示のもとで働いている場合などです。

偽装請負は法律で禁止されており、発覚した場合には元請けと一人親方の双方に罰則が科される可能性があります。

一人親方として業務を請け負う際には、契約内容や業務範囲を明確にし、労働者ではなく独立した事業者としての立場を守ることが重要です。
また、業務内容や契約条件に不明点がある場合は、専門家に相談して適法性を確認することをおすすめします。

期間内に確定申告をする

源泉徴収を受けていない場合、必ず期間内に確定申告を行いましょう。

確定申告は、通常、翌年の2月16日から3月15日までの期間に行われます。
期限を過ぎると、延滞税や無申告加算税が科される可能性があるため、早めの準備が重要です。

期限に間に合うよう、日頃から収支の記録をつけ、必要な書類を整理しておきましょう。

一人親方が源泉徴収票を発行するときはある?

一人親方が源泉徴収票を発行するのは、従業員を雇用したときです。
事業規模を拡大して従業員を雇用した場合は、給与の支払者として源泉徴収義務が生じます。

従業員を雇い源泉徴収票を発行することになった際に知っておくべき3つを解説します。

給与を支払う際の源泉徴収額の計算方法

一人親方が従業員に給与を支払う際、まず源泉徴収税額を正確に計算する必要があります。

源泉徴収税額は、国税庁が公表する「源泉徴収税額表」を使用し、以下の流れで計算できます。

  1. 従業員の給与を算出する
  2. 社会保険料等控除した金額を出す
  3. 従業員の扶養家族の数を把握する
  4. 社会保険料等控除後の金額と扶養家族の数を給与所得の源泉徴収税額表に当てはめる
  5. 当てはまった金額が源泉徴収税額

参照:国税庁「令和6年分 源泉徴収税額表」

源泉徴収税額表は、毎年発表されます。
従業員を雇用する場合は、把握しておきましょう。

源泉徴収税の納税方法

計算した源泉徴収税額は、従業員への給与支払い後に納税しなければなりません。

納税方法は、以下3つがあります。

  • e-Taxでの電子納税
  • 最寄りの金融機関
  • 管轄の税務署

金融機関、税務署の窓口で納税する場合は、所得税徴収高計算書(納付書)が必要です。

e-Taxは手続きに時間と場所を問わずできるため、忙しい方はe-Taxでの納税をおすすめします。

源泉徴収税の納税期限

源泉徴収税の納税期限は、給与を支払った月の翌月10日までです。

ただし、従業員数が常時10人未満の場合は、納期の特例を申請することで、半年分をまとめて納付できます。
特例を利用するには、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出する必要があります。

納期を過ぎると延滞税などがかかる場合があるため、納付期限は必ず守るようにしましょう。

まとめ

一人親方は働き方や契約形態によって、源泉徴収できるかが変わります。

元請けと雇用契約を結んでいる場合は、給与から源泉徴収が引かれ、源泉徴収票を受け取ります。
元請けと請負契約を結んでいる場合は、報酬は事業の売り上げとなるため、源泉徴収票はもらえません。

源泉徴収票をもらえなかった場合、一人親方自身で確定申告と納税をする必要があります。

従業員を雇用している場合は、従業員の給与から源泉徴収を差し引き、源泉徴収票を発行しなければいけません。
源泉徴収に関する知識を蓄えて、税金で損をしないようにしましょう。

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