一人親方労災保険の「労災センター通信」

一人親方が白色申告する方法は?帳簿や必要書類について解説

白色申告には、所得控除の恩恵は少ないものの単式簿記と呼ばれるシンプルな記帳で確定申告できるメリットがあります。
青色申告はより多い控除が受けられますが経理業務が複雑なので、白色申告を選ぶ一人親方もいるでしょう。

白色申告と青色申告どちらでも帳簿の作成は必須のため、申告を行う前に書き方を押さえておくことが重要です。
今回は、白色申告と青色申告のメリットやデメリット、白色申告で必要な帳簿や書類について解説します。
一人親方の確定申告

一人親方は白色申告と青色申告のどちらがよい?

一人親方が青色申告か白色申告どちらがよいか悩む場合は、収入の規模や将来の計画、帳簿管理能力を考慮して決めるとよいでしょう。
白色申告と青色申告の対象になる一人親方のケースと、メリットやデメリットについて解説します。

白色申告の対象となるケース

白色申告の対象となるケースは、以下の通りです。

  • 収入が不安定な場合
  • 帳簿管理や経理作業が難しい場合

複式簿記で記帳をしていない場合や青色申告の対象に当てはまらない場合は白色申告となります。
収入が少ない一時的な仕事の場合や税負担が多少増えても記帳の手間を減らしたい場合は、白色申告がおすすめです。

白色申告のメリット

白色申告のメリットは、簡易的な帳簿で確定申告の手続きがシンプルなことです。
帳簿は義務付けられているものの、簿記等の専門知識は不要で税務署に提出する書類も少なく、事前の届出をせずに申告できます。

白色申告のデメリット

白色申告のデメリットは、特別控除や税金を軽減する優遇措置が適用されないことです。
確定申告では、年間の合計所得から経費や控除を差し引いた金額に税率をかけて納税額が決まります。
そのため、青色申告のような控除が使えない白色申告では税金が増えてしまいます。

青色申告の対象となるケース

青色申告の対象となるケースは、以下の通りです。

  • 収入が安定して高額の場合
  • 複雑な帳簿管理ができる場合
  • 事業を拡大する予定がある場合

ある程度の事業収入がある一人親方には、特別控除などが充実しており節税効果の高い青色申告がおすすめです。

青色申告のメリット

青色申告のメリットは、特別控除や経費計上の面で節税対策ができることです。

まず、最大65万円の特別控除を受けられます。
そのほか、赤字の場合は税金を納めず、損失を翌年以降最大3年間繰り越せ、利益から赤字分を差し引いて計上できます。
また、30万円未満の固定資産を一括で経費計上することや家族の給与を必要経費にすることもでき、節税対策に有効です。

青色申告のデメリット

青色申告のデメリットは、複式簿記による記帳なので帳簿作成が複雑で、簿記の知識が必要になることです。
また、開業日から2か月以内または青色申告する年の3月15日までに「所得税の青色申告承認申請書」を税務署へ提出する必要があります。
申告前から必要書類を準備して提出期限内に確定申告を行わなければなりません。

一人親方が白色申告する際に必要な帳簿

一人親方が準備する帳簿
どんな事業所得であっても、白色申告する際には帳簿が必要です。
白色申告する際に必要な帳簿には法定帳簿と任意帳簿の2つがあります。
2つの帳簿と、そのほかに必要な書類について解説します。

法定帳簿

法定帳簿は、白色申告をする際に必ず作成する必要があります。
確定申告の際に正しく納税するための書類であり、日々の収支を記録した帳簿を元に税金を計算します。

帳簿の書式の指定はないため、Excelやノートなど自由な形式で作成が可能です。
売上(収支)や仕入(経費)などを区分ごとに記録し、取引年月日や取引先の名称などを明瞭に法定帳簿へ記録します。

任意帳簿|現金出納帳・売掛帳・固定資産台帳など

現金出納帳や売掛帳や固定資産台帳など、法定帳簿以外に作成した帳簿が任意帳簿です。
任意帳簿を作成すると、金額と会計データを確認しやすく、確定申告をスムーズに進められます。
作成は任意ですが、作成しないと作業に時間を要し期限内の提出や納税が間に合わない可能性があります。

その他業務に関する書類

白色申告では、帳簿のほかにも決算や業務に関する書類が必要になる場合があります。
具体的には、棚卸表・請求書・納品書・送り状・領収書などです。
帳簿やその他業務に関する書類は保存期間が決まっているため、整理しておきましょう。

白色申告の帳簿への記載内容

法定帳簿に記載する項目は、以下の通りです。

区分 記載内容
売上 取引年月日・相手方の名称・金額
仕入 取引年月日・相手方の名称・金額
雑収入等 取引年月日・相手方の名称・金額・事由
経費 取引年月日・支払先の名称・金額・事由

なお、経費は、給料賃金や外注工賃、減価償却費、その他経費(租税公課・旅費交通費・通信費・修繕費・消耗品費・雑費など)の区分ごとに記載します。

また、条件に該当すると、取引ごとではなく日々の合計金額をまとめて記載する簡易な方法でも記帳が認められています。

区分 簡易な方法で記帳できる項目
売上 小額な現金売上、小売等を行う者の現金売上、納品書控や請求書控で内容を確認できる取引など
仕入 小額な現金仕入れ、納品書控や請求書控などで内容を確認できる取引など
雑収入等 小額な雑収入など
経費 小額な費用

白色申告に関する帳簿や書類の保存期間

所得税や復興特別所得税の申告が不要な方も帳簿や書類の保存が必要であり、保存期間は以下の通りです。

<帳簿・書類の保存期間>

  • 法定帳簿(収入金額や必要経費を記載した帳簿):7年
  • 任意帳簿(業務に関して作成した上記以外の帳簿):5年
  • その他の書類(棚卸表や決算に関して作成した書類):5年
  • 業務に関する書類(請求書、納品書、送り状、領収書など):5年

一人親方が白色申告に必要な書類と書き方

一人親方の確定申告書類の書き方
一人親方が白色申告をする時に必要な書類について解説します。
確定申告には提出書類以外に必要なものもあるので、必要な書類を日頃から整理しておきましょう。

確定申告書

個人事業主である一人親方は、「確定申告書」の第一表と第二表に、収入や所得金額、各自で計算した税額を記載します。
国税庁のホームページから、各種様式をダウンロードできます。

収支内訳書

「収支内訳書」は、売上・仕入・経費の内訳をまとめて計算して確定申告書に所得を記入する書類です。
一人親方は、「一般用」「農業所得用」「不動産所得用」の3種類のうち、「一般用」に収入や経費を計算して所得を記入します。

収支内訳書の勘定科目選択に迷う人も多く間違いが起こりやすいため、勘定科目の事前確認が大切です。
勘定科目を事前に確認することで、日々の取引で該当する勘定科目を判断しやすく、作成時にミスが起こりにくくなるでしょう。

確定申告書の作成や各種控除に必要な書類

確定申告書を作成するために、以下の情報を事前に整理しておくとスムーズです。

  • 会計帳簿
  • 領収書
  • 請求書
  • 棚卸表
  • マイナンバーを確認できる資料
  • 金融機関の口座情報など

また、生命保険や地震保険などの控除を受けるために必要な「控除証明書」は、毎年11月頃にはがきで郵送されることが多いため、確定申告まで保存しておきます。

一人親方労災保険に加入した際の会費や組合費は、確定申告で「収支内訳書」の勘定科目「諸会費」で経費として計上でき、家族分は、「法定福利費」または「福利厚生費」で経費として計上できます。

一人親方労災保険料は、社会保険料控除として一人親方の所得金額から控除可能です。
そのため、明細書は保存しておき、申請可能な控除がないか事前に確認しましょう。

一人親方が白色申告で確定申告するやり方

一人親方が白色申告で確定申告するやり方は以下の流れです。

  1. 帳簿を作成する
  2. 確定申告書・収支内訳書・各種書類を用意する
  3. 所得税額を算出して確定申告書を作成する
  4. 必要書類を税務署へ提出する

青色申告では「青色申告決算書」の作成が必要ですが、白色申告では不要です。
また、白色申告は複式簿記以外の方法で帳簿を作成できます。

一人親方の白色申告でよくある質問

一人親方の白色申告でよくある質問についてまとめました。

一人親方が経費で落とせるものは?

作業や仕事で使っている材料費・消耗品費、事務所の地代家賃や水道光熱費など、事業に必要なものであれば経費にできます。

また、飲食物なども事業目的であれば経費にできる場合があります。
例えば、事務所に缶コーヒーを常備しておいて、取引先や従業員、外注先の人が飲んでいる場合は経費として申告できる可能性があるでしょう。

事務所に常備する飲み物代は「福利厚生費」、取引先と飲食店での打ち合わせは「接待交際費」として計上できます。

接待費はプライベートと業務上の線引きが特に難しく税務調査の対象となりやすいため、必ず領収書を受け取って保存しておくことが大切です。
飲食代は、支払った金額、接待の目的、日時や場所、接待相手が分かるように領収書やレシートの裏にメモを残しておくとよいでしょう。

なお、一人親方が個人的に購入する酒代やタバコ代などの嗜好品は生活費にあたり、プライベートで利用した代金は経費にできません。
安易に経費にしてしまうと、「脱税」とみなされる可能性があるため、注意が必要です。

一人親方が正しく確定申告してないとどうなる?

正しく確定申告していない場合、過少申告加算税や無申告加算税が求められる可能性があります。
令和5年分から、税務調査で帳簿の保存や売上の記載が不十分と判断された場合、申告漏れに対して本来の税金に5%または10%が加算されることになりました。

白色申告で記帳の仕方がわからない一人親方は、税務署が帳簿の保存制度の概要や記帳に関する説明会を実施しているので利用するとよいでしょう。

まとめ

白色申告は、簡易な記帳や申告で済むものの、青色申告と比べて節税面でのメリットは少なくなっています。
一人親方が白色申告する場合も、帳簿に取引を記載しておく必要があるため、日頃から帳簿管理を行うことが大切です。

白色申告と青色申告それぞれのメリットやデメリットを踏まえて、自分に合った申告を選択し、正しく確定申告を行いましょう。

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